2014年7月4日金曜日

血糖コントロールまとめ

麻酔科勉強会  担当:H先生

「血糖コントロールまとめ」

・2013年のInternational Diabetes Federation(IDF)の発表
  →世界で3億8,200百万人が糖尿病(有病率8.3%)
   ・日本は720万人が罹患
   ・ちなみに1位は中国の9,840万人 
   ・糖尿病の人口の80%は低−中所得層の国の人々。
   ・40−59歳の年齢層で多い。
・糖尿病とは
  ・インスリンの作用不足による慢性高血糖が主徴
   →種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群。
  ・発症には遺伝因子と環境因子が共に関与する。
  ・代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすい。
  ・無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す。
・ストレス性高血糖
  ・外傷、手術侵襲、sepsisなど
    →神経系、内分泌系、免疫系ストレス反応
    →異化の亢進
     ・タンパク分解促進
     ・グリコーゲン分解
     ・脂肪分解
     ・インスリン抵抗性の増大
    →ストレス性高血糖
・後期糖化反応生成物(AGEs)
  ・高血糖状態が持続することで産生が促進され、蓄積される。
  ・産生過程や構造は分からないことが多い。
  ・細胞表面に発現しているRAGE(receptor for AGEs)が
   急性炎症に関係している。
  ・RAGEノックアウトマウスでは敗血症モデルや
   エンドトキシンショックモデルで生存率の改善が報告されている。
・高血糖の弊害
  ・浸透圧利尿
     →脱水
  ・創傷部位の血流障害
  ・線維芽細胞の活動障害
  ・Vit.C吸収障害でコラーゲンの合成が阻害
     →創傷治癒の遅延
  ・好中球の遊走能・貪食能・殺菌能の低下
     →液性免疫の低下
  ・血管障害
・DIGAMI study
  ・AMI後にインスリンを使用して死亡率が変わるかを検討した
  ・620人の糖尿病合併のAMI患者が対象
  ・primary endpointは死亡率
   →インスリン使用で有意に死亡率が低下
   →急性期の血糖管理の重要性が広まった。
・Leuven study
 ・ICU入室の人工呼吸管理患者(外科系メイン)が対象
  ・強化インスリン療法群は死亡率が3.4%低かった。
・Leuven ll study
  ・今回は内科系メイン
 ・強化インスリン療法群は死亡率が2.8%低かった(有意差なし)。
・Leuven studyの問題点
  ・単一施設での研究
  ・Leuven I の対象患者の6割が開心術後
  ・Leuven IIでは有意差はなかった
  ・低血糖の発生率が高いなど
・強化インスリン療法の是非について
  ・NICE-SUGAR study
     ・BS値81-108mg/dlでコントロールする群(IIT)
        vs 180mg/dlを保つ群(従来)で90日間の死亡率を調査
     ・ICU42施設 6022人 最も大規模なstudy
     ・死亡率 IIT27.5% 従来24.9% (P=0.02)
        →有意にIIT群が死亡率が高い結果となった。
  ・小児を対象としたstudyでも
     (N Engl J Med. 2014 Apr 10;370(15):1469.)
    →Tight glicemic control群は低血糖発生率が高い。
・日本版敗血症診療ガイドラインでは・・・
  →目標血糖値は144-180mg/dl
  →強化インスリン療法は行わない。
     →NICE-SUGAR trialに由来