2015年6月8日月曜日

周術期疼痛管理について

初期研修医勉強会  担当:S先生

「周術期疼痛管理について」

・術後疼痛とは?
  →手術侵襲による組織障害とそれに伴う炎症反応のために
   術直後より数日間続く強い痛み
・体性痛
  ・浅い痛み
    →切開創の痛み
    ・安静時の鈍い痛み:C線維によって伝わる
    ・緊張時の鋭い痛み:Aδ線維によって伝わる
  ・深い痛み
    →筋肉痛など
・内臓痛
  ・術中に内臓器官が引っ張られたり、
   引き裂かれたりしたことに対する
   生体反応によって起こる痛み
  ・胃や腸の運動が反射性に抑制されたことにより生じる痛み
  ・Aδ、C線維を通る
・疼痛の修飾因子
  ・患者因子
    →性別(女性)、性格、痛みの経験の有無、不安・恐怖など
  ・麻酔管理
    →全身麻酔?伝達麻酔併用?先行鎮痛あり?
  ・手術部位、手術時間、侵襲の程度
    ・上腹部>下腹部
    ・深部臓器の手術>体表の手術
    ・長時間の手術>短時間の手術
  ・術前に存在する慢性痛
  ・分子レベルでの患者因子
    ・ブラジキニン受容体、プロスタノイド受容体、
     グルタミン酸受容体など。
・術後疼痛の影響(急性期)
  ・疼痛による交感神経緊張
    ・カテコラミン等の遊離促進→代謝亢進、酸素消費量↑
    ・心筋の酸素消費量↑→心筋虚血・梗塞の完成
    ・消化管運動の抑制→術後イレウス
  ・呼吸機能低下
    ・横隔膜機能低下→呼吸機能低下
    ・深呼吸や咳嗽の抑制→分泌物貯留、無気肺
  ・精神面
    ・恐怖、不信感など
・術後疼痛の影響(慢性期)
  ・長期に渡る慢性痛
    ・離床の遅れ、心身機能の低下、QOL低下
  ・中枢性感作
    ・創部からの持続的な末梢障害性入力
      →疼痛感度の異常な増大
・遷延性術後疼痛ハイリスク患者には・・・
  ・急性期疼痛管理の徹底
  ・ガバペンチン・プレガバリンなどの
   Caチャネルα2δリガンドの術前投与
  ・痛みの自己管理に関する教育
  ・リハビリテーションによる早期介入など
・痛みの評価
 →VAS、NRS、Face scale、Word scaleなど。
 ・PHPS(Prince Henry Pain scale)
   →術後安静時痛と体動時痛の総合評価
 ・Behavioral pain scale(BPS)
   →会話や意思疎通が不可能な患者に対して使用
・先制鎮痛
 ・侵害刺激の前に鎮痛を行う。
 ・中枢性感作を防ぐpreventive analgesiaという概念
・今後臨床応用が期待される薬物など
 ・TRPV1
   ・C線維に特異的に発現しているイオンチャネル
   ・唐辛子の主成分のカプサイシンや熱、
    水素イオンなどで活性化
   ・直接阻害するTRPV1抗体と、
    カプサイシンのように刺激して脱感作することで
    作用を阻害するTRPV1作動薬
 ・TNFα
   ・IL-1、IL-6とともに炎症細胞より分泌される
    炎症性サイトカイン
   ・エタネルセプト(TNFRとIgGの融合蛋白)、
    アダリムマブ・ゴリムマブ(抗TNF-α抗体)
   ・鼠径ヘルニア手術の術前にエタネルセプトを注射し
    術後痛を評価した臨床研究で鎮痛効果が認められたとの報告
 ・カンナビノイド