「麻酔科勉強会」 担当:S先生
「バソプレシン」
・1954年 du Vigneaudによって発見
・1955年 ノーベル化学賞受賞
→Vaso(血管)+pres(圧迫)
→血管収縮により血圧上昇
・視床下部の神経分泌細胞で産生
→軸索輸送で下垂体後葉
→下垂体後葉より分泌
・分泌条件
・血漿浸透圧の上昇
→肝臓・視床下部の浸透圧受容器で検出
→バソプレシン増加
→水排出低下
→浸透圧低下へ。
・血圧低下
→心臓、肺の圧受容器が検出
→バソプレシン増加
→尿中の水排出低下
→血漿量増加
・心容積の減少
・半減期
・Vasopressinの血漿半減期は4-20分
・Vasopressinの誘導体Terlipressinの半減期は6時間
・循環作動薬としてのバソプレシン
・通常の状態ではバソプレシンの血行動態に及ぼす影響は少ない。
・しかしアシドーシス下では
・カテコラミン・・・効力が低下
・バソプレシン・・・影響を受けない
→アシドーシスもしくはカテコラミン反応性が悪い時は
バソプレシンの効力が期待できる
・ショックの遷延や心停止では・・・
→細胞内に乳酸が蓄積
→ATP 依存性のK チャネルが開口。
→カテコラミンの刺激があってもCaが流入できなくなる。
→血管拡張,血圧低下
・一方バソプレシンは・・・
→直接的に血管平滑筋のATP 依存性のK チャネルを不活化,
→一酸化窒素や心房性ナトリウム利尿ペプチドにより
誘導されたcGMP の増加抑制、
誘導型一酸化窒素合成酵素の合成抑制など
→昇圧効果を発揮する.
・心停止に対するバソプレシンの適応
・3つのRCTと1つのメタアナリシス試験
→バソプレッシン(40単位 IV)とエピネフリン(1mg )とを
最初の血管収縮薬として心停止に用いた際の、
結果(ROSC、生存退院率、神経学的結果)に差はない
・2つのRCT
→エピネフリンとバソプレシンを合わせて使った時と
エピネフリンのみを使った時を比べると、
結果(ROSC、生存退院率、神経学的所見)に差はない
・1つのRCT
→心停止にバソプレッシンを繰り返し使用しても、
エピネフリンを繰り返し使った場合と比べて、
生存率は改善しない
・心停止に対する用法
・2010 AHA Guideline for CPR and ECC
・バソプレシン静注/骨髄内投与:
→初回または 2回目のアドレナリン投与の代わりに
40単位を投与してもよい(ClassⅡb)
・Septic Shockに対する用法
・Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2013
→平均動脈圧の上昇やノルアドレナリンの減量の目的で、
ノルアドレナリンに加えてバソプレシン0.03単位/分を
投与しても良い(UG)。
・敗血症による血圧低下のある患者に最初に選択する昇圧剤として
低用量バソプレシンは推奨されない。
0.03-0.04単位/分以上のバソプレシンは
(他の昇圧剤で平均動脈圧が上昇しないなどの)
サルベージ治療として温存すべきである(UG)
・アナフィラキシーショックに対する用法
・通常はエピネフリン筋注0.3mg
・向精神薬ではボスミンが禁忌(?)、
βブロッカー内服者の場合、
ノルエピネフリン、グルカゴンが推奨
・カテコラミン不応性アナフィラキシーの場合
→バソプレシン10Uを繰り返し静注
→0.04U/minの静脈投与(MGH麻酔の手引より)
・出血性ショックに対する用法
・出血性ショックの場合
→輸液負荷のみと、輸液負荷+血管収縮薬を併用した場合
後者のほうが治療成績がいいという報告がある。
・バソプレシン併用療法が出血性ショックに対して
有効な正確なメカニズムは不明。
→バソプレシンによる血管収縮がwouded siteから
血液分布を移行させる?
→また枯渇した内因性バソプレシンを補充する?
・肝腎症候群に対して
・治療法としては肝移植以外にTerlipressin。
・1mg/4-6hr ivもし治療に反応なければ2mg/4-6hrまで増量可。
通常は5-15日間継続する。
・人間の情動や社会性にもバソプレシンが関連?