2015年6月5日金曜日

バソプレシン

「麻酔科勉強会」 担当:S先生

「バソプレシン」

・1954年 du Vigneaudによって発見
・1955年 ノーベル化学賞受賞
  →Vaso(血管)+pres(圧迫)
  →血管収縮により血圧上昇
・視床下部の神経分泌細胞で産生
  →軸索輸送で下垂体後葉
  →下垂体後葉より分泌
・分泌条件
  ・血漿浸透圧の上昇
     →肝臓・視床下部の浸透圧受容器で検出
     →バソプレシン増加
     →水排出低下
     →浸透圧低下へ。
  ・血圧低下
      →心臓、肺の圧受容器が検出
      →バソプレシン増加
      →尿中の水排出低下
      →血漿量増加
  ・心容積の減少
・半減期
 ・Vasopressinの血漿半減期は4-20分
 ・Vasopressinの誘導体Terlipressinの半減期は6時間
・循環作動薬としてのバソプレシン
  ・通常の状態ではバソプレシンの血行動態に及ぼす影響は少ない。
  ・しかしアシドーシス下では
     ・カテコラミン・・・効力が低下
     ・バソプレシン・・・影響を受けない
   →アシドーシスもしくはカテコラミン反応性が悪い時は
    バソプレシンの効力が期待できる
  ・ショックの遷延や心停止では・・・
    →細胞内に乳酸が蓄積
    →ATP 依存性のK チャネルが開口。
    →カテコラミンの刺激があってもCaが流入できなくなる。
    →血管拡張,血圧低下
  ・一方バソプレシンは・・・
    →直接的に血管平滑筋のATP 依存性のK チャネルを不活化,
    →一酸化窒素や心房性ナトリウム利尿ペプチドにより
     誘導されたcGMP の増加抑制、
     誘導型一酸化窒素合成酵素の合成抑制など
    →昇圧効果を発揮する.
・心停止に対するバソプレシンの適応
   ・3つのRCTと1つのメタアナリシス試験
     →バソプレッシン(40単位 IV)とエピネフリン(1mg )とを
      最初の血管収縮薬として心停止に用いた際の、
      結果(ROSC、生存退院率、神経学的結果)に差はない
   ・2つのRCT
     →エピネフリンとバソプレシンを合わせて使った時と
      エピネフリンのみを使った時を比べると、
      結果(ROSC、生存退院率、神経学的所見)に差はない
   ・1つのRCT
     →心停止にバソプレッシンを繰り返し使用しても、
      エピネフリンを繰り返し使った場合と比べて、
      生存率は改善しない
・心停止に対する用法
  ・2010 AHA Guideline for CPR and ECC
  ・バソプレシン静注/骨髄内投与:
    →初回または 2回目のアドレナリン投与の代わりに
     40単位を投与してもよい(ClassⅡb)
・Septic Shockに対する用法
  ・Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2013
    →平均動脈圧の上昇やノルアドレナリンの減量の目的で、
     ノルアドレナリンに加えてバソプレシン0.03単位/分を
     投与しても良い(UG)。
  ・敗血症による血圧低下のある患者に最初に選択する昇圧剤として
   低用量バソプレシンは推奨されない。
   0.03-0.04単位/分以上のバソプレシンは
  (他の昇圧剤で平均動脈圧が上昇しないなどの)
   サルベージ治療として温存すべきである(UG)
・アナフィラキシーショックに対する用法
  ・通常はエピネフリン筋注0.3mg
  ・向精神薬ではボスミンが禁忌(?)、
   βブロッカー内服者の場合、
   ノルエピネフリン、グルカゴンが推奨
  ・カテコラミン不応性アナフィラキシーの場合
    →バソプレシン10Uを繰り返し静注
    →0.04U/minの静脈投与(MGH麻酔の手引より)
・出血性ショックに対する用法
  ・出血性ショックの場合
   →輸液負荷のみと、輸液負荷+血管収縮薬を併用した場合
    後者のほうが治療成績がいいという報告がある。
  ・バソプレシン併用療法が出血性ショックに対して
   有効な正確なメカニズムは不明。
   →バソプレシンによる血管収縮がwouded siteから
    血液分布を移行させる?
   →また枯渇した内因性バソプレシンを補充する?
・肝腎症候群に対して
  ・治療法としては肝移植以外にTerlipressin。
  ・1mg/4-6hr ivもし治療に反応なければ2mg/4-6hrまで増量可。
   通常は5-15日間継続する。
・人間の情動や社会性にもバソプレシンが関連?