2014年1月22日水曜日

ICU過去、現在、未来

ICU勉強会  担当:M先生

「ICU過去、現在、未来」

・最近G-ICU入室しなくなった症例
  ・COPD急性増悪に対する挿管、人工呼吸管理
  ・喘息重積発作
    →いずれも内科的コントロールがよくなった。
  ・肝不全に対するCHDF+血漿交換
  ・下部消化管穿孔など敗血症患者の外来経由の救急入院
    →E-ICUに入るようになった。
  ・小児先天性心疾患術後
    →手術自体を当院でやらなくなった。
・医療機器・薬剤の開発
  ・電子カルテへの移行
  ・低侵襲のモニター
  ・短時間作用性
  ・機械そのものの進歩
・鎮静薬 
  ・従来は・・・
    →セレネース+アキネトン、ペンタジン+アタラックスp、
     ホリゾン、ドルミカム
  ・短時間作用性の薬剤の出現
    →持続で使用できかつ鎮静レベルの調整が容易
    →プロポフォール、プレセデックス
    →鎮静レベルのスコア化が可能に
  ・経口薬の利用
  ・BIS
・気道
  ・経鼻挿管から経口挿管へ
  ・様々な挿管デバイス
    ・LMA、ビデオ喉頭鏡、AWS、McGRATH、
     BFの外付けモニター、光源の小型化
・呼吸器
  ・人工呼吸器の発達
    ・PSなど自発呼吸を生かした換気モード
       →昔は対応できる機械が少なかった。
    ・新生児から成人からまで対応可能
    ・フロートリガー
    ・NIVもできる呼吸器の発達やNHFの導入
  ・モニター
    ・SPO2やETCO2、吸入麻酔ガス濃度
・循環器
  ・cGMPを増加させる薬剤の開発
  ・βブロッカーの適応
  ・スタチン
  ・心拍出量や混合静脈血酸素飽和度の持続的な表示
  ・機械による連続的心拍出量表示
     →測定者による誤差がない。時間節約に。
  ・TTEに加えTEEの発達
  ・IABP,PCPSの小型化(VADの発達)
・輸血
  ・新鮮血から保存血、成分輸血へ
  ・セルセイバー
  ・MUF
・消化管と栄養
  ・経腸栄養の発達と中心静脈栄養症例の減少
  ・様々な用途の経腸栄養製剤
  ・経口薬の積極的利用
  ・PPIの開発
・腎臓
  ・HD,PDで管理→CHDの開発
  ・CHD回路の進歩により小児にも使用可
  ・アクトシン、イノバンからハンプへ
・内分泌
  ・至適血糖コントロール方法は
  ・ステロイド使用法
  ・パルス療法から相対的副腎機能不全へ
・筋骨格系
  ・筋弛緩薬
  ・ミオブロック→マスキュラックス→エスラックス
  ・ブリディオンの出現
  ・ICUにおけるリハビリ
・DVT予防
  ・弾性ストッキング
  ・フットポンプ
  ・抗凝固
・鎮痛
  ・フェンタニル持続使用の認可、アルチバ
  ・NSAIDsやアセトアミノフェンの静注薬
  ・ブロックの利用
  ・肋間神経ブロック→持続へ
  ・TAPなど
・感染症
  ・抗菌薬の開発と耐性菌
  ・感染症科の独立
・画像検査
  ・胸腹部のレントゲンのみ
  ・CTの活用
  ・エコー利用
  ・電子カルテ化
    →画像をシャウカステンに掛けずともカンファ可能に。
・検査結果
  ・救急検査はCBCと限られた生化学検査のみ
  ・ABG:機器の発達でHbや電解質、血糖も検査室と誤差がない
  ・凝固系の測定可能→安全な抗凝固
  ・生化学、電解質も測定範囲が広がる
・1つの分野のみの発達だけでは、ICU管理は変わらない
  ・心臓手術では・・・
     ・短時間作用性の麻酔薬と持続投与可能な鎮静薬の開発
      自発呼吸と同調できる呼吸器開発
      術中管理を容易にするデバイスの進歩
    →心臓術後の早期抜管に
  ・CHDは心臓手術の適応を広げた
・未だ開発されないもの
  ・肝臓の代わりをするもの
  ・透析のために太い透析用カテーテルを挿入することは同じ。
   機械の大きさもあまり変わりはない
  ・せん妄を予防すること、すぐに回復させる事は困難


大人になった先天性心疾患

麻酔科勉強会  担当:M先生

「大人になった先天性心疾患」

・先天性心疾患(CHD)
  ・内科的、外科的治療の進歩で90%が成人期を迎えている
  ・毎年約9000人のCHD患者が成人(ACHD)
  ・30~40年前のACHDはASD、VSD、PDAなどの軽症例がほとんど
  ・最近の10数年でTOFや単心室といった複雑ACHDが増加
・手術既往による分類
  ・手術既往あり
    ・最終修復を受けたもの
      a.単純心疾患
      b.複雑心疾患
    ・姑息術
  ・手術なし
    ・軽症
    ・手術拒否
    ・手術困難
・姑息的手術
  ・Blalock-Taussig手術
  ・PA絞扼術
  ・Glenn手術
・某レビューより
  ・CHDで生存している人数は成人>小児
    →成人期に追加の姑息術や根治術や非心臓手術が必要
  ・ACHDは合併症率や死亡率が高い
    →2013年に初めて報告がでた
  ・ガイドラインはない
    →CHD専門の循環器内科医や麻酔科医のいる
     adult CHD centerに相談する事を勧めている
・代表する病態
  ・左-右シャント
    肺が受ける血流
     ・全身からの非酸素化血液+酸素化されたシャント血
    →全身の血流と体血圧が肺血管床にかかる。
    →非可逆的変化がおこり肺高血圧になる
    →体血圧=肺血圧
    →Eisenmenger syndorome
  ・右-左シャント
    ・SVR低下やPVR増加で増える
    ・SPO2 ↑には吸入酸素濃度上昇は効果は少ない
       →フェニレフリンの方が効果的
    ・効果発現
       →静脈麻酔薬は早い、吸入麻酔薬は遅い
・チアノーゼ心疾患
  ・肺血流減少し酸素化と非酸素化血液の混合でおこる
  ・成人までに成人期までに1から数回の手術を受けている
・長期生存の影響
  ・心臓合併症
   ・肺高血圧
   ・心室性不整脈、伝導障害
   ・残存シャント
   ・弁疾患
   ・高血圧
   ・大動脈瘤
  ・非心臓合併症
   ・非心臓合併症
   ・二次的赤血球増多症
   ・胆石、尿路結石
   ・発達障害
   ・以前の塞栓や脳血管障害による痙攣などの中枢神経系異常
   ・視力障害、聴力障害
   ・閉塞性または拘束性肺疾患
・肺高血圧症
  ・長期開存の大きな欠損孔
     →血流増加と圧負荷による肺血管床の変化
     →早期から起こり徐々に非可逆的に
  ・Eisenmenger化すると周術期死亡率増加
     →非心臓手術は絶対に必要なときのみ
  ・死亡率予測因子
     →失神、症状出現の年齢、上室性不整脈、
      右心房圧上昇、SPO2低下(<85%)、
      腎不全、右心不全、trisomy21
・肺高血圧症と麻酔
  ・肺血管抵抗を上昇させない
  ・肺血管抵抗の急激な上昇
    →右心不全と心拍出量低下
  ・徐脈から心停止
  ・対処
    ・FiO2 1.0での過換気
    ・アシドーシス補正
    ・交感神経刺激をさける
    ・体温補正
    ・胸腔内圧を最低へ
    ・強心薬
    ・NO吸入
  ・Eisenmenger症例
    →鉄欠乏の赤血球増多が血栓の予測因子となる
    ・術前の絶飲食により粘稠度増加
      →脳血管の血栓症の危険性上昇
      →適切な輸液が重要
    ・Ht>65%の時は術前の瀉血も有用
    ・Hb上昇と血漿量低下の状態
      →通常のPT-INRはあてにならない
・心不全
  ・ANP、レニン、アルドステロン、ノルエピネフリン
    →修復後も何年間も高い
  ・心臓の自律神経系の異常による
  ・左心不全→利尿薬、ジゴキシン、ACE阻害薬、βブロッカー
  ・右心不全に対する明確なガイドラインはない
・不整脈
・出血
  ・二次的な血小板数と機能低下(末梢での消費などによる)
  ・凝固系の異常
     →原因不明 VitK依存因子、V因子、
      von Willebland因子の低下によるPT-INR延長
  ・出血時間は、末梢の粘調度増加のため延長しない
  ・細動脈拡張と組織の血管増生による出血

・麻酔方法
  ・伝達麻酔は適応
  ・脊椎麻酔、硬膜麻酔
    →大きな心内シャントがある時、
     末梢血管抵抗がさがると右左シャント増加
  ・全身麻酔
    →換気コントロールが可能
    →high risk患者には適している
・麻酔管理
  ・多岐の専門性が必要
  ・機能低下症例、肺高血圧、うっ血性心不全、
   肺高血圧、チアノーゼ症例
  ・体位変換が必要な手術もリスク
    →Major surgery, 分離換気、腹臥位など
  ・解剖と生理を術前のエコーやカテーテル所見で知っておく
  ・術前エコーは必要

・具体的な麻酔方法など


2014年1月18日土曜日

観血的動脈圧測定

麻酔科勉強会  担当:W先生


「観血的動脈圧測定」


・血圧測定の歴史
・1733年、馬の動脈にカニュレーション
   →血液柱が上下することや約2.5mの高さに上昇することを発見
・動脈圧ラインの仕組み
  ・圧力センター部がホイットストーンブリッジ回路に接続
・加圧バッグにヘパリンを入れるべきか?
  ・挿入期間の中央値、必要とした処置、抜去理由、カテーテル機能
   ヘパリン添加溶液(1U/ml)と生食はすべてにおいて有意差なし
  ・血管閉塞率も有意差なし
  ・4日以内の使用であればヘパ生(2U/mL)と生食の開存性に有意差なし
・導入前の動脈ライン確保
  ・リドカインテープは穿刺6〜8時間前に貼り付けると良い
・動脈ラインは何Gを使う?
  ・20Gと18Gの4種類のカニューレを挿入し、
   アレンテスト、超音波、動脈造影で評価
     →血管充填率と動脈閉塞の発生率は正の相関関係あり。
  ・体格や年齢が同じでも女より男の方が動脈径は太い
     →撓骨動脈カニュレーションが女性で難しい原因
  ・20G vs 22G
        ・20G針では血管径が有意に増加(P=0.02)
     ・背景として穿刺回数に有意差あり(P=0.02)
・動脈ライン採血は?
  ・最低限、死腔の2倍以上は吸引するべき
  ・凝固(APTT)検査時は6倍以上吸引するべき
・ABP?NIBP?
  ・それぞれの誤差要因について
  ・NIBPは血流・血圧変化の双方を反映する
    →臨床的信頼度が高い?
  ・ABPは圧波を直接観察でき経時的変化を追求できる
    →臨床的価値は高い?
  ・ある研究
    ・sABP<111mmHgのとき、NIBP>ABP
    ・sABP>111mmHgのとき、NIBP<ABP
      →麻酔科医にとってNIBPは都合が良い?
    ・ABPのみで管理した方が、     輸血量・昇圧剤・降圧剤の使用が多かった
     ただし短期予後は変わらず
・人工心肺後の撓骨動脈圧偽性低下
  ・偽性低下
    →中枢・末梢間に圧較差が生じた状態
    →72%の症例で発生したという報告あり。
      ・末梢血管収縮、末梢血管拡張、循環血液量減少、
       血管弾性率の変化、・・・
      ・人工心肺中の再加温による動脈シャント説
        →盗血現象を起こすため



術後発熱

初期研修医勉強会 担当:Y先生

「術後発熱について」

・大手術後数日は38℃を超す発熱がよくある
・ほとんどの場合は自然に解熱する
  →しかし重篤な疾患が隠れていることもある
・発熱の原因
  ・Infection
    ・Surgical Site Infection
    ・Nosocomial Pneumonia・・・
  ・Non-Infection
    ・Suture Reaction
    ・DVT・・・
・術後反応熱のメカニズム
  ・侵襲により局所の炎症が起こりサイトカインが産生される
  ・侵襲が大きい程高熱を呈することが多い
  ・反応熱は術後2,3日で解熱することが多い
・発熱のタイミングにより鑑別
・薬剤熱
  ・定義:薬剤以外の原因が否定された発熱
  ・比較的徐脈は10%程度
     ・Antibiotics
     ・Anticonvulsant
     ・Flosemide
     ・Hydralazine
     ・Heparin・・・
・術後発熱の対応(IDSAガイドライン)
  ・術後48時間以内の発熱
    →呼吸器症状がないならばCXRは不要(level3
  ・尿路症状がないならば尿定性、培養は不要。
  ・48時間以上経過し尿道バルーンが挿入されている時
    →尿培養、定性提出(level3
  ・創部は毎日観察。感染を疑う徴候がなければ培養は不要
  ・常にDVT、PEの可能性を考慮する。
    (特に鎮静下、足が動かせない、悪性腫瘍の患者(level2
・血液培養は取るべき?
  →術後48時間は血液培養陽性率が低い。
  →医療経済的にも、労働力的にも省略してよい
・Surgical site infection(SSI)
  ・周術期感染症の38%を占める
  ・術後48時間以内の発熱はSSIは疑いにくい
  ・局所所見が最も有効
  ・創部周囲は1週間程度発赤するが抗菌薬等の治療なしに治癒する
  ・ほとんどのSSIは5日以内に症状が出ない
  ・部位による分類
    ・Superficial
    ・Deep incisional
    ・Organ/Space
・予防的抗菌薬投与
 ・抗菌薬の開始は術前60分以内
 ・半減期の2倍の時間経過
    or大量出血(>1500ml)でrepeat dosing
 ・Clean-contaminated, Contamitatedで最も効果がある
 ・バンコマイシンの使用は?
  ・RoutineのVancomycinの使用はSSIのリスクを上昇
  ・使う場面
    ・MRSAが施設にて培養された時
    ・MRSAが患者より培養された時 
    ・施設入所、透析患者などMRSA感染のリスクが高い時
 ・手術終了24時間以上の抗菌薬投与はSSIを減少させない
    ・耐性菌を増加させるかもしれない
・その他の感染防止
 ・Skin antisepsis
   →Chlorhexidine-alcohol>Popidon-iodine
 ・Hair removal
   ・ただし前日の剃毛はリスク上昇
   ・shaving<clipping< use of depilatory creams
 ・S.aureus decolonization
   ・S.aureus感染による入院期間の延長、医療費は膨大
   ・S.aureus感染
     →大部分がcross-infectionではなくpatient own flora
   ・鼻腔内S.aureus保菌
     →術後感染・透析患者・肝硬変患者における感染率を上昇
     →鼻腔内の除菌で感染率減少??



2013年12月15日日曜日

開心術後の低リン血症

ICU勉強会  担当:Y先生

「低リン血症」

・Pは体内に600g存在する。
  ・85%→ハイドロキシアパタイトとして骨に蓄積
  ・14-15%→ATPなど代謝産物の構成要素として主に細胞内に。
  ・1%未満→細胞外液に存在。500mg程度。
     →細胞外から細胞内へのシフトにより容易に血清P↓
・血清P(「無機リン」という項目になっていることが多い)
  ・正常値2.5-4.5mg/dl
  ・1.0mg/dl未満を高度低P血症とする。
・生体内でのPの役割
  ・ATPの産生
     →ADP+P=ATP
  ・2,3-DGPの産生
    ・解糖系の側副路:Rapoport-Luebering Pathway
    ・2,3-DGP復習
      ・赤血球におけるATP産生エネルギー
      ・HbとO2の親和性調節
        ・2,3-DPG増加
          →Hb酸素解離曲線の右方移動
        ・2,3-DPG低下
          →Hb酸素解離曲線の左方移動
          →赤血球からの酸素放出低下
          →組織低酸素血症
・低リン血症の鑑別
  ・消化管からの吸収減少
  ・消化管・腎からの排泄増加
  ・細胞内への移動
・消化管からの吸収
  ・1日のP摂取量は800-2,000mg。
  ・タンパク質、乳製品、肉類に多く含まれる。
    →牛乳1Lに1,000mgのP含む。
  ・消化管吸収量=腎排泄量
  ・腸管からの吸収
    ・濃度勾配に従った吸収(受動輸送)
    ・Na/P共輸送体による能動的吸収
       ↑Vit.Dにより亢進する。
・腎での排泄と再吸収
  ・NTP2について
    ・再吸収促進→P↑
      ・低P食
      ・成長ホルモン
      ・甲状腺ホルモン
    ・再吸収阻害→P↓
      ・高P食
      ・PTH
      ・Vit.D
      ・Steroid
      ・利尿薬 
      ・細胞外液量増加
・細胞内への移動
  ・インスリン
    ・glucose+Pで細胞内取り込み。
    ・アルコール依存症、低栄養Pt.では低Pに注意。
  ・呼吸性アルカローシス
    ・phosphofructokinase 活性化→細胞内解糖促進
    →ブドウ糖リン酸化促進→細胞内P低下
    →細胞外からPの移動
  ・カテコラミン
    ・DOA, DOB, 吸入薬(procaterolなど)
  ・白血病、悪性リンパ腫、sepsis(主にGNR感染)
・臨床症状
  ・高度急性低P血症(P<1.5 mg/dl)
    →2,3DPG低下、細胞内ATPレベル低下
    →組織低酸素血症
  ・筋力低下が全面に出ることが多い。
   ・横隔膜運動低下→呼吸不全、weaning困難
   ・心収縮力低下→血圧低下、心室性不整脈、
  ・末梢・中枢神経症状
   ・脳症→convulsion, epilepsy, comaなども。


・開心術後の低Pに関する論文
  ・術後低P群(<1.5 mg/dl)はcontrol群と比較して、
    ・血液製剤の使用
    ・ICU入室時2種類以上の循環作動薬使用
    ・術後人工呼吸期間
    ・術後循環作動薬使用期間
    ・in-hospital stay
        が有意に長かった。
  ・心臓手術術後、Pはルーチンに計測し低Pはすぐに補正すべき。

・開心術後の低Pに関する症例報告
  ・P補正でカテコラミンウィーニングが進んだ。
・その他
  ・心臓血管手術後の低Pは術後2日目に多い。
    →否定的な報告も
    →refillを見ている?
  ・肝臓切除後の低P。
    ・肝増殖によるPの消費?
    ・むしろ腎からのP排泄(FEP増加)によるものが多い。
  ・頭部外傷後の低体温療法(32-33℃)
    →reversibleな低P血症をきたす。
  ・低Pは耐糖能異常、インスリン感受性の低下をもたらす。

空気塞栓症

ICU勉強会  担当:Y先生

「空気塞栓症」

・Air embolism発症に必要な2つの因子
 ・血管と空気の接触箇所
 ・空気源から血管内へのpressure gradient
・Air embolismが起こりうる主なsetting
 ・Surgery and Trauma
 ・血管内留置カテーテル
 ・barotrauma
・手術因子
 ・脳神経外科手術、頭頸部外科手術
   →CVP陰圧でair引き込み
 ・YAGレーザー使用気管支手術
   →coolant gas引き込み
 ・その他いろいろ。
   →肺生検、肺切除、腹腔鏡手術、
    帝王切開、CPB、静脈手術、・・・
・外傷
 ・Arterial air embolismも起こりうる。
   →頭頸部外傷、穿通性胸部外傷、鈍的腹部外傷など
 ・穿通性胸部外傷で左心系airを認めたcasesでは死亡率66%と。
・カテーテル挿入時の空気塞栓リスク
 ・connection部分の外れ、破損
 ・挿入、抜去の際に回路ロックを忘れる。
 ・カテーテル抜去後に刺入孔が閉じてない。→抜去後も注意。
 ・挿入、抜去時の深呼吸(吸い込み)
 ・head up position。
・Barotrauma
  →陽圧換気がリスクとなりうる。
   ・成人ARDS
   ・hyaline menbrane diseaseの新生児
  ・ダイバー
   ・100,000 diveに7例のリスク。
   ・PVに溶解していたgasがいきなり左心系に出現することも。
・合併症
 ・Large bubbles
  →pulmonary outflow tract閉塞(”air lock”)。
  →CVP上昇、PAP低下、ABP低下。
 ・Smaller bubbles
    →肺の細動脈閉塞→肺血管収縮→PAP上昇→RVP上昇
  ・頻脈により一過性にCOは上昇、その後低下。ABPも低下。
 ・肺の微小循環系airは血管内皮細胞障害を引き起こす。
    →肺水腫、気管支攣縮、VQ-mismatch、
     死腔増加、気道抵抗増加など
・臨床症状
 ・minor caseでは無症状
 ・severe caseでは血行動態破綻、臓器不全も。
  ・呼吸苦はほぼ必発(呼吸促迫、傍胸骨の疼痛、浮遊感を伴う)。
  ・息切れ、咳嗽
  ・頻呼吸、頻脈、低血圧、wheezing、crackles、呼吸不全、・・・
  ・精神状態の変化、巣症状、網状皮斑なども。
  ・arterial air embolismでは塞栓による臓器障害。
・鑑別診断
  ・呼吸不全、循環不全、中枢神経疾患の鑑別を。
・治療
 ・Venous air embolism
   →すぐに左側臥位に
    ・left lateral decubitus position
    ・Trendelenburg position
    ・Left lateral decubitus head down position
 ・Arterial air embolism
   →すぐに仰臥位に。
    ・動脈系は高圧系
       やjりう氏どんなpositionでもairは飛んで行く。
    ・頭蓋内圧を揚げるhead down positionは避けるべき。
 ・目標はRVOTから細動脈へairを追い出すこと。
 ・右心系airの場合は体位変換が効果的。
    →airの場所が変わりRVOTから外れる。
 ・それでも血行動態破綻が続くのであれば・・・
    →側臥位で胸骨圧迫開始。
     ・空気塞栓のcaseでは動物実験で有効性が示されている。
 ・CVカテーテルから脱気する。
    ・20ml程度しか引けない。
    ・CVカテ入ってる場合にのみ試す価値あり。
 ・高濃度酸素吸引
    ・血中酸素分圧増加→血中窒素分圧低下→airの血中吸収促進
 ・高圧酸素療法(HBO)
    ・循環動態が安定しているなら有益かもしれない。
    ・早期開始(6h以内)で予後改善の報告。
・予後
 ・Severe caseでは死亡率30%との報告。
 ・HBOを施行した119例の報告(venous and arterial)。
  ・ICU死亡12%、病院死亡16%、半年死亡18%、1年死亡21%
  ・ICU死亡のリスク因子
     →発症時心停止、ICU入室時SAPSⅡscore>33
  ・1年死亡のリスク因子
     →高齢、Babinski反射陽性、AKI
  ・生存者のうち43%がICU退室時神経学的後遺症あり
     →視野障害、植物状態、運動麻痺、認知障害、てんかん
     →しかし75%は退院時症状軽快。


Journal超ななめ読み10月

「Journal超ななめ読み10月」


Cardioprotective and prognostic effects of remote ischaemic preconditioning in patients undergoing coronary artery bypass surgery: a single-centre randomised, double-blind, controlled trial.
CABG患者において遠隔リモデリングが心保護および予後に与える影響
Lancet. 2013 Aug 17;382(9892):597-604. doi: 10.1016/S0140-6736(13)61450-6.

Dabigatran versus warfarin in patients with mechanical heart valves.
機械弁に対するダビガトランVSワーファリン
N Engl J Med. 2013 Sep 26;369(13):1206-14.

Randomized comparison of the Pentax AirWay Scope and Macintosh laryngoscope for tracheal intubation in patients with obstructive sleep apnoea.
閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の気管挿管に対するエアウェイスコープとマッキントッシュ型喉頭鏡の無作為比較
Br J Anaesth. 2013 Oct;111(4):662-6.

In-hospital and 1-year mortality in patients undergoing early surgery for prosthetic valve endocarditis.
人工弁感染に対する早期手術施行された患者の院内死亡率と1年生存率
JAMA Intern Med. 2013 Sep 9;173(16):1495-504.




・遠隔プレコンディショニングによりCABGの予後が改善する可能性。
・機械弁の術後抗凝固療法、WFと比較してダビガトランは血栓も出血も増やす。
・OSAS患者の挿管は喉頭鏡よりAWSが優れる。
・バイアス調整すると人工弁感染、早期手術は内科的治療と比較して生存率を改善せず。