2012年8月4日土曜日

再開胸止血術

麻酔科勉強会  担当:M先生


「再開胸止血術」


・開心術後再開胸の問題点
  ・手術室は大抵忙しい時が多い。
  ・外科医は待てないと急かす。
  ・ICUからの移動、沢山のラインや輸血・輸液がぶら下がって大変
  ・手術室でライン整理にイライラ
  ・輸血・輸液について
    →再開胸術前には大量輸血・輸液を要求される。
    →開胸後に輸血・輸液しすぎて閉じにくいと言われる。
・再開胸となる場合
  ・ICU 滞在がながくなる
  ・大量出血、大量輸血は合併症を増やす
  ・人工呼吸期間延長
  ・低心機能
  ・周術期のMI, CI, 感染、腎機能低下
・再開胸の費用
  ・Cost analysis of re-exploration for bleeding
     after coronary artery baypass graft surgery
                        BJA 108(2): 216-22(2012)
  ・2005-8 CABG後の4232
  ・出血による再開胸127症例とコントロール254例を比較
  ・スウェーデンの3大学の心臓センターで単独CABGを受けた患者
  ・年齢、 性別、DMの有無、吻合数、BMI、センターを一致
    →結果
      ・プラビック内服者に多い(出血例の1/3)。
      ・ICU滞在が長い。
      ・人工呼吸期間が長い。
      ・輸血量が多い。
      ・MIは多いが胸骨感染は差がない。
      ・全費用:19642 vs 13350ユーロ。
        →再開胸患者 6290ユーロ多い (約47%増)
・対策
  →抗凝固療法は術前5日前に中止。
  →rFVIIaの予防投与。
     ・予防投与で得られる高価 VS 予防投与にかかる費用。
     ・高価だが強力に術後出血を止める。
     ・再開胸 のrelative riskを50%減らすという報告もある
     ・4人に一人は再開胸を免れる。
     ・輸血による合併症を防ぐ。
     ・血栓症を引き起こす可能性。
・再開胸止血術をした場合
  ・麻酔料はとれる?。
     →薬剤料、胸骨ワイアや縫合糸はとれる。
     →手術料はとれない。
・術者の影響は?
   ・確実な手技は心臓手術の予後に影響。
   ・術者の質の定量化は困難。
   ・患者間のばらつき。
   ・施設間のばらつき。
   ・患者の死亡率の決定の評価に術者のperformanceは 必須ではない。
   ・グラフト血栓や胸骨創し開、大量出血は術者の技量に負うのでは。
・Individual surgen’s impact on the risk of re-exploration
              for excessive bleeding after bypass surgery
            J Cardiothoracic vascular anesthesia vol 26 (4), 2012
   ・2006-2011の CABG単独の2001症例
   ・113(5.3%)が再開胸
   ・対象術者
      ・12名
      ・2名はpostresidency 2年、他は9年以上
      ・患者の割当はリスクや経験によらない
      ・術者はこの時点でstudy については知らない
      ・麻酔科医も評価対象
   ・再開胸に関する因子
      ・術者
      ・BMI
      ・GFR < 30ml/min/1.73m
      ・麻酔科医間では差はない
   ・出血部位がわかったのは73%
   ・再開胸率は術者間で1.4 - 11.7%
   ・再開胸症例
     →LOSやカテコラミン使用期間延長
     →ICU在室期間の延長をもたらす
     →縦隔炎による再開胸やstrokeには関係しない

   ・予定、緊急手術でも差がある
   ・OPCABでも従来の術式でも差がある
   ・12名 中6名に再開胸率が高い
   ・再開胸を行うと、人的、施設的損失、コストもかかる
   ・術前のプラビックスは再開胸因子として認められている
   ・クロピドグエル非内服患者、緊急手術患者で差がある
     →術者の技量が関係
   ・患者要因は20%,
     →IMAや静脈グラフトの枝、吻合部出血が原因となるのは50%
   ・今回も75%が出血源同定
      →術者の技量の問題
   ・術後出血は中央値600-800ml
   ・再開胸率が高い術者ほど出血量が多い
   ・1600ml以上の出血に関して
     →術者間に差がある
     →麻酔科医では差がない
   ・リスクは?
      ・男性
      ・BMI<25 kg/m2
      ・末梢血管手術の既往
      ・緊急手術
      ・GFR<30ml/min/1.73m2



      大血管手術。ROTEM使用中。