2012年6月29日金曜日

周術期の体温調節とシバリング

初期研修医勉強会  担当:O先生

「周術期の体温調節とシバリング」

・末梢温
   ・皮膚温、約31~36℃に設定、外気温に大きく影響
・中枢温
   ・37±0.2℃に設定
   ・食道、肺動脈、鼻咽頭、鼓膜、直腸、膀胱
     ・食道温:大血管に近く、変化に敏感
        →開胸、上腹部開腹では外気温の影響
     ・直腸温
        →簡便で最も利用されるモニター
        →他のモニターより高温、消化管の熱孤立、
        →下腹部、骨盤内臓器手術では不向き
・閾値間域(interthreshold range)
   ・自律性体温調節の作動しない中枢温(セットポイント)
   ・37℃付近
・体温上昇
   →発汗、血管拡張→熱放散
・体温低下
   ・血管収縮→熱放散抑制
   ・非ふるえ熱産生
     →褐色脂肪細胞・骨格筋での熱産生
   ・シバリング→熱産生
・麻酔中の中枢温の低下
  ・第1相
     ・再分布性低体温
     ・血管拡張による熱容量の中枢から末梢への移動 
     ・導入から1時間以内に0.5~1℃低下
  ・第2相
     ・熱放散>熱産生
     ・1~4時間、直線的に低下
  ・第3相
     ・血管収縮閾値温度より低くなる
      →血管収縮、
      →熱産生=熱放散
・麻酔中
  ・麻酔薬の作用
    ①発汗、血管拡張閾値温度の上昇
    ②血管収縮、シバリング閾値温度の低下
      →閾値間域の拡大
      →体温調節反応の抑制
      →体温の低下
・術後
  ・麻酔薬の投与終了
    →閾値間域の狭小化
  ・炎症性サイトカイン(IL-6,IFN)の血中濃度上昇
    →閾値間域の上昇
    →シバリング閾値の上昇

ブレイク
「アメコミのヒーロー」

・低体温による影響
   ・患者の不快感、寒気
   ・シバリング
   ・酸素消費量3~6倍に増加、心肺合併症患者ではリスク
   ・覚醒遅延
   ・筋弛緩薬の作用延長
   ・創感染、創離開
   ・創部組織への酸素供給低下
   ・凝固障害、術中出血量、輸血量の増加
   ・術後心合併症の頻度増加
   ・心筋虚血の発生頻度の増加
   ・代謝の亢進によりアシドーシス
・周術期シバリングのリスク
   ・低体温
     →シバリングの閾値温度以下の体温
   ・疼痛刺激をはじめとするストレス
     →シバリング閾値温度の上昇
   ・侵襲の強い手術
     →開胸、開腹、長時間手術
   ・レミフェンタニルの使用
     ・他のオピオイドの2倍のリスク
     ・μオピオイドの抗シバリング効果の消失
・シバリングの予防
   ・体温保持
     →温風式加温装置、タオルケット、輸液の加温
   ・transitional opioidの投与
   ・NSAIDs
     →鎮痛、セットポイント上昇の抑制
   ・アミノ酸製剤
     →代謝に影響を与え、熱産生効果を高める
・シバリングの治療
   ・酸素投与
     →冠虚血や末梢酸素供給低下を避ける
   ・温風式加温装置による加熱
   ・ペチジン(0.5-1.0mg/kg程度)
   ・Κ親和性のある弱オピオイド
     →抗シバリング効果強い
   ・マグネシウム投与
   ・デクスメデトミジン(α2作動薬)
   ・降圧薬とβ遮断薬を投与



 N病院から研修に来てくれたS先生。大変助かりました。