初期研修医勉強会 担当:S先生
「周術期疼痛管理について」
・術後疼痛とは?
→手術侵襲による組織障害とそれに伴う炎症反応のために
術直後より数日間続く強い痛み
・体性痛
・浅い痛み
→切開創の痛み
・安静時の鈍い痛み:C線維によって伝わる
・緊張時の鋭い痛み:Aδ線維によって伝わる
・深い痛み
→筋肉痛など
・内臓痛
・術中に内臓器官が引っ張られたり、
引き裂かれたりしたことに対する
生体反応によって起こる痛み
・胃や腸の運動が反射性に抑制されたことにより生じる痛み
・Aδ、C線維を通る
・疼痛の修飾因子
・患者因子
→性別(女性)、性格、痛みの経験の有無、不安・恐怖など
・麻酔管理
→全身麻酔?伝達麻酔併用?先行鎮痛あり?
・手術部位、手術時間、侵襲の程度
・上腹部>下腹部
・深部臓器の手術>体表の手術
・長時間の手術>短時間の手術
・術前に存在する慢性痛
・分子レベルでの患者因子
・ブラジキニン受容体、プロスタノイド受容体、
グルタミン酸受容体など。
・術後疼痛の影響(急性期)
・疼痛による交感神経緊張
・カテコラミン等の遊離促進→代謝亢進、酸素消費量↑
・心筋の酸素消費量↑→心筋虚血・梗塞の完成
・消化管運動の抑制→術後イレウス
・呼吸機能低下
・横隔膜機能低下→呼吸機能低下
・深呼吸や咳嗽の抑制→分泌物貯留、無気肺
・精神面
・恐怖、不信感など
・術後疼痛の影響(慢性期)
・長期に渡る慢性痛
・離床の遅れ、心身機能の低下、QOL低下
・中枢性感作
・創部からの持続的な末梢障害性入力
→疼痛感度の異常な増大
・遷延性術後疼痛ハイリスク患者には・・・
・急性期疼痛管理の徹底
・ガバペンチン・プレガバリンなどの
Caチャネルα2δリガンドの術前投与
・痛みの自己管理に関する教育
・リハビリテーションによる早期介入など
・痛みの評価
→VAS、NRS、Face scale、Word scaleなど。
・PHPS(Prince Henry Pain scale)
→術後安静時痛と体動時痛の総合評価
・Behavioral pain scale(BPS)
→会話や意思疎通が不可能な患者に対して使用
・先制鎮痛
・侵害刺激の前に鎮痛を行う。
・中枢性感作を防ぐpreventive analgesiaという概念
・今後臨床応用が期待される薬物など
・TRPV1
・C線維に特異的に発現しているイオンチャネル
・唐辛子の主成分のカプサイシンや熱、
水素イオンなどで活性化
・直接阻害するTRPV1抗体と、
カプサイシンのように刺激して脱感作することで
作用を阻害するTRPV1作動薬
・TNFα
・IL-1、IL-6とともに炎症細胞より分泌される
炎症性サイトカイン
・エタネルセプト(TNFRとIgGの融合蛋白)、
アダリムマブ・ゴリムマブ(抗TNF-α抗体)
・鼠径ヘルニア手術の術前にエタネルセプトを注射し
術後痛を評価した臨床研究で鎮痛効果が認められたとの報告
・カンナビノイド