2014年1月24日金曜日

硬膜穿刺後頭痛

麻酔EBM勉強会  担当:I先生

「硬膜穿刺後頭痛」

・硬膜穿刺後頭痛
  ・多くの場合は持続期間も短く軽症。
  ・頭痛で動けず、退院が伸びてしまうこともある。
  ・数か月、数年単位で持続したり慢性化しうる。
  ・脳神経麻痺や硬膜下血腫の原因になりうる。
  ・予想以上に頻度が高く訴訟になることも。
・リスク因子
  ・針の形とサイズ
・発症機序仮説①
  ・硬膜穿刺部位からCSFが漏出し続ける
    →頭蓋内のCSFの量が減る
    →脳と頭蓋骨がこすれやすくなり、髄膜が刺激される
    →髄膜は痛覚を感じるため頭痛が生じる
  ・この仮説から考えられる治療法
    ・CSFの漏出を最小限にする
    ・CSFの産生を促す
    ・脊髄から頭蓋内へCSFを移動させる
・発症機序仮説②
  ・CSFの減少により、頭蓋内圧が低下する
    →代償性に脳血管拡張が起こる
    →偏頭痛と同様の機序で頭痛が起こる
  ・根拠:以下の2点が偏頭痛と似ている
    ・女性に多い
    ・PDPH患者の脳MRIで脳血流が増加している
  ・この仮説から考えられる治療法
    ・脳血管収縮薬の使用
・保存的治療
  ・ベッド安静
  ・水分負荷
  ・腹臥位 / 背中を丸める体位を取る
  ・カフェイン
  ・トリプタン
  ・ACTH/ステロイド
・侵襲的治療
  ・くも膜下腔に生食投与/カテーテルを留置
  ・硬膜外腔に生食投与/モルヒネ投与/デキストラン投与
  ・ブラッドパッチ/予防的ブラッドパッチ
・各治療のエビデンス
 ・ベッド上安静
   ・安静時間の延長がPDPH発生を減らすというエビデンスなし
   ・頭痛があっても症状が安定しているなら早期に離床を
 ・補液
   ・硬膜穿刺後補液をした研究は1つしかない
   ・PDPH発生減らすエビデンスはないが脱水はよくない
 ・腹臥位、背中を丸める体位を取る
   ・腹圧上昇
     →CSFが腰椎から頭蓋内のコンパートメントに移行
   ・ただし支持する研究は行われていない
   ・カフェイン摂取(経口or経静脈)
     →いくつか研究あり
 ・カフェイン経静脈的投与
   ・保存的加療に反応しなかったPDPHの患者41人
    →500mgのカフェインを経静脈的に投与
    →70%の患者が頭痛消失
 ・カフェイン経口投与
   ・カフェイン群で有意に頭痛は改善
   ・カフェインで頭痛が改善した群
    →うち6人は翌日には頭痛再燃
 ・ステロイド
   ・脊椎麻酔で帝王切開を受け、PDPH発症した患者60人
   ・30人ずつHydrocortisone群と安静のみ群に分ける
     →有意差を持ってHydrocortisone群で頭痛の程度が改善
 ・硬膜外生食持続投与
   ・頭痛が改善したという報告いくつかあり
 ・EBP(硬膜外ブラッドパッチ)
   ・PDPH治療のゴールドスタンダード
   ・硬膜外針を通して自己静脈血(15~20mlが理想)を
    硬膜と脊椎の間の脂肪組織に注入
   ・できれば硬膜穿刺部位に近い椎間から注入
      ※血液が十分量あれば離れていてもOK
   ・注入後、1時間~2時間仰臥位
   ・菌血症や発熱患者、HIV感染者には避ける
   ・宗教上の理由で拒否する患者
     →血液の代わりにデキストラン注入を考慮
   ・成功率は?
     ・以前は95%もの成功率と報告  
       →これらの研究のほとんどが前向き試験ではない 
     ・EBPの成功率は65%ほどしかないとする報告も
   ・成功率を下げる独立因子
     ・穿刺した針の太さ
     ・硬膜穿刺してからEBP施行まで4日以上
       ・EBPの血液量が不十分   
 ・硬膜外腔デキストラン投与
   ・適応:宗教上の理由などでEBPを拒否した患者など
   ・成功例報告あり
   ・神経毒性やアレルギー反応の危険性がある
   ・現時点ではスタンダードな治療とはいえない