2015年6月3日水曜日

線溶系と抗線溶薬

麻酔科勉強会  担当:S先生

「線溶系と抗線溶薬」

・抗線溶薬
  ・TXA(トラネキサム酸)
  ・EACA(イプシロンアミンのカプロン酸)
  ・アプロチニン
・TXAとEACA
  ・共にリジン誘導体
  ・TXAは血中で分解されるとEACAに
  ・プラスミノゲンのリジン結合部位と結合
    →プラスミノゲンのフィブリンへの吸着を阻止
    →抗線溶作用を発揮
・アプロチニン
  ・セリンプロテアーゼ阻害薬
  ・プラスミン、カリクレイン、トリプシン、
   キモトリプシンを効率よく阻害する。
  ・1987年、心臓外科手術の出血を減らすことが偶然発見された。
  ・現在は使用中止
・トラネキサム酸(TXA)
   ・全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
   ・局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
   ・湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹における
    紅斑・腫脹・掻痒
   ・咽喉頭炎・扁桃炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹
   ・口内炎における口内痛及び口内粘膜アフタ
   ・メラノサイト活性化因子「プラスミン」をブロック
            →メラニン発生の要因のひとつ
      →肝斑の原因となるメラニンの発生を抑制
      →肝斑を薄くする
   ・化粧品や歯磨き粉にも含有
・トラネキサム酸と外傷
  ・CRASH-2 trial
      ・40ヵ国274施設から重篤な出血あるいはそのリスクを有する
     20211例の外傷患者
    ・トラネキサム酸投与群と非投与群で比較
    ・初回負荷量1gのトラネキサム酸を10分間で投与後、
     更に1gを8時間かけて持続点滴
    ・主要評価項目は受傷後4週以内の院内死亡
    ・死亡原因を出血、血管閉塞(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓)、
     多臓器不全、頭部外傷、その他のカテゴリーで分けた。
   →死亡リスクを有害事象の増加なく安全に低下させた。
   →血管閉塞イベントによる死亡、イベントに有意差なし。 
   →輸血の必要性や輸血量に有意差なし
・トラネキサム酸と手術
  ・Systematic review and meta-analysis
      ・1972-2011の10488例の手術患者を含む129 trialsが対象。
     →輸血リスクはTXA投与群は38%低下
      (リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)
     →血栓性イベント(心筋梗塞、脳卒中、PE)
      Mortality TXA投与群は39%低下
    ・ただしadequate concealmentのtrialに限定すると有意差なし
・TXAと心臓外科手術
    ・Anesthe Analg.2012 Aug;115(2):239-43 
    ・231人のOPCAB予定の患者をTXA群とプラセボ群に割付
    ・主要転記は術後 24 時間のチェスト・チューブ排液量、
     また輸血、死亡率、重大な合併症、医療材料の使用量も評価
     →ドレーン排液量、輸血量はTXA群で減少
     →死亡率、合併症率、医療材料使用量は有意差なし。
・TXA使用時の注意点
  →痙攣
  ・2004-2009年の心臓手術を施行した患者8929人について、
   痙攣発作の危険因子を評価したstudy
     →8,929例中119例(1.3%)で早期痙攣発作が発現し、
     そのうち111例でTXAが投与。
  ・TXA総投与量100mg/kg以上は早期痙攣発作のリスク(OR 2.6)。


   SEP・MEPモニタリング併用の大血管手術