2014年9月5日金曜日

ハーブ療法と麻酔

「麻酔科勉強会」 担当:H先生

「ハーブ療法と麻酔」

・症例提示
  ・硬膜外麻酔による無痛分娩
    →分娩後にカテーテル抜去
    →帰宅後に背部正中の疼痛および頭痛増悪
    →MRIにて脊髄硬膜外血腫
  ・陣痛発来時にArnica Montanaを内服していた。
・Arnica Montana
 ・高度2,000mまでの牧草地に自生する
 ・黄色い綺麗な花を咲かせるキク科の多年草
 ・西洋ハーブとしてアルニカの頭花や根を利用
 ・消炎作用、解熱・鎮痛作用、創傷治癒作用
 ・成分にクマリン誘導体があり抗凝固作用あり

・術前評価
  ・70%以上の患者はハーブ使用について自発的に言及しない
     →closed questionが必要
  ・5人に1人は調剤を把握していない
     →持参してもらう必要がある
  ・使用するにあたっての誘因となった症状を聴取
・ハーブの実態
  ・術前患者の22-32%が使用
  ・米国人1990年:33.8%→1997年:42.1%
  ・40-60歳代 女性の使用が多い傾向がある
  ・薬理学的活性をもつ
    ・直接作用(固有の薬理学的効果)
    ・薬力学的相互作用
    ・薬物動態学的相互作用(吸収、代謝、排泄の変化)
  ・栄養補助食品である
    →臨床前動物実験や治験を必要としない
  ・数種類併用しているケースが多い
    →副作用の予測や原因究明が難しい
  ・栄養補助食品である
    →臨床前動物実験や治験を必要としない
  ・表示が不正確 
    →薬効のばらつきがある
・ハーブいろいろ
 ・エキナセア
   ・ムラサキバレンギクの根
   ・免疫修飾作用をもつ
   ・上気道のウイルス、細菌、真菌感染症予防と治療に使用
   ・化学療法、放射線療法後の免疫賦活薬
   ・癌治療中の補助薬
   ・In vitroで免疫細胞活性化、サイトカイン産生亢進
   ・In vivoで人のNK細胞活性化
   ・免疫抑制薬の効果減弱の可能性
   ・移植患者へ投与さける
   ・8週間以上の長期服用で免疫抑制の可能性あり
 ・ニンニク
   ・抗血小板作用があるといわれる
      ・アリシンとその転換物質
     →不可逆的、用量依存的に血小板凝集を抑制
     →作用機序不明
   ・高血圧への有効性が示唆される
   ・糖尿病や家族性高コレステロール血症、乳がんなどに対しては
    効果がないことが示唆されている
   ・胃腸障害などの悪影響も報告されている
   ・ワルファリンやアスピリンなどの作用を強める可能性がある
   ・38のRCTのメタ解析でLDLの低下、HDLの上昇がみられた
   ・術前は少なくとも1週間前には中止すべき
 ・イチョウ葉
   ・In vitroでは抗血小板作用があるとされる。
     →抗凝固薬、抗血小板薬投与中の患者への使用は慎重に
   ・手術の際は少なくとも2週間前から使用を中止
 ・高麗人蔘
   ・降圧薬で治療中の高血圧患者64名
     →高麗人参投与群30名、プラセボ34人を対象としたRCT
     →血圧やbaPWVに有意な差は認められなかった
   ・メタ解析
     →空腹時血糖値や、インスリン濃度に有意差なし
 ・セント・ジョーンズワート
   ・軽度~中程度の抑うつの患者375人でのRCT
     →6週間の経過の中でWS群はプラセボ群に比して有意に改善
   ・更年期症状を有する女性100人を対象にプラセボ群と比較
     →両者に優位な差はなかった。
   ・日光過敏、不眠、胃腸不快感、口渇、めまい、頭痛、
    錯覚などの副作用  
   ・麻酔終了時の覚醒遅延の恐れがあり、術前は中止。
   ・CYP3A4 CYP1A2が誘導される。
     →ワーファリン、ジゴキシン、インジナビル(抗HIV薬)、
      シクロスポリン、テオフィリン、経口避妊薬
         →効果減弱の可能性がある
・術前評価
 ・ハーブは術前には中止
 ・薬物動態学的データがある場合は術前の中止時期を検討する
 ・データが無い場合は基本的に2週間前に中止
 ・ただしバレリアンのように急性離脱症状がある可能性がある