麻酔EBM勉強会 担当:I先生
「硬膜穿刺後頭痛」
・硬膜穿刺後頭痛
・多くの場合は持続期間も短く軽症。
・頭痛で動けず、退院が伸びてしまうこともある。
・数か月、数年単位で持続したり慢性化しうる。
・脳神経麻痺や硬膜下血腫の原因になりうる。
・予想以上に頻度が高く訴訟になることも。
・リスク因子
・針の形とサイズ
・発症機序仮説①
・硬膜穿刺部位からCSFが漏出し続ける
→頭蓋内のCSFの量が減る
→脳と頭蓋骨がこすれやすくなり、髄膜が刺激される
→髄膜は痛覚を感じるため頭痛が生じる
・この仮説から考えられる治療法
・CSFの漏出を最小限にする
・CSFの産生を促す
・脊髄から頭蓋内へCSFを移動させる
・発症機序仮説②
・CSFの減少により、頭蓋内圧が低下する
→代償性に脳血管拡張が起こる
→偏頭痛と同様の機序で頭痛が起こる
・根拠:以下の2点が偏頭痛と似ている
・女性に多い
・PDPH患者の脳MRIで脳血流が増加している
・この仮説から考えられる治療法
・脳血管収縮薬の使用
・保存的治療
・ベッド安静
・水分負荷
・腹臥位 / 背中を丸める体位を取る
・カフェイン
・トリプタン
・ACTH/ステロイド
・侵襲的治療
・くも膜下腔に生食投与/カテーテルを留置
・硬膜外腔に生食投与/モルヒネ投与/デキストラン投与
・ブラッドパッチ/予防的ブラッドパッチ
・各治療のエビデンス
・ベッド上安静
・安静時間の延長がPDPH発生を減らすというエビデンスなし
・頭痛があっても症状が安定しているなら早期に離床を
・補液
・硬膜穿刺後補液をした研究は1つしかない
・PDPH発生減らすエビデンスはないが脱水はよくない
・腹臥位、背中を丸める体位を取る
・腹圧上昇
→CSFが腰椎から頭蓋内のコンパートメントに移行
・ただし支持する研究は行われていない
・カフェイン摂取(経口or経静脈)
→いくつか研究あり
・カフェイン経静脈的投与
・保存的加療に反応しなかったPDPHの患者41人
→500mgのカフェインを経静脈的に投与
→70%の患者が頭痛消失
・カフェイン経口投与
・カフェイン群で有意に頭痛は改善
・カフェインで頭痛が改善した群
→うち6人は翌日には頭痛再燃
・ステロイド
・脊椎麻酔で帝王切開を受け、PDPH発症した患者60人
・30人ずつHydrocortisone群と安静のみ群に分ける
→有意差を持ってHydrocortisone群で頭痛の程度が改善
・硬膜外生食持続投与
・頭痛が改善したという報告いくつかあり
・EBP(硬膜外ブラッドパッチ)
・PDPH治療のゴールドスタンダード
・硬膜外針を通して自己静脈血(15~20mlが理想)を
硬膜と脊椎の間の脂肪組織に注入
・できれば硬膜穿刺部位に近い椎間から注入
※血液が十分量あれば離れていてもOK
・注入後、1時間~2時間仰臥位
・菌血症や発熱患者、HIV感染者には避ける
・宗教上の理由で拒否する患者
→血液の代わりにデキストラン注入を考慮
・成功率は?
・以前は95%もの成功率と報告
→これらの研究のほとんどが前向き試験ではない
・EBPの成功率は65%ほどしかないとする報告も
・成功率を下げる独立因子
・穿刺した針の太さ
・硬膜穿刺してからEBP施行まで4日以上
・EBPの血液量が不十分
・硬膜外腔デキストラン投与
・適応:宗教上の理由などでEBPを拒否した患者など
・成功例報告あり
・神経毒性やアレルギー反応の危険性がある
・現時点ではスタンダードな治療とはいえない