2014年9月5日金曜日

化学療法と同種造血幹細胞移植の合併症

ICU勉強会  担当:免疫血液内科ゲストDr.

「化学療法と同種造幹細胞移植の合併症」

・抗癌剤
  →アントラサイクリン系、代謝拮抗剤、プリンアナログ、
   ピリミジンアナログ、ビンカアルカロイド、
   トポイソメラーゼ阻害剤など
・抗癌剤の作用するメカニズムその1
  ・細胞周期:M期→G1→S期→G2
  ・細胞分裂の盛んな細胞を傷害する。
    →粘膜障害、骨髄抑制、悪心、嘔吐、脱毛
・抗癌剤の作用するメカニズムその2
  ・モノクローナル抗体
    ・complement-mediated cytoxicity
    ・Antibody-dependent cell-mediated cytoxicity
        ・Activation of caspases and apotosis
  ・リツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)
  ・基本的にはB細胞特異的な作用。
  ・その他、infusion reactionなど。
・低分子医薬品
  ・ボルテゾミブ:26Sプロテアソーム阻害剤
    ・がん細胞特異的ではない
  ・NFκB阻害→骨髄腫細胞のアポトーシス
  ・骨髄微小環境を修飾
  ・血管新生の抑制
  ・有害事象:
    →体内の様々な細胞に作用
    →機序が不明な有害事象もある
    やjりう氏ボルテゾミブでは末梢神経障害が有名.
・抗癌剤の投与方法
  ・レジメン
    →抗がん剤,放射線治療の定義された投与計画
    ・使用薬剤、放射線、照射量,投与スケジュール
  ・CHOPの場合
    ・1サイクル21日間=白血球の回復に要する時間
    ・FNが起こりうるのは11-15日目くらい
    ・骨髄抑制以外の有害事象
       →1サイクルで完結するとは限らない。
    ・蓄積毒性でサイクル数が増えると重症化するものもある.
  ・別の薬剤を組み合わせた別々のサイクルを
   一定の順序で行うレジメンもある.
  ・途中で効果判定を行い,その結果によって
   レジメンが枝分かれすることもある.
  ・ただし造血幹細胞移植などは・・・
    ・ドナー検索の不確実性
    ・治療関連毒性のリスクの患者間差が大きい
      →前向き臨床研究が存在しない。
      →移植の判断は移植医の裁量に委ねられる。
・血液造血器腫瘍の分類
  ・AMlもリンパ腫もWHO分類が広く用いられている。
    →非常に細かい分類。
  ・ICU入室するような患者については・・・
    →合併症治療を考える上で細かい分類は重要ではない!
・合併症
 ・発熱性好中球減少症&その他感染症
  ・定義
    ・oral temperature 38℃以上(腋窩温 37.5℃以上)
    ・好中球 1,000/mcL未満
     かつ48時間以内に500/mcL未満になると予測されるとき
     or 好中球 500/mcL未満
  ・特徴
    ・発熱の原因が不明である時にも感染症として扱う.
    ・特定の感染源を示す所見に乏しい
      →感染症スクリーニングとして,血培2セットは必須.
      →Xpや尿検査は必要と判断される時.
    ・所見が無いことが多いが,呼吸器症状,全身の皮疹,
     CVカテ留置部,口内炎や副鼻腔所見の有無,
     呼吸器症状や消化器症状の有無,神経学的異常をチェック
・輸血について
 ・どのレベルで輸血を行うかは世界中の医師が苦渋している問題.
 ・日本国内では,「輸血療法の手引き(第3版)」
   →systematic-review + GRADE方式のEBM ガイドラインではない.
 ・“Patient-blood management”(RBC)の考え方
   ・患者の病態評価+マネージメント
   ・輸血の適応判断,血液喪失の最小化,
    患者の赤血球量の適正化(入れ過ぎも駄目)
 ・RBC輸血
   ・AABBガイドライン
     ・安定している患者に対して,Hb ≦ 7g/dLで輸血。
     ・術後の場合はHb≦8g/dL または症状がある時に輸血を考慮
     ・心疾患を有する入院患者に対して,Hb≦8g/dL
      または症状がある時に輸血を考慮する。
     ・急性冠症候群で入院した患者
        →推奨出来るHbレベルはない。
     ・ヘモグロビンレベルだけでなく症状も加味すべき
 ・CVカテ留置や骨髄生検にどの程度の血小板が必要かは定まっていない。
   →術者にもよるが,通常は2万〜5万/mcLは欲しい。
・造血幹細胞移植早期の合併症
 ・化学療法・放射線療法による障害
   ・粘膜炎(口内炎,腸炎,肛門周囲炎など)
   ・嘔気,嘔吐
   ・出血性膀胱炎
   ・Idiopathic pulmonary syndrome (IPS)
 ・移植後の血管内皮の障害に伴う障害
   ・VOD/SOS
   ・血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy)
   ・Diffuse alveolar hemorrhage
   ・Capillary leak syndrome
 ・その他
   ・薬剤性障害(FK506、CyAなど)
   ・感染症
   ・免疫反応(GVHD、graft failure、HPS)など
   ・腸管GVHD
      ・大量の水様下痢便(3日間平均500ml以上)
   ・Intestinal failure
     →タンパク質、カロリー、水分、電解質、微量元素の吸収不全
   ・治療の3大柱
     ・Slow intestinal transit
     ・Promote intestinal adaptation
     ・Reduce intestinal secretions
   ・支持療法
     ・腸管の通過時間を遅らせる
     ・腸管分泌の抑制
       ・飲むと分泌は増える→絶飲食!
       ・ORSは選択肢(低張液・糖分の多い飲み物は避ける)
       ・「ダイエット」飲料は避ける.
       ・PPI,オクトレオチド
       ・膵酵素が有効なことも
     ・腸管適応の促進
       ・経口摂取を進める
       ・食事:低脂肪,低線維,低乳糖,低酸,低刺激
       ・消化器症状を減らすように食事を選択する
       ・ENでは消化態、半消化態は避ける.
 ・晩期合併症
   ・白内障、角膜炎、結膜炎、骨壊死、甲状腺機能低下症・・・
   ・不妊や性腺機能障害も問題となる。
   ・二次癌を発症する可能性。
・造血器悪性腫瘍と集中治療
 ・ICUに入室する造血器悪性腫瘍
   ・非ホジキンリンパ腫>AML>MM>MDS=ALL>・・・
 ・ICU入室理由
   ・呼吸不全:62.5%
   ・ショック(敗血症):42.3%
   ・AKI:30.5%
   ・昏睡:22.3%
   ・化学療法のリスクが高い:7.1%
 ・ICU入室時の状況
   ・入院直後(入院からICUまで1〜16日)
   ・入院と同時
   ・好中球減少期
   ・血液内科医から2回以上のICU入室要請