「麻酔科勉強会」 担当:H先生
「ハーブ療法と麻酔」
・症例提示
・硬膜外麻酔による無痛分娩
→分娩後にカテーテル抜去
→帰宅後に背部正中の疼痛および頭痛増悪
→MRIにて脊髄硬膜外血腫
・陣痛発来時にArnica Montanaを内服していた。
・Arnica Montana
・高度2,000mまでの牧草地に自生する
・黄色い綺麗な花を咲かせるキク科の多年草
・西洋ハーブとしてアルニカの頭花や根を利用
・消炎作用、解熱・鎮痛作用、創傷治癒作用
・成分にクマリン誘導体があり抗凝固作用あり
・術前評価
・70%以上の患者はハーブ使用について自発的に言及しない
→closed questionが必要
・5人に1人は調剤を把握していない
→持参してもらう必要がある
・使用するにあたっての誘因となった症状を聴取
・ハーブの実態
・術前患者の22-32%が使用
・米国人1990年:33.8%→1997年:42.1%
・40-60歳代 女性の使用が多い傾向がある
・薬理学的活性をもつ
・直接作用(固有の薬理学的効果)
・薬力学的相互作用
・薬物動態学的相互作用(吸収、代謝、排泄の変化)
・栄養補助食品である
→臨床前動物実験や治験を必要としない
・数種類併用しているケースが多い
→副作用の予測や原因究明が難しい
・栄養補助食品である
→臨床前動物実験や治験を必要としない
・表示が不正確
→薬効のばらつきがある
・ハーブいろいろ
・エキナセア
・ムラサキバレンギクの根
・免疫修飾作用をもつ
・上気道のウイルス、細菌、真菌感染症予防と治療に使用
・化学療法、放射線療法後の免疫賦活薬
・癌治療中の補助薬
・In vitroで免疫細胞活性化、サイトカイン産生亢進
・In vivoで人のNK細胞活性化
・免疫抑制薬の効果減弱の可能性
・移植患者へ投与さける
・8週間以上の長期服用で免疫抑制の可能性あり
・ニンニク
・抗血小板作用があるといわれる
・アリシンとその転換物質
→不可逆的、用量依存的に血小板凝集を抑制
→作用機序不明
・高血圧への有効性が示唆される
・糖尿病や家族性高コレステロール血症、乳がんなどに対しては
効果がないことが示唆されている
・胃腸障害などの悪影響も報告されている
・ワルファリンやアスピリンなどの作用を強める可能性がある
・38のRCTのメタ解析でLDLの低下、HDLの上昇がみられた
・術前は少なくとも1週間前には中止すべき
・イチョウ葉
・In vitroでは抗血小板作用があるとされる。
→抗凝固薬、抗血小板薬投与中の患者への使用は慎重に
・手術の際は少なくとも2週間前から使用を中止
・高麗人蔘
・降圧薬で治療中の高血圧患者64名
→高麗人参投与群30名、プラセボ34人を対象としたRCT
→血圧やbaPWVに有意な差は認められなかった
・メタ解析
→空腹時血糖値や、インスリン濃度に有意差なし
・セント・ジョーンズワート
・軽度~中程度の抑うつの患者375人でのRCT
→6週間の経過の中でWS群はプラセボ群に比して有意に改善
・更年期症状を有する女性100人を対象にプラセボ群と比較
→両者に優位な差はなかった。
・日光過敏、不眠、胃腸不快感、口渇、めまい、頭痛、
錯覚などの副作用
・麻酔終了時の覚醒遅延の恐れがあり、術前は中止。
・CYP3A4 CYP1A2が誘導される。
→ワーファリン、ジゴキシン、インジナビル(抗HIV薬)、
シクロスポリン、テオフィリン、経口避妊薬
→効果減弱の可能性がある
・術前評価
・ハーブは術前には中止
・薬物動態学的データがある場合は術前の中止時期を検討する
・データが無い場合は基本的に2週間前に中止
・ただしバレリアンのように急性離脱症状がある可能性がある