2012年9月20日木曜日

血液凝固とPoint of Care

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「血液凝固とPoint of Care」

・Waterfall model (1964)
  ・一般凝固機能、抗凝固薬の作用機序の原理を理解するには便利
  ・生体内の血液凝固を説明する上で正確ではない
  ・複雑?
・Cell-based model
  ・生体内の血液凝固をより正確に反映するモデル

・血小板の活性化
  ①血管損傷部位
     →GPIb/IXはvW因子を介して露出されたコラーゲンに粘着。
  ②血管外の組織因子も露出
     →血中の活性型VII因子と結合
     →Xaを経て微量のトロンビン(IIa)発生。
  ③コラーゲンとトロンビンはそれぞれGPVIとPAR1を活性化
     →局所の血小板凝集を活性化する
・血小板活性化の波及
  ・活性化された血小板はADPやトロンボキサンA2を放出
    →周囲の血小板も二次的に活性化。
    →活性化した血小板はフィブリノゲンと結合。
・血小板の凝集
  ・活性化をうけた血小板はGPIIb/IIIbを多数発現。
  ・このレセプターにvW因子またはフィブリノゲンが結合。
  ・多数の血小板が血管損傷部位を覆う(一次止血)
・クロット形成
  ・活性化した血小板表面
    →微量のトロンビンがV、VIII、XI因子を活性化する
  ・X因子活性化酵素による効率的なトロンビン産生。
    →十分な量のトロンビン
    →フィブリノゲンをXIIIa因子のもと安定化フィブリン重合化へ。
    →最終的に強固なclotが形成される。

・従来の凝固検査
  →生体内での血液凝固を説明するものとして必ずしも正確ではない
・PT、APTT
  ・血漿成分での評価
  ・フィブリンが析出するまでの時間の測定
  ・血餅の強度の評価ができない
  ・線溶系の評価ができない
・PT
  ・外因系凝固カスケードの活性をスクリーニング
  ・クエン酸加被検血漿に組織TPとCa2+を含んだ試薬を添加
    →フィブリン析出までの時間を測定する
・APTT
  ・内因系凝固カスケードの活性をスクリーニング
  ・クエン酸加被検血漿
  ・組織TPとCa2+を含んだ試薬を添加
  ・フィブリン析出までの時間を測定する(PTT)。
  ・さらにセライトやカオリン、エラジン酸などの陰性荷電物質を添加
    →XII因子などの接触物質の十分な活性化
    →安定で制度の高い方法にした検査(APTT)
・ACT
  ・全血凝固検査法
  ・活性化凝固時間
  ・高容量域のヘパリン効果はAPTTでは評価できない
  ・ベットサイドで測定可能
  ・活性化剤を混じたテストtube内に血液を入れる
    →凝固塊形成
    →tube内の棒磁石が重力に抗して回転移動。

・Point of Careモニター
・代表的な機器
  ・トロンボエラストグラフ(TEG®:Thrombelastograph)
  ・トロンボエラストメトリー(ROTEM®: Thromboelastometry)
  ・ソノクロット(Sonoclot®)
・point of careモニター
  ・装置が小型である(設置や移動が容易であること)
  ・検体の前処理(遠心分離など)が不要である
  ・測定時間が短い
  ・比較的少量の検体で測定できる
  ・結果の解釈が容易である
  ・臨床的再現性が高い
・従来の凝固検査と異なる点
  ・全血検査なので血小板と凝固因子の相互作用を評価できる
  ・凝固反応の速度を測定できる点
  ・血餅の弾性粘張度の変化を測定する
     →止血血栓の強度を計測できる点
  ・凝固過程だけではなく線溶過程も評価できる
  ・凝固・線溶過程を波形から視覚的にも評価できる点

・簡単にROTEM
  ・INTEM、EXTEMのCTはそれぞれAPTT、PTに相当
  ・CTは凝固因子活性を反映
  ・MCFはフィブリノゲン、血小板数に影響を受ける
  ・FIBTEMはフィブリノゲンのレベルと相関する
  ・FIBTEMのMCFが10mm以下orEXTEMのCTが正常の1.5倍以上
      →フィブリノゲン製剤の投与指標となる
  ・APTEM-EXTEMで線溶系の異常
  ・INTEM-HEPTEMでヘパリンの影響

・臨床応用
  ・心臓手術の術後出血管理
    →TEG導入後、輸血使用量を、著しく減らすことが可能になった。
  ・集中治療室での外傷ケアに推奨
  ・肝移植で輸血量の減少