麻酔科勉強会 担当:T先生
「周術期DVTとPE」
・JSA-PTE調査
→2002年から毎年1回、周術期PEについて
・2009-11、周術期PE発生率 25人/10万人
・周術期PE死亡率は約14%
・手術部位は開胸+開腹が多い。続いて股関節・四肢。
・年齢は高齢者が多い。
・病態について
・ウィルヒョウの三徴
→血流うっ滞、凝固能亢進、血管壁損傷
・DVTの3型
→腸骨型、大腿型、下腿型
・ヒラメ筋静脈血栓
・致死的PE剖検例の9割でヒラメ筋静脈に血栓あり
→血栓の性状が最も古かった
・孤立型ヒラメ筋静脈血栓が致死的PEをきたすのはきわめてまれ
・ヒラメ筋静脈の2割で中枢への進展あり
・ヒラメ筋静脈の特徴
・弁が小さく、少ない
・吻合部が狭窄している
→ヒラメ筋(抗重力筋)ポンプ作用が失われると、
一気に血流がうっ滞する (Ex.ベッドレスト)
・血栓が中枢側に進展した部位は血管壁への接着が弱い。
→血栓がちぎれやすい(フリーフロート血栓)
・ヒラメ筋静脈は下腿型DVTの発生源
・問診、症状、所見で異常なしかつd-dimer正常値
→急性期VTEは否定できる。
・いずれかが以上を示した場合は画像診断などが必要。
・d-dimerは様々な要因で高値となりうる。
・術中PE
・体位変換時や大腿部・骨盤手術操作時に多い
・血圧低下や頻脈
・EtCO2低下: 術中PEの8割
・SpO2低下: 術中PEの55%
・心エコー所見はmassiveなもので見られる
・右心系の拡張
・心室中隔扁平化
・TR
・肺動脈や右室内に血栓が見られることも
・DVTの治療
→抗凝固療法
・ヘパリン: APTT1.5-2.5倍延長 (Class I)
・ワーファリン: PT-INR 1.5-2.5、可逆的リスクで3ヵ月間 (IIb)
・低分子ヘパリンやXa阻害薬: 保険適応限られる
・孤立下腿型では症状軽度なら進展するまでは抗凝固不要
→2週間程度は画像フォロー (ACCP guideline)
・完全に血栓溶解するのは4%程度
→カテーテル治療 (IIb) と外科的血栓摘除 (IIb)
・元来健康で症状(腫脹や疼痛)強い症例
・カテーテル:ウロキナーゼによる血栓溶解や血栓吸引
・施設の実情により選択
→全身的血栓溶解療法
・本邦で適応が認められているウロキナーゼ用量は
欧米の数分の1
→カテーテル治療を選択すべき
→IVC フィルター
・抗凝固療法が行えない症例 (Class I)
・抗凝固療法にもかかわらず再発した症例 (I)
・骨盤内やIVCの血栓、近位部の大きな遊離血栓 (IIa)
・心肺予備能が低い症例 (IIa)
・急性PEを来したDVTの残存
・予防→リスク別に対策。
・低リスク:一般外科、泌尿器科、婦人科
→60歳未満の非大手術
→40歳未満の大手術
:整形外科、上肢手術
:産科、正常分娩
→早期離床と積極的な運動
・中リスク:一般外科、泌尿器科、婦人科
→60歳以上orDVTリスクある非大手術
→40歳以上orDVT危険因子ある大手術
:整形外科、脊椎手術、大腿骨遠位部以下の下肢手術
:産科、帝王切開
→弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法
・高リスク:一般外科、泌尿器科、婦人科
→40歳以上の癌の手術
:整形外科、股関節、骨盤、膝関節手術
下肢性腫瘍手術、DVTリスクある下肢手術
:産科、高度肥満の帝王切開、DVTリスクある経膣分娩
→間欠的空気圧迫法or抗凝固療法
・最高リスク:一般外科、泌尿器科、婦人科
→DVTリスクある大手術
:整形外科、DVTリスクある高リスク手術
:産科、DVTリスクある帝王切開
→抗凝固療法と間欠的空気圧迫法、弾性ストッキング併用
・弾性ストッキングの合併症
・皮膚炎や皮膚潰瘍
・腓骨神経麻痺
・コンパートメント症候群 (特に砕石位で多い)
・弾性ストッキングの禁忌
・動脈血行障害
・下肢の蜂窩織炎、血栓性静脈炎の急性期
・下肢の急性外傷、創傷
・末梢神経障害を伴う糖尿病
・重度のうっ血性心不全
・DVT急性期
・循環不全を伴うPE急性治療期
・間欠的空気圧迫法 (IPC)
・下腿大腿を30-60mmHg、30-60秒間隔で圧迫
・足底足関節を圧迫するvenous foot pumpもある
・下肢静脈叢を圧迫し静脈血流を促す
・凝固VIIa因子を低下させ、t-PAを上昇させる?
・合併症や禁忌は弾ストとほぼ同様
(ASOは大丈夫?)
・低用量未分画ヘパリン
・APTT延長しない程度
・HIT-IIに注意→週数回はCBCフォロー
・2500-5000単位×2-3回/日皮下注
・フォンダパリヌクス
・Xa阻害薬
・低分子量ヘパリンと予防効果同等
・まれにHIT-II生じる?
・2.5mg (腎障害あれば1.5mg)×1回/日皮下注
・術後は24時間空ける
・ワーファリン
・PT-INR 2.0-2.5 (高齢者1.5-2.0)
・その他経口抗凝固薬
・Xa阻害薬
・抗トロンビン薬
・ACCP guidelineから
・低分子量ヘパリンが治療の中心: 中リスク以上で使用
・ただし、出血リスク存在する間は抗凝固療法を行わない
・ヘパリンが使用できない場合、低用量アスピリン(120mg)で代用も
術後ICU申し送り風景