麻酔科勉強会 担当:H先生
「血糖コントロールまとめ」
・2013年のInternational Diabetes Federation(IDF)の発表
→世界で3億8,200百万人が糖尿病(有病率8.3%)
・日本は720万人が罹患
・ちなみに1位は中国の9,840万人
・糖尿病の人口の80%は低−中所得層の国の人々。
・40−59歳の年齢層で多い。
・糖尿病とは
・インスリンの作用不足による慢性高血糖が主徴
→種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群。
・発症には遺伝因子と環境因子が共に関与する。
・代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすい。
・無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す。
・ストレス性高血糖
・外傷、手術侵襲、sepsisなど
→神経系、内分泌系、免疫系ストレス反応
→異化の亢進
・タンパク分解促進
・グリコーゲン分解
・脂肪分解
・インスリン抵抗性の増大
→ストレス性高血糖
・後期糖化反応生成物(AGEs)
・高血糖状態が持続することで産生が促進され、蓄積される。
・産生過程や構造は分からないことが多い。
・細胞表面に発現しているRAGE(receptor for AGEs)が
急性炎症に関係している。
・RAGEノックアウトマウスでは敗血症モデルや
エンドトキシンショックモデルで生存率の改善が報告されている。
・高血糖の弊害
・浸透圧利尿
→脱水
・創傷部位の血流障害
・線維芽細胞の活動障害
・Vit.C吸収障害でコラーゲンの合成が阻害
→創傷治癒の遅延
・好中球の遊走能・貪食能・殺菌能の低下
→液性免疫の低下
・血管障害
・DIGAMI study
・AMI後にインスリンを使用して死亡率が変わるかを検討した
・620人の糖尿病合併のAMI患者が対象
・primary endpointは死亡率
→インスリン使用で有意に死亡率が低下
→急性期の血糖管理の重要性が広まった。
・Leuven study
・ICU入室の人工呼吸管理患者(外科系メイン)が対象
・強化インスリン療法群は死亡率が3.4%低かった。
・Leuven ll study
・今回は内科系メイン
・強化インスリン療法群は死亡率が2.8%低かった(有意差なし)。
・Leuven studyの問題点
・単一施設での研究
・Leuven I の対象患者の6割が開心術後
・Leuven IIでは有意差はなかった
・低血糖の発生率が高いなど
・強化インスリン療法の是非について
・NICE-SUGAR study
・BS値81-108mg/dlでコントロールする群(IIT)
vs 180mg/dlを保つ群(従来)で90日間の死亡率を調査
・ICU42施設 6022人 最も大規模なstudy
・死亡率 IIT27.5% 従来24.9% (P=0.02)
→有意にIIT群が死亡率が高い結果となった。
・小児を対象としたstudyでも
(N Engl J Med. 2014 Apr 10;370(15):1469.)
→Tight glicemic control群は低血糖発生率が高い。
・日本版敗血症診療ガイドラインでは・・・
→目標血糖値は144-180mg/dl
→強化インスリン療法は行わない。
→NICE-SUGAR trialに由来