2014年1月30日木曜日

ロボット支援下前立腺全摘術の麻酔

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「ロボット支援下前立腺全摘術の麻酔」

・ロボット支援下前立腺全摘術(RALP)
・da Vinciを使用。
  →手術支援ロボット
   ・Surgeon Console
   ・Patient Cart
     ・Vision Cartの3つからなる。
・手術室のセッティング。
・手術の流れ
  ・麻酔導入、動脈ライン1本静脈ライン2本
    →体位固定(砕石位)
    →ヘッドダウンテスト(頭低位30度)
    →砕石位で手術開始
    →ポート挿入、気腹
    →ポート挿入後、頭低位30度、da Vinciロールイン
    →コンソール操作開始(気腹圧10)。
    →DVC処理で一時的に気腹圧15に。
    →コンソール操作終了
    →ヘッドアップ、da Vinciロールアウト
    →ポート抜去、手術終了
    →抜管。
・全身麻酔と気腹
  ・呼吸:PaCO2増加、CO2塞栓、皮下気腫
  ・循環:CO増加、末梢血管抵抗増加、肺血管抵抗増加
・頭低位(Steep Trendelenburg position)
 ・頭低位における循環
  ・上肢
    →血管内圧増加
     ・頭蓋内圧上昇、眼圧上昇、上気道浮腫・・・
     ・CO増加、CVP上昇
  ・下肢
    →下腿灌流低下
     ・下腿虚血、コンパートメント症候群
    →骨盤内圧低下
     ・CO2塞栓
 ・頭低位における呼吸
  ・腹腔内圧の上昇→横隔膜の圧迫
    ・肺コンプライアンス低下
    ・気道内圧上昇
    ・無気肺形成
    ・V/Q mismatch・・・
  ・挿管チューブの変位
    ・頭部後屈→事故抜管
    ・気管の頭側変位→片肺換気
・頭低位の影響について論文いろいろ
  ・頭低位の角度に関して標準化された基準はない。
  ・角度に依存して血圧、気道内圧は上昇、肺comliance低下。
   ・CO2気腹を伴う40°頭低位に患者は十分耐えうる。
  ・年長者ではPaCO2-EtCo2 gapが広がる可能性。
  ・ST位においてはVCMでもPCVでも臨床的問題となる差はない。
・頭低位における眼合併症について
  ・ST位が長引けば眼灌流圧維持の自動能が保持されなくなる可能性
  ・頭低位手術の患者
    ・術中パラメータ観察&術後眼科診察の報告
                →視力検査、RNFLを評価
    ・IOPは時間毎に上昇傾向(max 36 mmHg)。
    ・視力検査、RNFLは全例術前術後で変化なし。
    ・眼合併症もなし。
       術前眼合併症がないならば・・・
        →数時間のST位によるIOP上昇は問題ない。
  ・IOP上昇のリスク因子
    →①手術時間、②EtCO2増加
  ・IOP上昇の予測因子
    →眼瞼浮腫、結膜浮腫の存在がIOP>40mmHgの予測因子
  ・麻酔科専用眼圧計があるので術中計測しましょう。
・下腿コンパートメント症候群
  ・頭低位で下腿が心臓よりも上方へ
    →下腿灌流低下+レビテータによる圧迫
    →下腿虚血、再灌流、コンパートメント症候群
  ・英国の報告では9/3110(0.29%)。
    ・リスク因子は
      ①ST位時間>4h
      ②early learning curve段階
      ③肥満(BMI>30kg/m2)
      ④末梢血管疾患の合併
      ⑤不適切な体位
・その他の合併症報告
  ・腕神経叢麻痺
    ・肩への圧迫刺激によるもの
      →当院ではHUG-U-VAC使用で圧の分散化を狙う。
    ・上気道浮腫
      →抜管後、再挿管になる可能性。
・その他トピックスいろいろ
  ・術中脳酸素飽和度に臨床的変化なし。
  ・予防的抗生剤投与はST合剤か、第二第三世代セフェム。
  ・DVTハイリスク手術ではない。
  ・SVVが輸液反応性の指標になるかも。
  ・体温が下がります。保温&室温upを!
  ・フェイスガードで顔面保護を。
    →カメラコード、助手の腕が顔面に当たるため。
・術後鎮痛
  ・硬膜外麻酔は必要なさそう
  ・アナペイン局所麻酔注射は効果あり。
  ・IV-PCA、フェンタニル精密持続、NSAIDS、アセトアミノフェンなど。
  ・トラマールを使用する施設も。



       頭低位シミュレーション

結核診療の基礎知識

ICU勉強会 担当:K先生

「結核診療の基礎知識」

・結核
  ・世界三大感染症の1つ
  ・世界で年間880万人発病、175万人が死亡
  ・日本は先進国中でも結核が多い。
     →年間約3万人が罹患し、2300人以上が死亡
     →罹患率は1997年から微増、2000年以降は減少
  ・高齢者の比率が多く70歳以上が約4割を占める
  ・日本の罹患率のワースト3は大阪、東京、兵庫
  ・結核の約8-9割は肺結核
  ・2007年4月から結核予防法が感染症法に統合
     →結核は二類感染症に分類された
・結核菌
  ・抗酸菌(Acid-fast bacillus)(好気性桿菌)
  ・ミコール酸などのワックス状の細胞壁成分を持つ。
     →毒や乾燥に強い
  ・分裂速度が遅い(15-24時間)
  ・塗抹陽性患者の咳、くしゃみ
     →飛沫が 放出、飛沫核となる。
     →これを吸引することが感染の契機となる
  ・結核は飛沫核(空気)感染
  ・吸引された結核菌がマクロファージに貪食
     →一部が処理しきれず増殖(感染成立)
     →細胞性免疫が成立すると・・・
        →特徴的な壊死を伴った(乾酪性)肉芽組織に封入
・結核の感染様式
・結核の感染と発病
  ・一次結核と二次結核について
   →結核に感染しても約1割の人しか発病しない
・結核を疑うべき状況
  ・慢性(2週間以上)の咳、痰(血痰)、発熱
  ・全身倦怠感、体重減少、寝汗、胸痛、呼吸苦
    →結核に特有の症状はない。
    →結核を疑うことが大切
  ・発症リスク要因
    ・高齢者、糖尿病、免疫抑制治療中、
     悪性腫瘍、透析患者、濃厚接触、・・・
  ・一般の抗菌剤でよくならない肺炎
・胸部単純写真
  ・典型的には上葉(S1,2)及びS6に好発する
   辺縁不整な浸潤影や結節影で空洞形成を伴う。
  ・但し、空洞を伴わない孤立性結節影、広範な浸潤影など
   多彩な陰影を呈し、典型的でなくても否定できない。
  ・栗粒結核では両側肺野全体にびまん性の粒状影を呈する。
・胸部CT所見
・感染を疑ったら・・・
  →まずは三連痰
   ・喀痰抗酸菌塗抹検査が1回陰性
     →排菌(塗抹陽性)は否定できない!
     →3回実施して塗抹陽性患者の80-90%が検出できる  
   ・喀痰が出ない人は
     ①胃液採取 ②気管支鏡検査
・喀痰の肉眼的品質評価
  →Miller&Jones分類
・喀痰の顕微鏡的品質評価
  →Geckler分類
・抗酸菌検査結果の解釈のポイント
  ・喀痰の性状に注意 (M&J分類のM1,2では再提出)
  ・抗酸菌塗沫陽性でも結核とは限らない(NTMもある)
  ・結核菌と同定したら、薬剤感受性検査を必ず行う
    ・薬剤感受性検査の結果に数週間かかる
      →一般に治療は薬剤感受性結果を待たずに開始する
  ・陳旧性結核所見のある人の結核菌PCR陽性に注意
    →死菌をみている可能性があり培養検査を必ず併用する
  ・気管支洗浄液、胃液の塗抹陽性は排菌を意味しない
  ・肺結核以外の結核(喀痰塗抹陰性)は隔離不要
・ツベルクリン反応
  ・ツ反陰性だった人が陽転化した場合には結核感染を示唆する
    →栗粒結核などの重症例やHIV感染などではツ反陰性となる
・結核の主要な感染源
・クォンティフェロン
・結核患者への対応
  ・喀痰結核菌塗沫陽性(排菌)患者の場合
    ・患者にサージカルマスク、医療従事者にN95マスクを装着
        入院が必要な場合は陰圧個室で。
    ・結核病棟のある専門施設に連絡
      →近隣なら西神戸医療センター、兵庫中央病院など
    ・専門施設への入院までの間は、自宅待機
      →乳幼児や免疫力が低下した人への接触は避ける
・塗沫陰性、培養陽性患者の場合
    ・隔離は不要であり外来で加療可能(呼吸器内科へ紹介)
・結核患者の届け出について
・結核患者の鑑別診断
  ・肺炎
  ・肺真菌症(アスペルギルスなど)
  ・肺癌
  ・非結核性抗酸菌症
  ・サルコイドーシス
・結核治療の原則
  ・原則1:感性薬剤の使用
  ・原則2:併用療法の原則
  ・原則3:初期強化療法と維持療法を分けて考える
  ・原則4:薬剤変更の時、1剤ずつの変更はしない
  ・原則5:完全服薬の励行(DOTSの実施)
・結核の標準治療
・非定型抗酸菌症(NTM)1
  ・日本のNTMの70%以上を占める。
     ①中年女性に多い「中葉・舌区型」
     ②男性に多い「空洞形成型(結核症類似型)
     ③HIV感染者でみられる「全身播種型」
・非定型抗酸菌症(NTM)2
  ・MACについで2番目に多いNTM
  ・男性が多い(80%)
  ・症状、画像所見ともに結核に類似(結核に比べて散布影が少ない)
  ・抗結核薬の効果が期待できる
・結核を見逃さないために
  ・慢性の咳、痰があれば胸部Xpを撮る
  ・肺炎の影をみたら結核の可能性を考える
  ・陳旧性の陰影と決めつけず以前と比較する
  ・喀痰検査では痰の性状も確認する
  ・胸水をみたら結核性胸膜炎も考慮する


2014年1月24日金曜日

硬膜穿刺後頭痛

麻酔EBM勉強会  担当:I先生

「硬膜穿刺後頭痛」

・硬膜穿刺後頭痛
  ・多くの場合は持続期間も短く軽症。
  ・頭痛で動けず、退院が伸びてしまうこともある。
  ・数か月、数年単位で持続したり慢性化しうる。
  ・脳神経麻痺や硬膜下血腫の原因になりうる。
  ・予想以上に頻度が高く訴訟になることも。
・リスク因子
  ・針の形とサイズ
・発症機序仮説①
  ・硬膜穿刺部位からCSFが漏出し続ける
    →頭蓋内のCSFの量が減る
    →脳と頭蓋骨がこすれやすくなり、髄膜が刺激される
    →髄膜は痛覚を感じるため頭痛が生じる
  ・この仮説から考えられる治療法
    ・CSFの漏出を最小限にする
    ・CSFの産生を促す
    ・脊髄から頭蓋内へCSFを移動させる
・発症機序仮説②
  ・CSFの減少により、頭蓋内圧が低下する
    →代償性に脳血管拡張が起こる
    →偏頭痛と同様の機序で頭痛が起こる
  ・根拠:以下の2点が偏頭痛と似ている
    ・女性に多い
    ・PDPH患者の脳MRIで脳血流が増加している
  ・この仮説から考えられる治療法
    ・脳血管収縮薬の使用
・保存的治療
  ・ベッド安静
  ・水分負荷
  ・腹臥位 / 背中を丸める体位を取る
  ・カフェイン
  ・トリプタン
  ・ACTH/ステロイド
・侵襲的治療
  ・くも膜下腔に生食投与/カテーテルを留置
  ・硬膜外腔に生食投与/モルヒネ投与/デキストラン投与
  ・ブラッドパッチ/予防的ブラッドパッチ
・各治療のエビデンス
 ・ベッド上安静
   ・安静時間の延長がPDPH発生を減らすというエビデンスなし
   ・頭痛があっても症状が安定しているなら早期に離床を
 ・補液
   ・硬膜穿刺後補液をした研究は1つしかない
   ・PDPH発生減らすエビデンスはないが脱水はよくない
 ・腹臥位、背中を丸める体位を取る
   ・腹圧上昇
     →CSFが腰椎から頭蓋内のコンパートメントに移行
   ・ただし支持する研究は行われていない
   ・カフェイン摂取(経口or経静脈)
     →いくつか研究あり
 ・カフェイン経静脈的投与
   ・保存的加療に反応しなかったPDPHの患者41人
    →500mgのカフェインを経静脈的に投与
    →70%の患者が頭痛消失
 ・カフェイン経口投与
   ・カフェイン群で有意に頭痛は改善
   ・カフェインで頭痛が改善した群
    →うち6人は翌日には頭痛再燃
 ・ステロイド
   ・脊椎麻酔で帝王切開を受け、PDPH発症した患者60人
   ・30人ずつHydrocortisone群と安静のみ群に分ける
     →有意差を持ってHydrocortisone群で頭痛の程度が改善
 ・硬膜外生食持続投与
   ・頭痛が改善したという報告いくつかあり
 ・EBP(硬膜外ブラッドパッチ)
   ・PDPH治療のゴールドスタンダード
   ・硬膜外針を通して自己静脈血(15~20mlが理想)を
    硬膜と脊椎の間の脂肪組織に注入
   ・できれば硬膜穿刺部位に近い椎間から注入
      ※血液が十分量あれば離れていてもOK
   ・注入後、1時間~2時間仰臥位
   ・菌血症や発熱患者、HIV感染者には避ける
   ・宗教上の理由で拒否する患者
     →血液の代わりにデキストラン注入を考慮
   ・成功率は?
     ・以前は95%もの成功率と報告  
       →これらの研究のほとんどが前向き試験ではない 
     ・EBPの成功率は65%ほどしかないとする報告も
   ・成功率を下げる独立因子
     ・穿刺した針の太さ
     ・硬膜穿刺してからEBP施行まで4日以上
       ・EBPの血液量が不十分   
 ・硬膜外腔デキストラン投与
   ・適応:宗教上の理由などでEBPを拒否した患者など
   ・成功例報告あり
   ・神経毒性やアレルギー反応の危険性がある
   ・現時点ではスタンダードな治療とはいえない


2014年1月22日水曜日

ICU過去、現在、未来

ICU勉強会  担当:M先生

「ICU過去、現在、未来」

・最近G-ICU入室しなくなった症例
  ・COPD急性増悪に対する挿管、人工呼吸管理
  ・喘息重積発作
    →いずれも内科的コントロールがよくなった。
  ・肝不全に対するCHDF+血漿交換
  ・下部消化管穿孔など敗血症患者の外来経由の救急入院
    →E-ICUに入るようになった。
  ・小児先天性心疾患術後
    →手術自体を当院でやらなくなった。
・医療機器・薬剤の開発
  ・電子カルテへの移行
  ・低侵襲のモニター
  ・短時間作用性
  ・機械そのものの進歩
・鎮静薬 
  ・従来は・・・
    →セレネース+アキネトン、ペンタジン+アタラックスp、
     ホリゾン、ドルミカム
  ・短時間作用性の薬剤の出現
    →持続で使用できかつ鎮静レベルの調整が容易
    →プロポフォール、プレセデックス
    →鎮静レベルのスコア化が可能に
  ・経口薬の利用
  ・BIS
・気道
  ・経鼻挿管から経口挿管へ
  ・様々な挿管デバイス
    ・LMA、ビデオ喉頭鏡、AWS、McGRATH、
     BFの外付けモニター、光源の小型化
・呼吸器
  ・人工呼吸器の発達
    ・PSなど自発呼吸を生かした換気モード
       →昔は対応できる機械が少なかった。
    ・新生児から成人からまで対応可能
    ・フロートリガー
    ・NIVもできる呼吸器の発達やNHFの導入
  ・モニター
    ・SPO2やETCO2、吸入麻酔ガス濃度
・循環器
  ・cGMPを増加させる薬剤の開発
  ・βブロッカーの適応
  ・スタチン
  ・心拍出量や混合静脈血酸素飽和度の持続的な表示
  ・機械による連続的心拍出量表示
     →測定者による誤差がない。時間節約に。
  ・TTEに加えTEEの発達
  ・IABP,PCPSの小型化(VADの発達)
・輸血
  ・新鮮血から保存血、成分輸血へ
  ・セルセイバー
  ・MUF
・消化管と栄養
  ・経腸栄養の発達と中心静脈栄養症例の減少
  ・様々な用途の経腸栄養製剤
  ・経口薬の積極的利用
  ・PPIの開発
・腎臓
  ・HD,PDで管理→CHDの開発
  ・CHD回路の進歩により小児にも使用可
  ・アクトシン、イノバンからハンプへ
・内分泌
  ・至適血糖コントロール方法は
  ・ステロイド使用法
  ・パルス療法から相対的副腎機能不全へ
・筋骨格系
  ・筋弛緩薬
  ・ミオブロック→マスキュラックス→エスラックス
  ・ブリディオンの出現
  ・ICUにおけるリハビリ
・DVT予防
  ・弾性ストッキング
  ・フットポンプ
  ・抗凝固
・鎮痛
  ・フェンタニル持続使用の認可、アルチバ
  ・NSAIDsやアセトアミノフェンの静注薬
  ・ブロックの利用
  ・肋間神経ブロック→持続へ
  ・TAPなど
・感染症
  ・抗菌薬の開発と耐性菌
  ・感染症科の独立
・画像検査
  ・胸腹部のレントゲンのみ
  ・CTの活用
  ・エコー利用
  ・電子カルテ化
    →画像をシャウカステンに掛けずともカンファ可能に。
・検査結果
  ・救急検査はCBCと限られた生化学検査のみ
  ・ABG:機器の発達でHbや電解質、血糖も検査室と誤差がない
  ・凝固系の測定可能→安全な抗凝固
  ・生化学、電解質も測定範囲が広がる
・1つの分野のみの発達だけでは、ICU管理は変わらない
  ・心臓手術では・・・
     ・短時間作用性の麻酔薬と持続投与可能な鎮静薬の開発
      自発呼吸と同調できる呼吸器開発
      術中管理を容易にするデバイスの進歩
    →心臓術後の早期抜管に
  ・CHDは心臓手術の適応を広げた
・未だ開発されないもの
  ・肝臓の代わりをするもの
  ・透析のために太い透析用カテーテルを挿入することは同じ。
   機械の大きさもあまり変わりはない
  ・せん妄を予防すること、すぐに回復させる事は困難


大人になった先天性心疾患

麻酔科勉強会  担当:M先生

「大人になった先天性心疾患」

・先天性心疾患(CHD)
  ・内科的、外科的治療の進歩で90%が成人期を迎えている
  ・毎年約9000人のCHD患者が成人(ACHD)
  ・30~40年前のACHDはASD、VSD、PDAなどの軽症例がほとんど
  ・最近の10数年でTOFや単心室といった複雑ACHDが増加
・手術既往による分類
  ・手術既往あり
    ・最終修復を受けたもの
      a.単純心疾患
      b.複雑心疾患
    ・姑息術
  ・手術なし
    ・軽症
    ・手術拒否
    ・手術困難
・姑息的手術
  ・Blalock-Taussig手術
  ・PA絞扼術
  ・Glenn手術
・某レビューより
  ・CHDで生存している人数は成人>小児
    →成人期に追加の姑息術や根治術や非心臓手術が必要
  ・ACHDは合併症率や死亡率が高い
    →2013年に初めて報告がでた
  ・ガイドラインはない
    →CHD専門の循環器内科医や麻酔科医のいる
     adult CHD centerに相談する事を勧めている
・代表する病態
  ・左-右シャント
    肺が受ける血流
     ・全身からの非酸素化血液+酸素化されたシャント血
    →全身の血流と体血圧が肺血管床にかかる。
    →非可逆的変化がおこり肺高血圧になる
    →体血圧=肺血圧
    →Eisenmenger syndorome
  ・右-左シャント
    ・SVR低下やPVR増加で増える
    ・SPO2 ↑には吸入酸素濃度上昇は効果は少ない
       →フェニレフリンの方が効果的
    ・効果発現
       →静脈麻酔薬は早い、吸入麻酔薬は遅い
・チアノーゼ心疾患
  ・肺血流減少し酸素化と非酸素化血液の混合でおこる
  ・成人までに成人期までに1から数回の手術を受けている
・長期生存の影響
  ・心臓合併症
   ・肺高血圧
   ・心室性不整脈、伝導障害
   ・残存シャント
   ・弁疾患
   ・高血圧
   ・大動脈瘤
  ・非心臓合併症
   ・非心臓合併症
   ・二次的赤血球増多症
   ・胆石、尿路結石
   ・発達障害
   ・以前の塞栓や脳血管障害による痙攣などの中枢神経系異常
   ・視力障害、聴力障害
   ・閉塞性または拘束性肺疾患
・肺高血圧症
  ・長期開存の大きな欠損孔
     →血流増加と圧負荷による肺血管床の変化
     →早期から起こり徐々に非可逆的に
  ・Eisenmenger化すると周術期死亡率増加
     →非心臓手術は絶対に必要なときのみ
  ・死亡率予測因子
     →失神、症状出現の年齢、上室性不整脈、
      右心房圧上昇、SPO2低下(<85%)、
      腎不全、右心不全、trisomy21
・肺高血圧症と麻酔
  ・肺血管抵抗を上昇させない
  ・肺血管抵抗の急激な上昇
    →右心不全と心拍出量低下
  ・徐脈から心停止
  ・対処
    ・FiO2 1.0での過換気
    ・アシドーシス補正
    ・交感神経刺激をさける
    ・体温補正
    ・胸腔内圧を最低へ
    ・強心薬
    ・NO吸入
  ・Eisenmenger症例
    →鉄欠乏の赤血球増多が血栓の予測因子となる
    ・術前の絶飲食により粘稠度増加
      →脳血管の血栓症の危険性上昇
      →適切な輸液が重要
    ・Ht>65%の時は術前の瀉血も有用
    ・Hb上昇と血漿量低下の状態
      →通常のPT-INRはあてにならない
・心不全
  ・ANP、レニン、アルドステロン、ノルエピネフリン
    →修復後も何年間も高い
  ・心臓の自律神経系の異常による
  ・左心不全→利尿薬、ジゴキシン、ACE阻害薬、βブロッカー
  ・右心不全に対する明確なガイドラインはない
・不整脈
・出血
  ・二次的な血小板数と機能低下(末梢での消費などによる)
  ・凝固系の異常
     →原因不明 VitK依存因子、V因子、
      von Willebland因子の低下によるPT-INR延長
  ・出血時間は、末梢の粘調度増加のため延長しない
  ・細動脈拡張と組織の血管増生による出血

・麻酔方法
  ・伝達麻酔は適応
  ・脊椎麻酔、硬膜麻酔
    →大きな心内シャントがある時、
     末梢血管抵抗がさがると右左シャント増加
  ・全身麻酔
    →換気コントロールが可能
    →high risk患者には適している
・麻酔管理
  ・多岐の専門性が必要
  ・機能低下症例、肺高血圧、うっ血性心不全、
   肺高血圧、チアノーゼ症例
  ・体位変換が必要な手術もリスク
    →Major surgery, 分離換気、腹臥位など
  ・解剖と生理を術前のエコーやカテーテル所見で知っておく
  ・術前エコーは必要

・具体的な麻酔方法など


2014年1月18日土曜日

観血的動脈圧測定

麻酔科勉強会  担当:W先生


「観血的動脈圧測定」


・血圧測定の歴史
・1733年、馬の動脈にカニュレーション
   →血液柱が上下することや約2.5mの高さに上昇することを発見
・動脈圧ラインの仕組み
  ・圧力センター部がホイットストーンブリッジ回路に接続
・加圧バッグにヘパリンを入れるべきか?
  ・挿入期間の中央値、必要とした処置、抜去理由、カテーテル機能
   ヘパリン添加溶液(1U/ml)と生食はすべてにおいて有意差なし
  ・血管閉塞率も有意差なし
  ・4日以内の使用であればヘパ生(2U/mL)と生食の開存性に有意差なし
・導入前の動脈ライン確保
  ・リドカインテープは穿刺6〜8時間前に貼り付けると良い
・動脈ラインは何Gを使う?
  ・20Gと18Gの4種類のカニューレを挿入し、
   アレンテスト、超音波、動脈造影で評価
     →血管充填率と動脈閉塞の発生率は正の相関関係あり。
  ・体格や年齢が同じでも女より男の方が動脈径は太い
     →撓骨動脈カニュレーションが女性で難しい原因
  ・20G vs 22G
        ・20G針では血管径が有意に増加(P=0.02)
     ・背景として穿刺回数に有意差あり(P=0.02)
・動脈ライン採血は?
  ・最低限、死腔の2倍以上は吸引するべき
  ・凝固(APTT)検査時は6倍以上吸引するべき
・ABP?NIBP?
  ・それぞれの誤差要因について
  ・NIBPは血流・血圧変化の双方を反映する
    →臨床的信頼度が高い?
  ・ABPは圧波を直接観察でき経時的変化を追求できる
    →臨床的価値は高い?
  ・ある研究
    ・sABP<111mmHgのとき、NIBP>ABP
    ・sABP>111mmHgのとき、NIBP<ABP
      →麻酔科医にとってNIBPは都合が良い?
    ・ABPのみで管理した方が、     輸血量・昇圧剤・降圧剤の使用が多かった
     ただし短期予後は変わらず
・人工心肺後の撓骨動脈圧偽性低下
  ・偽性低下
    →中枢・末梢間に圧較差が生じた状態
    →72%の症例で発生したという報告あり。
      ・末梢血管収縮、末梢血管拡張、循環血液量減少、
       血管弾性率の変化、・・・
      ・人工心肺中の再加温による動脈シャント説
        →盗血現象を起こすため



術後発熱

初期研修医勉強会 担当:Y先生

「術後発熱について」

・大手術後数日は38℃を超す発熱がよくある
・ほとんどの場合は自然に解熱する
  →しかし重篤な疾患が隠れていることもある
・発熱の原因
  ・Infection
    ・Surgical Site Infection
    ・Nosocomial Pneumonia・・・
  ・Non-Infection
    ・Suture Reaction
    ・DVT・・・
・術後反応熱のメカニズム
  ・侵襲により局所の炎症が起こりサイトカインが産生される
  ・侵襲が大きい程高熱を呈することが多い
  ・反応熱は術後2,3日で解熱することが多い
・発熱のタイミングにより鑑別
・薬剤熱
  ・定義:薬剤以外の原因が否定された発熱
  ・比較的徐脈は10%程度
     ・Antibiotics
     ・Anticonvulsant
     ・Flosemide
     ・Hydralazine
     ・Heparin・・・
・術後発熱の対応(IDSAガイドライン)
  ・術後48時間以内の発熱
    →呼吸器症状がないならばCXRは不要(level3
  ・尿路症状がないならば尿定性、培養は不要。
  ・48時間以上経過し尿道バルーンが挿入されている時
    →尿培養、定性提出(level3
  ・創部は毎日観察。感染を疑う徴候がなければ培養は不要
  ・常にDVT、PEの可能性を考慮する。
    (特に鎮静下、足が動かせない、悪性腫瘍の患者(level2
・血液培養は取るべき?
  →術後48時間は血液培養陽性率が低い。
  →医療経済的にも、労働力的にも省略してよい
・Surgical site infection(SSI)
  ・周術期感染症の38%を占める
  ・術後48時間以内の発熱はSSIは疑いにくい
  ・局所所見が最も有効
  ・創部周囲は1週間程度発赤するが抗菌薬等の治療なしに治癒する
  ・ほとんどのSSIは5日以内に症状が出ない
  ・部位による分類
    ・Superficial
    ・Deep incisional
    ・Organ/Space
・予防的抗菌薬投与
 ・抗菌薬の開始は術前60分以内
 ・半減期の2倍の時間経過
    or大量出血(>1500ml)でrepeat dosing
 ・Clean-contaminated, Contamitatedで最も効果がある
 ・バンコマイシンの使用は?
  ・RoutineのVancomycinの使用はSSIのリスクを上昇
  ・使う場面
    ・MRSAが施設にて培養された時
    ・MRSAが患者より培養された時 
    ・施設入所、透析患者などMRSA感染のリスクが高い時
 ・手術終了24時間以上の抗菌薬投与はSSIを減少させない
    ・耐性菌を増加させるかもしれない
・その他の感染防止
 ・Skin antisepsis
   →Chlorhexidine-alcohol>Popidon-iodine
 ・Hair removal
   ・ただし前日の剃毛はリスク上昇
   ・shaving<clipping< use of depilatory creams
 ・S.aureus decolonization
   ・S.aureus感染による入院期間の延長、医療費は膨大
   ・S.aureus感染
     →大部分がcross-infectionではなくpatient own flora
   ・鼻腔内S.aureus保菌
     →術後感染・透析患者・肝硬変患者における感染率を上昇
     →鼻腔内の除菌で感染率減少??