2012年12月28日金曜日

鎮静薬いろいろ

初期研修医勉強会  担当:H先生

「鎮静薬いろいろ」

・鎮静は眠らせることではない。
・RASS Scale
  ・Richmond Agitation-Sedation Scale
  ・+4~-5までのScale
  ・浅い鎮静
    ・刺激によって覚醒し認知機能が回復する状態
    ・RASS -1, -2, -3
  ・深い鎮静
    ・刺激にて開眼しない、全身麻酔に準じた状態
    ・RASS -4, -5
・最も優れた鎮静薬とは
 ・退薬症状、幻覚、せん妄がない
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用が少ない
 ・気道確保が不要
 ・循環抑制作用が少ない
 ・鎮痛作用を併せ持つ
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性がない
 ・水溶性で投与が容易
 ・要薬液量が少量

・鎮静薬いろいろ

・ミダゾラム(ドルミカム)
 ・中枢神経のGABA受容体に作用する。
 ・作用発現は速やか(0.5-5min)で、作用時間は短い。
 ・0.03-0.06mg/kgのbolus投与。
 ・48-72時間の持続投与
   →蓄積した代謝産物により覚醒が遷延する可能性。
 ・薬価:138.00円 (10mg 2mL)
 ・依存性:幻覚、せん妄、痙攣などの離断症状
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用がある
 ・気道確保が必要
 ・循環抑制作用は少ない
 ・鎮痛作用がない
 ・効果の発現が速い
 ・急性耐性あり
 ・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量

・プロポフォール
 ・中枢神経のGABA受容体に作用する。
 ・静注すると1-2分で効果が発現し、10-15分持続する。
 ・0.5mg/kg/hより投与を開始
   →維持量は0.5-3mg/kg/hrで調節する。
 ・脂肪製剤なので細菌感染のリスクがある。
 ・Propofol infusion syndrome
 ・薬価:1344円(50mg 50mL)
 ・投与中止後のせん妄頻度は少ない
 ・深い鎮静が容易
 ・呼吸抑制作用を有する
 ・気道確保は必須
 ・循環:血管拡張作用による血圧低下
 ・鎮痛作用はない
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性あり
 ・脂溶性、血管痛あり
 ・1%製剤では大量投与が必要

・デキサメデトミジン(プレセデックス)
 ・選択的α2受容体作動薬。
 ・青斑核の中枢性α2A受容体を介してNA放出を抑制
   →上位中枢の覚醒レベルを抑える。
 ・適応:集中治療における人工呼吸及び離脱後の鎮静
 ・初期負荷投与 6μg/kg/hで10分間持続静注
 ・維持投与 0.2-0.7μg/kg/h
 ・薬価:5,077円 (200μg 2mL)
 ・脊髄α2A受容体刺激による鎮痛作用
 ・交感神経の抑制により心拍数減少、血管拡張作用
 ・血管収縮による血圧上昇
 ・認知障害なし。せん妄の頻度は少ない。
 ・深い鎮静は困難。
 ・呼吸抑制作用はない。
 ・気道確保が不要
 ・循環:心拍数低下、血管拡張による血圧低下
 ・鎮痛作用を併せ持つ
 ・効果の発現・消失が速い
 ・急性耐性はほとんどない
 ・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量

・デキサメデトミジンについて論文読みました。
 ・Can dexmedetomidine be a safe and efficacious
    sedative agent in post-cardiac surgery patients?
              YY Lin et al. Critical Care 2012;16:R169
  ・心臓外科手術後の鎮静におけるDEX使用の安全性を評価
 ・meta analysis
 ・DEX群は人工呼吸期間を有意に減少した。
 ・DEX群は徐脈を発現する割合が高かった
   →低血圧には差は認めなかった。
 →心臓外科術後の鎮静において、DEXは安全かつ有効である可能性。

・もうひとつ論文読みました。
 ・Dexmedetomidine vs Midazolam or Propofol
    for Sadation During Prolonged Mechanical Ventilation
          MJ Stephan et al. JAMA 2012;307:1151-60
 ・人工呼吸時の鎮静
 ・DexmedetomidineとMidazolam or Propofolを比較
 ・初の大規模第III相前向きランダム化試験
 ・MIDEX: 欧州9カ国44施設
 ・PRODEX: 欧州6カ国31施設とロシアの2施設
 ・Method、Outcome:省略
 ・結果
   ・長期人工呼吸管理の鎮静薬として
    DEXはMDZやPROに比べて非劣勢であった。
   人工呼吸期間やICU滞在期間において有意差はなかった。
   DEX使用にて抜管期間が短かった。
         →意思疎通疎通良好であることに起因するかもしれない。
   鎮静効果不十分の症例がDEXで多い。
     →投与量が少ない可能性。
 ・Adverse effect
   低血圧と徐脈の発現
     →MIDEXにおいてDEX群で有意に多かった。
      不穏、不安、せん妄の発現
     →PRODEXにおいてDEX群の頻度が低かった。
   投与中止後48時間の時点でのせん妄発症の割合
     →両群において有意差はなかった。

・レミマゾラム
 ・短時間作用型ベンゾジアゼピン系鎮静剤
 ・半減期が非常に短い
    →調節性に優れる
 ・拮抗薬が存在する
    →緊急時の対応が容易
 ・GABA-A受容体に高い親和性を有する
 ・組織エステラーゼにより速やかに代謝されて不活性化
     →BZOのアルチバ!
 ・ONO-2745
    ・本邦、全身麻酔を施行する手術患者を対象とした第II相試験
     →麻酔導入、麻酔維持において全85名に有効性あり。
   循環抑制作用が少なく、安全である可能性。
   現在は人工呼吸管理での鎮静において第II相試験が進行中。

・まとめ
 ・DEXは呼吸抑制をきたさず鎮静において優れた薬剤である。
 ・DEXはMDZやPROに比べて鎮静作用は非劣勢である。
  しかし、現用量では効果不十分になる可能性がある。
 ・他の鎮静薬に比べ徐脈の発現頻度が高いが比較的安全。
 ・レミマゾラムは新規の鎮静薬である。


2012年12月21日金曜日

Airway Management 2012

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「Airway Management 2012」

・JSAガイドラインは、Successful Ventilation
・ASAガイドライン
  →気道確保困難時(DAM)のアルゴリズム、
  →successful intubation に力点がおかれている。
 ・第1段階(グリーンゾーン):マスク換気
 ・第2段階(イエローゾーン):声門上器具(SGA)
 ・第3段階(レッドゾーン):輪状甲状間膜穿刺(CTM) 
 ・誤嚥のリスクも評価
・意識下挿管の適応
  ・重大な気道の病変あり。
  ・かつ操作中に完全閉塞のリスクの高い場合 
     →喉頭腫瘍、咽頭膿瘍、甲状腺腫瘍、縦隔腫瘍・・・
    ・重症例は 、気管切開・対外循環(PCPS)の準備をしておく。
  ・マスク換気困難が強く予想され、患者の協力が得られる場合  
  ・挿管困難の予測に次の点が重なる場合
  ・LMA挿入困難が予想される時
     →開口制限、頸椎可動制限、扁桃肥大、声門付近の病変 
  ・フルストマック (誤嚥のリスク) 
    ・短時間の無呼吸で低酸素血症になる患者
     →病的肥満、もともとの呼吸不全
・第一段階
  ・マスク換気可能
    →挿管トライ(予定の気道確保)2回まで。 
    →3回目以降は、別なデバイス、別な術者。
  ・換気不十分・不能
    →エアウエイ・二人法によるマスク換気
    →換気可能になれば、挿管トライ
  ・十分なマスク換気が得られない 
    →SpO2が下がる前に、応援を呼んで、第2段階に移る。
    →第1段階では、一度は挿管を試みてもよい。
    →以降は、覚醒・自発呼吸再開を考慮する。
・第二段階
  ・マスク換気の不十分・不可能が続くなら…
     →SpO2が低下する前に速やかにSGAによる換気に移行。
     →Air-Q、LMAは、麻酔カートに常備、扱い慣れておく。 
  ・SGAによる換気可能
     →SGAのまま手術する
      →SGAガイド下で気管挿管(状況により判断)
     →換気不十分ならば別なSGA挿入しなおす
  ・SGAによる換気不能 
      →CTM同定して、第3段階へ
・第三段階
  ・キットによるCTM(輪状甲状膜)穿刺
    ・救急カートには、CTM切開カテーテルキットを常備する。
    ・術前評価の時点で、輪状甲状膜の評価もしておく。   
    ・CTM穿刺の手技には麻酔科医は習熟しておく。
  ・CTMが同定できなければ、ためらわず頚部切開する。
    ・皮膚切開:縦に2-3cm 間膜切開:横に1.5cm
  ・静脈留置針、ジェットベンチレーションは、推奨されない。
  ・CTM穿刺が困難であれば、耳鼻科に気管切開の準備を依頼。

・マスク換気困難の研究
・Langeron,  Prediction of difficult mask ventilation:      
            Anesthesiology 2000; 92: 1229-236 
 ・マスク換気困難の定義
   ①  マスクからエアリークが多すぎる 
   ②  15L/分以上の流量が必要 
    ③  胸郭が全く上がらない
   ④  SpO2<92%    
   ⑤  二人法による換気が必要
   ⑥  術者の交代
 ・多変量解析でのマスク換気困難の独立因子
   ① ひげ
   ② 歯がない          
   ③ 肥満(BMI>26)       
   ④ いびきの既往          
   ⑤ 加齢(55歳以上)
・Kheterpal, Incidence and  Predictors of
     Difficult and Impossible Mask ventilation,
                    Anesthesiology 105: 885-91, 2006
・マスク換気困難の予測因子
  ・歯がない
  ・ひげ
  ・BMI≧25
  ・MpⅢ以上
  ・いびき
  ・OSAS
  ・太い首
  ・TMD<6cm     
  ・開口<6cm
  ・下顎前突制限
  ・頸椎症
  ・55歳以上
・Kheterpal,  Prediction and outcomes of
            impossible Mask ventilation,
             Anesthesiology 110: 891-7, 2009
 ・マスク換気不能のリスク因子(単変量解析)
   ① ひげ
   ② 頸部RAの既往
   ③ 睡眠時無呼吸
   ④  Mallampati Ⅲ以上
   ⑤ 男性

・当院でのデータのまとめ



2012年12月19日水曜日

周術期心筋虚血とβblocker

初期研修医勉強会  担当:Y先生

「周術期心筋虚血とβblocker」

・周術期心筋虚血
 ・発生頻度
   ・非心臓手術:major cardiac eventの発生率:3.9%
          周術期心筋梗塞:3.1%
・予後について
 ・非心臓手術の死亡:周術期心筋梗塞が原因の10~40%を占める
 ・発症後の院内死亡率は15~25%

・予防の考え方の違い
 ・非手術患者の心筋梗塞予防では…
    ・冠動脈内血栓の構成要素
      (血小板、フィブリン、トロンビン)への治療
      →アスピリン、ヘパリン
    ・HT,HL,DMの管理    
  ・周術期心筋梗塞発症予防では…
    ・手術、麻酔による交感神経活性制御
    ・酸素需要供給バランスの適正化
・周術期心筋梗塞予防には酸素需要バランスの評価が必要
  ・Rate pressure product(RPP) =BP×HR
     →心筋酸素需要と相関するが煩雑
  ・心拍数(HR)
    ・心拍数単独で虚血予防のパラメーターとして使用される
     →HR60~80
・周術期βblockerの歴史
  ・1990年代Manganoらの報告が最初
       Mangano et al.:effect of atenolol
       on mortality and cardiovascular morbidity
       after noncardiac surgery.NEJM335:1713-1720,1996 

  ・対象:200人の非心臓手術患者
  ・β blocker(アテノロール)静脈内投与群とプラセボ投与群
  ・outcome:長期予後
  ・結果:
    ・2年後の全死亡率:10% vs 21%
    ・心臓合併症発症率:17% vs 32%
   ・術前、術中、術後の心拍数コントロールの重要性を指摘
・その後反論多数。。。
  ・Lindenauerら
    ・βblocker投与群と患者の心血管リスクの相関を調査    
      Lindenauer et al:perioperative beta blocker therapy
       and mortality after major noncardiac surgery.
            NEJM 2005;53:349-61)
・2007 AHA/ACC周術期ガイドライン
 ・β blocker 使用推奨クラスⅠ:
 ・冠動脈疾患、心筋虚血が明らかな患者                                       
 ・既にβblocker使用していた患者
 ・高心血管リスクを有する中等度リスク手術や血管手術        
・この後POISE trialが発表される
・POISE trial
  ・POISE study et al;Lancet 2008;371:1839-47
 ・対象:8351人、心血管合併症のリスクファクターあり
 ・介入:メトプロロール100㎎とプラセボ
     手術の2-4時間前に開始、術後1か月間
 ・結果
   ・心筋梗塞発症率:4.2% vs 5.7%
   ・死亡率:3.1% vs 2.3%
   ・脳梗塞発症率:1.0% vs 0.5%
・2009 AHA/ACC周術期ガイドライン
 ・クラスⅠは手術前からの継続投与のみへ
  ・除外:術前に明らかな心筋虚血がある患者
         高心血管リスクを有する患者
 ・クラスⅡ以下
   →心拍数と血圧管理の目的でβblockerの容量調節すべき
・どのβblockerがよい?
 ・エスモロールの有効性
    →短時間作用型、β1選択性
 ・The Safety of Perioperative Esmolol:
  A Systematic Review and Meta-Analysis of
  Randomized Controlled Trials
  Anesthesia & Analgesia vol. 112 no. 2 267-281
 ・エスモロールは容量依存性に心拍数と血圧を減少させる
  ・予期しない低血圧の発生頻度を優位に増加させる
 ・持続静注であれば予期しない低血圧は減少
 ・目標とする血行動態に対してて滴定して用いると…
    →心筋虚血発症率を優位に減少させる

・βblocker投与の注意点
 ・ACC/AHAガイドライン2009に準じた投与患者の選定
 ・目標心拍数に到達するように容量調整が必要
 ・術前から投与されている人には継続を
 ・新規投与であれば急速大量投与にならないように注意
 ・どのβ blockerを使用するのかは未確定



2012年12月18日火曜日

成人麻酔での覚醒時興奮について

麻酔科勉強会  担当:H先生

「成人麻酔での覚醒時興奮について」

・覚醒時興奮はよくある。
  →傷害や疼痛増強、出血、自己抜管、カテ自己抜去リスク。
  →そのため身体的または薬剤による制御が必要となる。、
・成人における覚醒時興奮の病因や予後
  →ほとんど研究されていない。

・Emergence agitation in adults:
        risk factors in 2000 patients.
・Methods
  ・2007-2008年、1施設
  ・16-70歳
  ・ASA-PS 1-2
  ・診療科いろいろ。除外基準など。
・麻酔方法
 ・ミダゾラムとアトロピンの前投薬。
 ・導入は普通に。
 ・尿道カテーテルは全員に留置。
 ・維持は1-2%イソフルラン群
     vs 3-4μg/mLプロポフォールTCI群とに分けた。
 ・レミフェンタニル0.05-2γで鎮痛、
   ・フェンタニル1-2μg/kgをレミフェンタニル終了時に投与。
 ・術後鎮痛は各麻酔科医の裁量。
・評価
 ・抜管基準を定め、それに達していないものはPACUで抜管。
 ・痛みは10段階で評価(NRS)
   ・4以上なら痛みありとみなしてフェンタ10μg投与。
 ・Agitation:攻撃、のたうち回る、過活動
   ・mild:吸引など強い刺激により生じる
   ・moderate:刺激なしでも生じるが介入を必要としない
   ・severe:介入が必要
・結果
 ・2000人のうち426人(21.3%)がagitationあり
   ・mild:49.8%
   ・moderate:41.8%
   ・severe:8.4%

・severe agitationの発生率は1.8%だった
  →他の文献でも3%、2.4%である。
・痛みはagitationの強力なトリガー。
  →術後興奮を予防するため鎮痛は重要。
・男性の方が多い
  →男性の方が痛みに弱いことが原因であろう。
・口腔外科・頭頸部外科に多い
  →患者は覚醒時に「窒息」感を覚えるらしい。
・吸入麻酔群に多い
  →TIVAの方が薬が速く代謝・消失するから。
・覚醒時興奮の治療はまず原因の除去である。
  ・術後鎮痛をしっかり。
  ・挿管チューブ、尿道カテーテルはできるだけ早く抜く。
  ・それでもダメなら
    →プロポフォール、ミダゾラムなど短時間作用型薬剤投与。



    手術部にもクリスマスツリー。

2012 ASA annual meatingとUPMC見学記

麻酔科勉強会  担当:N先生

「2012 ASA annual meatingとUPMC見学記」

・2012年はWashington DCで開催
   ・ちなみに2013年はSan Francisco
・10/13-17の5日間
・プログラムは日本とそう変わらないが規模が大きい。
・Oral、Poster discussion、ePoster presentation
  →native並の英語力が必要。
・Poster presentation   
    ・scientific abstract
      ・medical challenging case
  →英語が苦手でもなんとかなるかも。
・企業展示
  ・日本の倍ぐらいの広さのブース
  ・見た事のない企業も多くあった
     →中国系企業が増えているらしい
  ・名札のバーコードを読み取られる。
     →後日連絡をとれるようなシステム
・面白かったデバイス
 ・RUSCHのEZ-BLOCKER
   ・気管支ブロッカーの一種
   ・ブラインドで抵抗があるところまで挿入
   ・ブロックしたい方のカフを膨らませる
 ・CLARUS新製品
   ・良い点
     ・LEVITANにモニターがついた新製品
     ・モニターの横にダイアルがある。
       →スタイレットの動きに合わせて角度を変えられる
   ・悪い点
     ・吸引ポートが無い
     ・高そう
 ・Truflex
   ・可動性のあるスタイレット
   ・GlidescopeやMc grathとの併用がオススメ
 ・ARROWの持続PNB用カテーテル
   ・固定がめんどくさそう。
・会場風景
 ・LMAの巨大模型
 ・ASA Bistro
・Washington DC
 ・きれいな街並み
 ・政府機関と博物館だらけ
 ・公園にはリスと浮浪者が多い


・ピッツバーグへ。
・University of Pittsburgh Medical Center(UPMC)
・UPMC presbyterian/montefiore
  ・主に成人の胸部・移植・脳・外傷・デイ手術
  ・手術室は41室 (presbyは29室)
  ・スタッフ55人、麻酔看護師111人
  ・2010年には麻酔件数35,757件
    ・521件の移植手術(そのうち126件が肺移植)を施行。
  ・肺移植においては全米トップの件数を誇る。
・手術見学(心臓・肺移植)
  ・Cardiac anesthesia部門
    ・フェローは年間4人
    ・研修期間は1年
    ・主にTEEを学ぶ → PTEexam取得を目標
  ・心臓血管麻酔・肺移植の麻酔を担当
・①redo MVR+TAPを見学してきました。
  ・導入前にA-line (上腕からシース)
  ・導入はプロポフォール・フェンタニル・エスラックス
  ・ネオシネジンにて血圧コントロールしながら挿管
    →なぜか挿管前にメパッチを貼布
  ・SGカテは麻酔器の上で開封(清潔?)
  ・シースはルーメン2つ付きの三叉シース使用
・TEEのお作法
  ・ルーチンワークは似たような感じ
  ・ZOOMを多用し、弁の性状などじっくり見ていた
  ・外科医にまとめて所見を述べていた
・Weaning
  ・Ao declamp前から、カテコラミン投与開始
  ・麻酔科側からMg・lidocaine・Ca投与
  ・プロタミン投与前にDDAVPを静脈内投与
  ・TEGで凝固系のチェック
  ・Redo症例にも関わらず30分くらいで帰室していた模様
  ・DDAVP使ってた。
・②肺移植見学してきました。
  ・Nitric Oxide使ってた。
    ・呼吸回路に組み込んで投与
    ・肺高血圧に対して使用
    ・使用後PA圧かなり下がってた。
  ・ECMOとpulmonoplegia
  ・再灌流
    ・気管→PA→PVと吻合
    ・Reperfusion前にソルメドロールを投与
    ・肺にはpulmonoplegiaを灌流しておく(CPB回路使用)
・ちなみに肺移植は
  ・single-lung transplant
  ・en bloc double-lung transplant
  ・sequential double-lung transplant
  ・heart-lung transplant
 の4種類がある。



     当院でも心臓外科手術ではTEG

2012年12月8日土曜日

膠質液いろいろ

麻酔科勉強会  担当:S先生

「膠質液いろいろ」

・輸液製剤
  ・晶質液:リンゲル液、生理食塩水
  ・膠質液:
    ・アルブミン製剤:
       ・4-5%:hypooncotic
       ・20-25%:hyperoncotic
    ・合成膠質液
       ・HES
       ・ゼラチン
       ・デキストラン
・HES:① HES (②/③) 』
  ・① : concentration (%)
  ・② : molecular weight (kDa)
  ・③ : degree of substitution
         (DS ; 2nd generation HES = 0.5)
  ・例:HespanderTM = 6% HES (70/0.5)
・Boldt scandal
  ・ドイツの麻酔科医Joachim Boldt。
    →colloidの世界的権威。
  ・102本中89の研究が倫理委員会の認可なしに行われた。
  ・少なくとも10本の論文はfalse dataであった。

・膠質液 vs 晶質液
  ・Perel P,et al. Cochrane Database Syst Rev 2012;6
  ・(Boldtを含む)66 RCTのメタ解析。
  ・outcome:mortality
    ・アルブミン vs 晶質液:Risk ratio 1.01
    ・HES vs 晶質液:Risk ratio 1.10

・アルブミン vs HES
  ・Bunn F, et al Cocherane Database Syst Rev 2012;7
  ・(Boldtを含む)86 RCT(n=5,484)のメタ解析。
  ・surgical ICU入院患者
  ・outcome:mortality
    ・Risk Radio 1.06

・hypooncotic vs hyperoncotic
  ・Schortgen F, et al. Intensive Care Med 2008;34:2157-68.
  ・MC-cohort study
  ・shockの患者(n=1,013)。
  ・outcome:①腎合併症、②ICU death。
    ・晶質液でのodds ratio 1.00
    ・人工高張膠質液:①1.16(0.52-2.57) ②1.76(1.00-3.11)
    ・高張アルブミン:①5.99(2.75-13.08)②2.79(1.42-5.47)

・アルブミン vs 晶質液
  ・Finfer S, et al. NEJM 2004;350:2247-56
  ・SAFE study。
  ・4%アルブミン vs 生食
  ・ICU入室患者(n=6,997)
    ・probability of survival:p=0.96
    ・Severe sepsis患者:Relative Risk 0.87(0.74-1.02)

・HES vs 晶質液
  ・Myburgh JA, et al. NEJM 2012;367:1901-11
  ・CHEST trial。
  ・ICU入室患者(n=6,742)
  ・6% HES(130/0.4) vs 生食
    ・90日死亡:p=0.26
    ・RRT使用:HES群で高い。

・心臓手術における膠質液
  ・Novickis RJ, et al. Thorac Cadiovasc Surg 2012;144:223-30
  ・(Boldtを含まない)18 RCT(n=970)のメタ解析。
  ・人工心肺を使用した心臓手術患者。
    ・水分バランス、ICU滞在期間、死亡率に有意差なし。

・頭部外傷におけるアルブミン
  ・Myburgh J, et al. NEJM 2007;357:874-84
  ・ICU入室の頭部外傷患者(n=460)
  ・4%アルブミン vs 生食
    ・probabillity of survival:生食群が有意に高い。
    ・GOSe(Extended Glasgow Outcome Scale)
      →生食群で有意に高い。

・sepsisにおけるアルブミン使用
  ・Delaney AP, et al. Crit Care Med 2011;39:386-91
  ・sepsis患者
  ・アルブミン vs その他の製剤
    ・死亡率:アルブミン群のほうが低い。

・sepsisにおけるHESその1
  ・Schortgen F, et al. Lancet 2001;357:911-6
  ・severe sepsisまたはseptic shockの患者(n=129)
  ・6% HES(200/0.6) vs 3% fluid-modified gelatin
    ・HES群でARFリスクが高い。

・sepsisにおけるHESその2
  ・Bayer O, et al. Crit Care Med 2011;39:1335-42
  ・surgical ICUのsevere sepsisまたはseptic shock患者(n=346)。
    ・HES群、ゼラチン群でRRT実施が多くなる。

・sepsisにおけるHESその3
  ・Guidet B, et al. Crit Care 2012;16:R94
  ・multi center RCT
  ・CRYSTMAS study。
  ・severe sepsis患者(n=196)
  ・6% HES(130/0.4) vs 生食
    ・輸液使用量は生食群が多い。

・sepsisにおけるHESその4
  ・Perner A, et al. NEJM 2012;367:124-34
  ・multi center RCT
  ・6S trial
  ・severe sepsisまたはseptic shock患者(n=798)
  ・6% HES(130/0.42)+必要なら晶質液 vs リンゲル。
    ・HES群でprobabillity of survivalは低い。
    ・ショック群ではリンゲルの方がいい。

・6% HESは本当に安全か。
  ・Suzuki T, et al. j Anesth 2010;24:418-25
  ・SC-retrospective cohort study
  ・5,000ml以上出血した手術患者。
  ・6% HES(70/0.55)(n=31)
  ・術後AKI vs 術後non-AKI
    ・差はなし。

・ATS consensus statement for colloid in ICU
  ・Am J Respir Crit Care Med 2004;170:1247-59
    ・頭部外傷には膠質液は控えるべき。
    ・全ての膠質液は凝固系に影響を与える。
    ・HESはsepsis患者ではAKIリスクを高める。
    ・透析関連の低血圧には膠質液が晶質液より優れる。
    ・高張アルブミンは腹水大量吸引後には投与するべき。
    ・血行動態的に安定期のARDSには輸液制限が適す。

・ESICM consensus statement for colloid in ICU
  ・Reinhart K, et al. Intensive Care Med 2012;38:368-83
    ・推奨(recommend)
      ・severe sepsis、AKIハイリスク
                 →HES(>200/>0.4)使わない。
      ・頭部外傷には膠質液を使わない。
      ・臓器移植ドナーにはHESを使わない。
    ・提案(suggest)
      ・severe sepsisにはアルブミンを使ってもいい。
      ・AKIハイリスクにはHES(130/0.4)を使わない。
      ・輸液蘇生に高張膠質液を使わない。