ICU勉強会 担当:皮膚科ゲストDr
「入院患者に生じた皮疹の観方」
・所見の記載のための用語集
・斑
→皮膚の色調変化を主体とする限局性病変で、
原則として立体的変化を伴わない
・紅斑
→硝子圧で退色する淡紅色〜紅色斑。
真皮乳頭層の血管拡張、充血による。
・浸潤性紅斑
→炎症細胞浸潤により、浸潤を触れる
(少し盛り上がってざらざらする)紅斑
・硬結性紅斑
→真皮〜皮下の強い炎症により、強い硬結を触れる紅斑。
結節性紅斑、丹毒、蜂窩織炎などを考える。
・紫斑
→硝子圧で退色しない鮮紅色〜紫色斑。真皮内出血による。
・浸潤を触れる紫斑(palpable purpura)
→強い炎症のため隆起してざらざらする。
血管炎の可能性を考える。
・丘疹
→径5〜10mm以下の隆起
・結節
→径5〜10mm以上の隆起
・腫瘤
→結節よりさらに大きいもの(3cm以上?)
・膨疹
→皮膚の限局性の浮腫。
境界明瞭で扁平に隆起。蕁麻疹と同義。
・水疱
→水疱内容液は常色(皮膚色)〜橙色で漿液性のもの。
・血疱
→水疱内容液が血液を含んで紫紅色のもの
・膿疱
→水疱内容液が膿性で黄白色クリーム状のもの
・びらん
→表皮の欠損。
・表皮剥離
→外傷により表皮が欠損したもの。
・潰瘍
→表皮〜真皮、あるいは皮下組織におよぶ欠損。
・急性に全身に紅斑が拡大する場合
・既存の皮膚疾患の悪化
→慢性湿疹、接触皮膚炎、尋常性乾癬などの急性増悪
・膨疹
→蕁麻疹
・target lesion
→中央が暗赤色〜紅褐色に陥凹し、
辺縁が環状に隆起し、標的状、虹彩状を呈するもの
→多形紅斑(多形滲出性紅斑)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、
中毒性表皮壊死症(TEN)
・水疱、びらん
→多形紅斑、SJS、TEN、
SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
・上記の特徴がなく診断困難な場合「中毒疹」と称することが多い。
・ウイルス性発疹症
→入院中に発症する可能性は低いか?
→麻疹、風疹、伝染性単核球症(EBウイルス、CMVなどの初感染)、
伝染性紅斑(パルボB19ウイルス)など
・薬疹
→播種状紅斑丘疹型薬疹、多形紅斑、SJS、TEN、
DIHS(薬剤過敏症症候群)など
・TSS(Toxic Shock Syndrome)
→黄色ブドウ球菌の外毒素による。
・猩紅熱
→溶連菌の外毒素による。通常は小児に生じる。
・上記以外の何らかの感染症に対する免疫応答?
・EM,SJS,TEN,DIHSの原因
・多形紅斑
→感染(特にHSV)、薬剤、悪性腫瘍、食物など、
何らかの抗原に対する免疫応答
・SJS
→薬剤のことが多い。
マイコプラズマなどの
・TEN
→薬剤によるものが大半。
→感染症によると推定される症例もあり。
・DIHS
→限られた薬剤+HHV6などの再活性化
・薬疹発症のタイミング
・即時型アレルギー(蕁麻疹、アナフィラキシー)
・内服開始1時間以内の発症でなければ薬疹をほぼ否定。
・現在内服中に感作が成立して抗体(抗原特異的IgE)
→内服継続中はすぐに抗原と結合して消費されてしまい、
症状誘発に必要な抗体量に到達しないため発症しない。
・遅発型アレルギー(播種状紅斑丘疹型薬疹、多形紅斑、SJS/TENなど)
・内服開始2〜3日後(day 3〜4)の発症であれば薬疹を否定。
・内服開始3〜4週以降の発症であれば薬疹の可能性はやや低くなる。
・過去の内服により感作成立
→再度内服直後-1時間以内に発症
・現在内服中に感作成立(5日〜2週間かかる。抗原特異的T細胞産生、活性化)
→内服開始5日〜2週間後(DIHSは2週〜6週後)に発症
・DIHS(薬剤過敏症症候群)の場合は内服2-6週後の発症が多い。
・DIHSを生じる薬剤は限られている。
・カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミド、
アロプリノール、サラゾスルファピリジン、ジアフェニルスルホン、
メキシチール、ミノサイクリンなど