2014年7月4日金曜日

術中低血圧

初期研修医勉強会 担当:Y先生

「術中低血圧」

・ショックの分類
  ・Hypovolemic shock
    →脱水、出血、嘔吐、下痢、大量発汗など
  ・Cardiogenic shock
    →不整脈(徐脈、頻脈)、心不全、麻酔薬など
  ・Obstructive shock
    →肺塞栓症、緊張性気胸、心タンポナーデなど
  ・Distributive shock
    →神経原性ショック(麻酔薬)、アナフィラキシー
     敗血症性ショックなど
・術中の血圧低下の程度はどのくらい?
   ・全身麻酔を予定されている患者を対象としたstudy
      ・日中平均血圧、睡眠時血圧、術中血圧を測定、比較。
  →麻酔時は睡眠時よりも血圧が低下する。
・術中低血圧について
 ・術中低血圧についてのガイドライン、Reviewは存在しない
 ・高齢者を対象にしたstudy
    ・術中のMAPを45-55mmHgに管理した群
              vs 55-70mmHgに管理した群
        ・心血管イベントや死亡率に有意差はなかった
 ・ちなみに本では?
    ・術中血圧はMAP>80mmHgを目標に
       (羊土社:麻酔科研修チェックノート)
    ・脳の自動調節能は70-150mmHg、腎臓では80-180mmHg
      →これを目安に患者の状態に応じて適切な血圧管理が必要
       (日本医事新報社:麻酔への知的アプローチ)
・術中低血圧でoutcomeが変わるのか?
  ・前向きコホート研究
  ・2時間以上の手術が予想される成人腹部外科手術100例
  ・術中低血圧の定義
     ・MAP<60mmHg
     ・MAP<70mmHgかつbaselineより30%減少
  ・術中低血圧時間10分を閾値に入院日数や合併症が増加するか比較
     →術中低血圧は入院日数を伸ばす
・腎障害、心筋障害は増えるのか?
  ・非心臓手術を対象とした後ろ向きコホート研究
  ・n=33,330
  ・術中低血圧と術後AKI、心筋障害の関係を評価
     →MAP<55mmHgが維持すると・・・
     →AKI、心筋障害リスクが有意に上昇
・脳梗塞との関連は?
  ・大学病院での手術患者48,241人を対象
  ・後ろ向きコホート研究
  ・術後10日以内の脳梗塞発症についてオッズ比算出
     →MAPがbaselineより30%低下するとCIリスク上昇
     →絶対値よりも相対値が重要
・1年後死亡率は?
  ・大学病院での手術患者1,705人を対象
  ・術中低血圧の持続時間ごとに術後1年以内の全死亡率を比較
     →因果関係は明らかでなかった。
     →高齢患者では高い血圧閾値、短い低血圧持続時間推奨。