初期研修医勉強会 担当:H先生
「鎮静薬いろいろ」
・鎮静は眠らせることではない。
・RASS Scale
・Richmond Agitation-Sedation Scale
・+4~-5までのScale
・浅い鎮静
・刺激によって覚醒し認知機能が回復する状態
・RASS -1, -2, -3
・深い鎮静
・刺激にて開眼しない、全身麻酔に準じた状態
・RASS -4, -5
・最も優れた鎮静薬とは
・退薬症状、幻覚、せん妄がない
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用が少ない
・気道確保が不要
・循環抑制作用が少ない
・鎮痛作用を併せ持つ
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性がない
・水溶性で投与が容易
・要薬液量が少量
・鎮静薬いろいろ
・ミダゾラム(ドルミカム)
・中枢神経のGABA受容体に作用する。
・作用発現は速やか(0.5-5min)で、作用時間は短い。
・0.03-0.06mg/kgのbolus投与。
・48-72時間の持続投与
→蓄積した代謝産物により覚醒が遷延する可能性。
・薬価:138.00円 (10mg 2mL)
・依存性:幻覚、せん妄、痙攣などの離断症状
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用がある
・気道確保が必要
・循環抑制作用は少ない
・鎮痛作用がない
・効果の発現が速い
・急性耐性あり
・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量
・プロポフォール
・中枢神経のGABA受容体に作用する。
・静注すると1-2分で効果が発現し、10-15分持続する。
・0.5mg/kg/hより投与を開始
→維持量は0.5-3mg/kg/hrで調節する。
・脂肪製剤なので細菌感染のリスクがある。
・Propofol infusion syndrome
・薬価:1344円(50mg 50mL)
・投与中止後のせん妄頻度は少ない
・深い鎮静が容易
・呼吸抑制作用を有する
・気道確保は必須
・循環:血管拡張作用による血圧低下
・鎮痛作用はない
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性あり
・脂溶性、血管痛あり
・1%製剤では大量投与が必要
・デキサメデトミジン(プレセデックス)
・選択的α2受容体作動薬。
・青斑核の中枢性α2A受容体を介してNA放出を抑制
→上位中枢の覚醒レベルを抑える。
・適応:集中治療における人工呼吸及び離脱後の鎮静
・初期負荷投与 6μg/kg/hで10分間持続静注
・維持投与 0.2-0.7μg/kg/h
・薬価:5,077円 (200μg 2mL)
・脊髄α2A受容体刺激による鎮痛作用
・交感神経の抑制により心拍数減少、血管拡張作用
・血管収縮による血圧上昇
・認知障害なし。せん妄の頻度は少ない。
・深い鎮静は困難。
・呼吸抑制作用はない。
・気道確保が不要
・循環:心拍数低下、血管拡張による血圧低下
・鎮痛作用を併せ持つ
・効果の発現・消失が速い
・急性耐性はほとんどない
・水溶性で投与が容易、必要薬液量が少量
・デキサメデトミジンについて論文読みました。
・Can dexmedetomidine be a safe and efficacious
sedative agent in post-cardiac surgery patients?
YY Lin et al. Critical Care 2012;16:R169
・心臓外科手術後の鎮静におけるDEX使用の安全性を評価
・meta analysis
・DEX群は人工呼吸期間を有意に減少した。
・DEX群は徐脈を発現する割合が高かった
→低血圧には差は認めなかった。
→心臓外科術後の鎮静において、DEXは安全かつ有効である可能性。
・もうひとつ論文読みました。
・Dexmedetomidine vs Midazolam or Propofol
for Sadation During Prolonged Mechanical Ventilation
MJ Stephan et al. JAMA 2012;307:1151-60
・人工呼吸時の鎮静
・DexmedetomidineとMidazolam or Propofolを比較
・初の大規模第III相前向きランダム化試験
・MIDEX: 欧州9カ国44施設
・PRODEX: 欧州6カ国31施設とロシアの2施設
・Method、Outcome:省略
・結果
・長期人工呼吸管理の鎮静薬として
DEXはMDZやPROに比べて非劣勢であった。
人工呼吸期間やICU滞在期間において有意差はなかった。
DEX使用にて抜管期間が短かった。
→意思疎通疎通良好であることに起因するかもしれない。
鎮静効果不十分の症例がDEXで多い。
→投与量が少ない可能性。
・Adverse effect
低血圧と徐脈の発現
→MIDEXにおいてDEX群で有意に多かった。
不穏、不安、せん妄の発現
→PRODEXにおいてDEX群の頻度が低かった。
投与中止後48時間の時点でのせん妄発症の割合
→両群において有意差はなかった。
・レミマゾラム
・短時間作用型ベンゾジアゼピン系鎮静剤
・半減期が非常に短い
→調節性に優れる
・拮抗薬が存在する
→緊急時の対応が容易
・GABA-A受容体に高い親和性を有する
・組織エステラーゼにより速やかに代謝されて不活性化
→BZOのアルチバ!
・ONO-2745
・本邦、全身麻酔を施行する手術患者を対象とした第II相試験
→麻酔導入、麻酔維持において全85名に有効性あり。
循環抑制作用が少なく、安全である可能性。
現在は人工呼吸管理での鎮静において第II相試験が進行中。
・まとめ
・DEXは呼吸抑制をきたさず鎮静において優れた薬剤である。
・DEXはMDZやPROに比べて鎮静作用は非劣勢である。
しかし、現用量では効果不十分になる可能性がある。
・他の鎮静薬に比べ徐脈の発現頻度が高いが比較的安全。
・レミマゾラムは新規の鎮静薬である。
2012年12月21日金曜日
Airway Management 2012
麻酔科勉強会 担当:Y先生
「Airway Management 2012」
・JSAガイドラインは、Successful Ventilation
・ASAガイドライン
→気道確保困難時(DAM)のアルゴリズム、
→successful intubation に力点がおかれている。
・第1段階(グリーンゾーン):マスク換気
・第2段階(イエローゾーン):声門上器具(SGA)
・第3段階(レッドゾーン):輪状甲状間膜穿刺(CTM)
・誤嚥のリスクも評価
・意識下挿管の適応
・重大な気道の病変あり。
・かつ操作中に完全閉塞のリスクの高い場合
→喉頭腫瘍、咽頭膿瘍、甲状腺腫瘍、縦隔腫瘍・・・
・重症例は 、気管切開・対外循環(PCPS)の準備をしておく。
・マスク換気困難が強く予想され、患者の協力が得られる場合
・挿管困難の予測に次の点が重なる場合
・LMA挿入困難が予想される時
→開口制限、頸椎可動制限、扁桃肥大、声門付近の病変
・フルストマック (誤嚥のリスク)
・短時間の無呼吸で低酸素血症になる患者
→病的肥満、もともとの呼吸不全
・第一段階
・マスク換気可能
→挿管トライ(予定の気道確保)2回まで。
→3回目以降は、別なデバイス、別な術者。
・換気不十分・不能
→エアウエイ・二人法によるマスク換気
→換気可能になれば、挿管トライ
・十分なマスク換気が得られない
→SpO2が下がる前に、応援を呼んで、第2段階に移る。
→第1段階では、一度は挿管を試みてもよい。
→以降は、覚醒・自発呼吸再開を考慮する。
・第二段階
・マスク換気の不十分・不可能が続くなら…
→SpO2が低下する前に速やかにSGAによる換気に移行。
→Air-Q、LMAは、麻酔カートに常備、扱い慣れておく。
・SGAによる換気可能
→SGAのまま手術する
→SGAガイド下で気管挿管(状況により判断)
→換気不十分ならば別なSGA挿入しなおす
・SGAによる換気不能
→CTM同定して、第3段階へ
・第三段階
・キットによるCTM(輪状甲状膜)穿刺
・救急カートには、CTM切開カテーテルキットを常備する。
・術前評価の時点で、輪状甲状膜の評価もしておく。
・CTM穿刺の手技には麻酔科医は習熟しておく。
・CTMが同定できなければ、ためらわず頚部切開する。
・皮膚切開:縦に2-3cm 間膜切開:横に1.5cm
・静脈留置針、ジェットベンチレーションは、推奨されない。
・CTM穿刺が困難であれば、耳鼻科に気管切開の準備を依頼。
・マスク換気困難の研究
・Langeron, Prediction of difficult mask ventilation:
Anesthesiology 2000; 92: 1229-236
・マスク換気困難の定義
① マスクからエアリークが多すぎる
② 15L/分以上の流量が必要
③ 胸郭が全く上がらない
④ SpO2<92%
⑤ 二人法による換気が必要
⑥ 術者の交代
・多変量解析でのマスク換気困難の独立因子
① ひげ
② 歯がない
③ 肥満(BMI>26)
④ いびきの既往
⑤ 加齢(55歳以上)
・Kheterpal, Incidence and Predictors of
Difficult and Impossible Mask ventilation,
Anesthesiology 105: 885-91, 2006
・マスク換気困難の予測因子
・歯がない
・ひげ
・BMI≧25
・MpⅢ以上
・いびき
・OSAS
・太い首
・TMD<6cm
・開口<6cm
・下顎前突制限
・頸椎症
・55歳以上
・Kheterpal, Prediction and outcomes of
impossible Mask ventilation,
Anesthesiology 110: 891-7, 2009
・マスク換気不能のリスク因子(単変量解析)
① ひげ
② 頸部RAの既往
③ 睡眠時無呼吸
④ Mallampati Ⅲ以上
⑤ 男性
・当院でのデータのまとめ
「Airway Management 2012」
・JSAガイドラインは、Successful Ventilation
・ASAガイドライン
→気道確保困難時(DAM)のアルゴリズム、
→successful intubation に力点がおかれている。
・第1段階(グリーンゾーン):マスク換気
・第2段階(イエローゾーン):声門上器具(SGA)
・第3段階(レッドゾーン):輪状甲状間膜穿刺(CTM)
・誤嚥のリスクも評価
・意識下挿管の適応
・重大な気道の病変あり。
・かつ操作中に完全閉塞のリスクの高い場合
→喉頭腫瘍、咽頭膿瘍、甲状腺腫瘍、縦隔腫瘍・・・
・重症例は 、気管切開・対外循環(PCPS)の準備をしておく。
・マスク換気困難が強く予想され、患者の協力が得られる場合
・挿管困難の予測に次の点が重なる場合
・LMA挿入困難が予想される時
→開口制限、頸椎可動制限、扁桃肥大、声門付近の病変
・フルストマック (誤嚥のリスク)
・短時間の無呼吸で低酸素血症になる患者
→病的肥満、もともとの呼吸不全
・第一段階
・マスク換気可能
→挿管トライ(予定の気道確保)2回まで。
→3回目以降は、別なデバイス、別な術者。
・換気不十分・不能
→エアウエイ・二人法によるマスク換気
→換気可能になれば、挿管トライ
・十分なマスク換気が得られない
→SpO2が下がる前に、応援を呼んで、第2段階に移る。
→第1段階では、一度は挿管を試みてもよい。
→以降は、覚醒・自発呼吸再開を考慮する。
・第二段階
・マスク換気の不十分・不可能が続くなら…
→SpO2が低下する前に速やかにSGAによる換気に移行。
→Air-Q、LMAは、麻酔カートに常備、扱い慣れておく。
・SGAによる換気可能
→SGAのまま手術する
→SGAガイド下で気管挿管(状況により判断)
→換気不十分ならば別なSGA挿入しなおす
・SGAによる換気不能
→CTM同定して、第3段階へ
・第三段階
・キットによるCTM(輪状甲状膜)穿刺
・救急カートには、CTM切開カテーテルキットを常備する。
・術前評価の時点で、輪状甲状膜の評価もしておく。
・CTM穿刺の手技には麻酔科医は習熟しておく。
・CTMが同定できなければ、ためらわず頚部切開する。
・皮膚切開:縦に2-3cm 間膜切開:横に1.5cm
・静脈留置針、ジェットベンチレーションは、推奨されない。
・CTM穿刺が困難であれば、耳鼻科に気管切開の準備を依頼。
・マスク換気困難の研究
・Langeron, Prediction of difficult mask ventilation:
Anesthesiology 2000; 92: 1229-236
・マスク換気困難の定義
① マスクからエアリークが多すぎる
② 15L/分以上の流量が必要
③ 胸郭が全く上がらない
④ SpO2<92%
⑤ 二人法による換気が必要
⑥ 術者の交代
・多変量解析でのマスク換気困難の独立因子
① ひげ
② 歯がない
③ 肥満(BMI>26)
④ いびきの既往
⑤ 加齢(55歳以上)
・Kheterpal, Incidence and Predictors of
Difficult and Impossible Mask ventilation,
Anesthesiology 105: 885-91, 2006
・マスク換気困難の予測因子
・歯がない
・ひげ
・BMI≧25
・MpⅢ以上
・いびき
・OSAS
・太い首
・TMD<6cm
・開口<6cm
・下顎前突制限
・頸椎症
・55歳以上
・Kheterpal, Prediction and outcomes of
impossible Mask ventilation,
Anesthesiology 110: 891-7, 2009
・マスク換気不能のリスク因子(単変量解析)
① ひげ
② 頸部RAの既往
③ 睡眠時無呼吸
④ Mallampati Ⅲ以上
⑤ 男性
・当院でのデータのまとめ
2012年12月19日水曜日
周術期心筋虚血とβblocker
初期研修医勉強会 担当:Y先生
「周術期心筋虚血とβblocker」
・周術期心筋虚血
・発生頻度
・非心臓手術:major cardiac eventの発生率:3.9%
周術期心筋梗塞:3.1%
・予後について
・非心臓手術の死亡:周術期心筋梗塞が原因の10~40%を占める
・発症後の院内死亡率は15~25%
・予防の考え方の違い
・非手術患者の心筋梗塞予防では…
・冠動脈内血栓の構成要素
(血小板、フィブリン、トロンビン)への治療
→アスピリン、ヘパリン
・HT,HL,DMの管理
・周術期心筋梗塞発症予防では…
・手術、麻酔による交感神経活性制御
・酸素需要供給バランスの適正化
・周術期心筋梗塞予防には酸素需要バランスの評価が必要
・Rate pressure product(RPP) =BP×HR
→心筋酸素需要と相関するが煩雑
・心拍数(HR)
・心拍数単独で虚血予防のパラメーターとして使用される
→HR60~80
・周術期βblockerの歴史
・1990年代Manganoらの報告が最初
Mangano et al.:effect of atenolol
on mortality and cardiovascular morbidity
after noncardiac surgery.NEJM335:1713-1720,1996
・対象:200人の非心臓手術患者
・β blocker(アテノロール)静脈内投与群とプラセボ投与群
・outcome:長期予後
・結果:
・2年後の全死亡率:10% vs 21%
・心臓合併症発症率:17% vs 32%
・術前、術中、術後の心拍数コントロールの重要性を指摘
・その後反論多数。。。
・Lindenauerら
・βblocker投与群と患者の心血管リスクの相関を調査
Lindenauer et al:perioperative beta blocker therapy
and mortality after major noncardiac surgery.
NEJM 2005;53:349-61)
・2007 AHA/ACC周術期ガイドライン
・β blocker 使用推奨クラスⅠ:
・冠動脈疾患、心筋虚血が明らかな患者
・既にβblocker使用していた患者
・高心血管リスクを有する中等度リスク手術や血管手術
・この後POISE trialが発表される
・POISE trial
・POISE study et al;Lancet 2008;371:1839-47
・対象:8351人、心血管合併症のリスクファクターあり
・介入:メトプロロール100㎎とプラセボ
手術の2-4時間前に開始、術後1か月間
・結果
・心筋梗塞発症率:4.2% vs 5.7%
・死亡率:3.1% vs 2.3%
・脳梗塞発症率:1.0% vs 0.5%
・2009 AHA/ACC周術期ガイドライン
・クラスⅠは手術前からの継続投与のみへ
・除外:術前に明らかな心筋虚血がある患者
高心血管リスクを有する患者
・クラスⅡ以下
→心拍数と血圧管理の目的でβblockerの容量調節すべき
・どのβblockerがよい?
・エスモロールの有効性
→短時間作用型、β1選択性
・The Safety of Perioperative Esmolol:
A Systematic Review and Meta-Analysis of
Randomized Controlled Trials
Anesthesia & Analgesia vol. 112 no. 2 267-281
・エスモロールは容量依存性に心拍数と血圧を減少させる
・予期しない低血圧の発生頻度を優位に増加させる
・持続静注であれば予期しない低血圧は減少
・目標とする血行動態に対してて滴定して用いると…
→心筋虚血発症率を優位に減少させる
・βblocker投与の注意点
・ACC/AHAガイドライン2009に準じた投与患者の選定
・目標心拍数に到達するように容量調整が必要
・術前から投与されている人には継続を
・新規投与であれば急速大量投与にならないように注意
・どのβ blockerを使用するのかは未確定
「周術期心筋虚血とβblocker」
・周術期心筋虚血
・発生頻度
・非心臓手術:major cardiac eventの発生率:3.9%
周術期心筋梗塞:3.1%
・予後について
・非心臓手術の死亡:周術期心筋梗塞が原因の10~40%を占める
・発症後の院内死亡率は15~25%
・予防の考え方の違い
・非手術患者の心筋梗塞予防では…
・冠動脈内血栓の構成要素
(血小板、フィブリン、トロンビン)への治療
→アスピリン、ヘパリン
・HT,HL,DMの管理
・周術期心筋梗塞発症予防では…
・手術、麻酔による交感神経活性制御
・酸素需要供給バランスの適正化
・周術期心筋梗塞予防には酸素需要バランスの評価が必要
・Rate pressure product(RPP) =BP×HR
→心筋酸素需要と相関するが煩雑
・心拍数(HR)
・心拍数単独で虚血予防のパラメーターとして使用される
→HR60~80
・周術期βblockerの歴史
・1990年代Manganoらの報告が最初
Mangano et al.:effect of atenolol
on mortality and cardiovascular morbidity
after noncardiac surgery.NEJM335:1713-1720,1996
・対象:200人の非心臓手術患者
・β blocker(アテノロール)静脈内投与群とプラセボ投与群
・outcome:長期予後
・結果:
・2年後の全死亡率:10% vs 21%
・心臓合併症発症率:17% vs 32%
・術前、術中、術後の心拍数コントロールの重要性を指摘
・その後反論多数。。。
・Lindenauerら
・βblocker投与群と患者の心血管リスクの相関を調査
Lindenauer et al:perioperative beta blocker therapy
and mortality after major noncardiac surgery.
NEJM 2005;53:349-61)
・2007 AHA/ACC周術期ガイドライン
・β blocker 使用推奨クラスⅠ:
・冠動脈疾患、心筋虚血が明らかな患者
・既にβblocker使用していた患者
・高心血管リスクを有する中等度リスク手術や血管手術
・この後POISE trialが発表される
・POISE trial
・POISE study et al;Lancet 2008;371:1839-47
・対象:8351人、心血管合併症のリスクファクターあり
・介入:メトプロロール100㎎とプラセボ
手術の2-4時間前に開始、術後1か月間
・結果
・心筋梗塞発症率:4.2% vs 5.7%
・死亡率:3.1% vs 2.3%
・脳梗塞発症率:1.0% vs 0.5%
・2009 AHA/ACC周術期ガイドライン
・クラスⅠは手術前からの継続投与のみへ
・除外:術前に明らかな心筋虚血がある患者
高心血管リスクを有する患者
・クラスⅡ以下
→心拍数と血圧管理の目的でβblockerの容量調節すべき
・どのβblockerがよい?
・エスモロールの有効性
→短時間作用型、β1選択性
・The Safety of Perioperative Esmolol:
A Systematic Review and Meta-Analysis of
Randomized Controlled Trials
Anesthesia & Analgesia vol. 112 no. 2 267-281
・エスモロールは容量依存性に心拍数と血圧を減少させる
・予期しない低血圧の発生頻度を優位に増加させる
・持続静注であれば予期しない低血圧は減少
・目標とする血行動態に対してて滴定して用いると…
→心筋虚血発症率を優位に減少させる
・βblocker投与の注意点
・ACC/AHAガイドライン2009に準じた投与患者の選定
・目標心拍数に到達するように容量調整が必要
・術前から投与されている人には継続を
・新規投与であれば急速大量投与にならないように注意
・どのβ blockerを使用するのかは未確定
2012年12月18日火曜日
成人麻酔での覚醒時興奮について
麻酔科勉強会 担当:H先生
「成人麻酔での覚醒時興奮について」
・覚醒時興奮はよくある。
→傷害や疼痛増強、出血、自己抜管、カテ自己抜去リスク。
→そのため身体的または薬剤による制御が必要となる。、
・成人における覚醒時興奮の病因や予後
→ほとんど研究されていない。
・Emergence agitation in adults:
risk factors in 2000 patients.
・Methods
・2007-2008年、1施設
・16-70歳
・ASA-PS 1-2
・診療科いろいろ。除外基準など。
・麻酔方法
・ミダゾラムとアトロピンの前投薬。
・導入は普通に。
・尿道カテーテルは全員に留置。
・維持は1-2%イソフルラン群
vs 3-4μg/mLプロポフォールTCI群とに分けた。
・レミフェンタニル0.05-2γで鎮痛、
・フェンタニル1-2μg/kgをレミフェンタニル終了時に投与。
・術後鎮痛は各麻酔科医の裁量。
・評価
・抜管基準を定め、それに達していないものはPACUで抜管。
・痛みは10段階で評価(NRS)
・4以上なら痛みありとみなしてフェンタ10μg投与。
・Agitation:攻撃、のたうち回る、過活動
・mild:吸引など強い刺激により生じる
・moderate:刺激なしでも生じるが介入を必要としない
・severe:介入が必要
・結果
・2000人のうち426人(21.3%)がagitationあり
・mild:49.8%
・moderate:41.8%
・severe:8.4%
・severe agitationの発生率は1.8%だった
→他の文献でも3%、2.4%である。
・痛みはagitationの強力なトリガー。
→術後興奮を予防するため鎮痛は重要。
・男性の方が多い
→男性の方が痛みに弱いことが原因であろう。
・口腔外科・頭頸部外科に多い
→患者は覚醒時に「窒息」感を覚えるらしい。
・吸入麻酔群に多い
→TIVAの方が薬が速く代謝・消失するから。
・覚醒時興奮の治療はまず原因の除去である。
・術後鎮痛をしっかり。
・挿管チューブ、尿道カテーテルはできるだけ早く抜く。
・それでもダメなら
→プロポフォール、ミダゾラムなど短時間作用型薬剤投与。
手術部にもクリスマスツリー。
「成人麻酔での覚醒時興奮について」
・覚醒時興奮はよくある。
→傷害や疼痛増強、出血、自己抜管、カテ自己抜去リスク。
→そのため身体的または薬剤による制御が必要となる。、
・成人における覚醒時興奮の病因や予後
→ほとんど研究されていない。
・Emergence agitation in adults:
risk factors in 2000 patients.
・Methods
・2007-2008年、1施設
・16-70歳
・ASA-PS 1-2
・診療科いろいろ。除外基準など。
・麻酔方法
・ミダゾラムとアトロピンの前投薬。
・導入は普通に。
・尿道カテーテルは全員に留置。
・維持は1-2%イソフルラン群
vs 3-4μg/mLプロポフォールTCI群とに分けた。
・レミフェンタニル0.05-2γで鎮痛、
・フェンタニル1-2μg/kgをレミフェンタニル終了時に投与。
・術後鎮痛は各麻酔科医の裁量。
・評価
・抜管基準を定め、それに達していないものはPACUで抜管。
・痛みは10段階で評価(NRS)
・4以上なら痛みありとみなしてフェンタ10μg投与。
・Agitation:攻撃、のたうち回る、過活動
・mild:吸引など強い刺激により生じる
・moderate:刺激なしでも生じるが介入を必要としない
・severe:介入が必要
・結果
・2000人のうち426人(21.3%)がagitationあり
・mild:49.8%
・moderate:41.8%
・severe:8.4%
・severe agitationの発生率は1.8%だった
→他の文献でも3%、2.4%である。
・痛みはagitationの強力なトリガー。
→術後興奮を予防するため鎮痛は重要。
・男性の方が多い
→男性の方が痛みに弱いことが原因であろう。
・口腔外科・頭頸部外科に多い
→患者は覚醒時に「窒息」感を覚えるらしい。
・吸入麻酔群に多い
→TIVAの方が薬が速く代謝・消失するから。
・覚醒時興奮の治療はまず原因の除去である。
・術後鎮痛をしっかり。
・挿管チューブ、尿道カテーテルはできるだけ早く抜く。
・それでもダメなら
→プロポフォール、ミダゾラムなど短時間作用型薬剤投与。
手術部にもクリスマスツリー。
2012 ASA annual meatingとUPMC見学記
麻酔科勉強会 担当:N先生
「2012 ASA annual meatingとUPMC見学記」
・2012年はWashington DCで開催
・ちなみに2013年はSan Francisco
・10/13-17の5日間
・プログラムは日本とそう変わらないが規模が大きい。
・Oral、Poster discussion、ePoster presentation
→native並の英語力が必要。
・Poster presentation
・scientific abstract
・medical challenging case
→英語が苦手でもなんとかなるかも。
・企業展示
・日本の倍ぐらいの広さのブース
・見た事のない企業も多くあった
→中国系企業が増えているらしい
・名札のバーコードを読み取られる。
→後日連絡をとれるようなシステム
・面白かったデバイス
・RUSCHのEZ-BLOCKER
・気管支ブロッカーの一種
・ブラインドで抵抗があるところまで挿入
・ブロックしたい方のカフを膨らませる
・CLARUS新製品
・良い点
・LEVITANにモニターがついた新製品
・モニターの横にダイアルがある。
→スタイレットの動きに合わせて角度を変えられる
・悪い点
・吸引ポートが無い
・高そう
・Truflex
・可動性のあるスタイレット
・GlidescopeやMc grathとの併用がオススメ
・ARROWの持続PNB用カテーテル
・固定がめんどくさそう。
・会場風景
・LMAの巨大模型
・ASA Bistro
・Washington DC
・きれいな街並み
・政府機関と博物館だらけ
・公園にはリスと浮浪者が多い
・ピッツバーグへ。
・University of Pittsburgh Medical Center(UPMC)
・UPMC presbyterian/montefiore
・主に成人の胸部・移植・脳・外傷・デイ手術
・手術室は41室 (presbyは29室)
・スタッフ55人、麻酔看護師111人
・2010年には麻酔件数35,757件
・521件の移植手術(そのうち126件が肺移植)を施行。
・肺移植においては全米トップの件数を誇る。
・手術見学(心臓・肺移植)
・Cardiac anesthesia部門
・フェローは年間4人
・研修期間は1年
・主にTEEを学ぶ → PTEexam取得を目標
・心臓血管麻酔・肺移植の麻酔を担当
・①redo MVR+TAPを見学してきました。
・導入前にA-line (上腕からシース)
・導入はプロポフォール・フェンタニル・エスラックス
・ネオシネジンにて血圧コントロールしながら挿管
→なぜか挿管前にメパッチを貼布
・SGカテは麻酔器の上で開封(清潔?)
・シースはルーメン2つ付きの三叉シース使用
・TEEのお作法
・ルーチンワークは似たような感じ
・ZOOMを多用し、弁の性状などじっくり見ていた
・外科医にまとめて所見を述べていた
・Weaning
・Ao declamp前から、カテコラミン投与開始
・麻酔科側からMg・lidocaine・Ca投与
・プロタミン投与前にDDAVPを静脈内投与
・TEGで凝固系のチェック
・Redo症例にも関わらず30分くらいで帰室していた模様
・DDAVP使ってた。
・②肺移植見学してきました。
・Nitric Oxide使ってた。
・呼吸回路に組み込んで投与
・肺高血圧に対して使用
・使用後PA圧かなり下がってた。
・ECMOとpulmonoplegia
・再灌流
・気管→PA→PVと吻合
・Reperfusion前にソルメドロールを投与
・肺にはpulmonoplegiaを灌流しておく(CPB回路使用)
・ちなみに肺移植は
・single-lung transplant
・en bloc double-lung transplant
・sequential double-lung transplant
・heart-lung transplant
の4種類がある。
当院でも心臓外科手術ではTEG
「2012 ASA annual meatingとUPMC見学記」
・2012年はWashington DCで開催
・ちなみに2013年はSan Francisco
・10/13-17の5日間
・プログラムは日本とそう変わらないが規模が大きい。
・Oral、Poster discussion、ePoster presentation
→native並の英語力が必要。
・Poster presentation
・scientific abstract
・medical challenging case
→英語が苦手でもなんとかなるかも。
・企業展示
・日本の倍ぐらいの広さのブース
・見た事のない企業も多くあった
→中国系企業が増えているらしい
・名札のバーコードを読み取られる。
→後日連絡をとれるようなシステム
・面白かったデバイス
・RUSCHのEZ-BLOCKER
・気管支ブロッカーの一種
・ブラインドで抵抗があるところまで挿入
・ブロックしたい方のカフを膨らませる
・CLARUS新製品
・良い点
・LEVITANにモニターがついた新製品
・モニターの横にダイアルがある。
→スタイレットの動きに合わせて角度を変えられる
・悪い点
・吸引ポートが無い
・高そう
・Truflex
・可動性のあるスタイレット
・GlidescopeやMc grathとの併用がオススメ
・ARROWの持続PNB用カテーテル
・固定がめんどくさそう。
・会場風景
・LMAの巨大模型
・ASA Bistro
・Washington DC
・きれいな街並み
・政府機関と博物館だらけ
・公園にはリスと浮浪者が多い
・ピッツバーグへ。
・University of Pittsburgh Medical Center(UPMC)
・UPMC presbyterian/montefiore
・主に成人の胸部・移植・脳・外傷・デイ手術
・手術室は41室 (presbyは29室)
・スタッフ55人、麻酔看護師111人
・2010年には麻酔件数35,757件
・521件の移植手術(そのうち126件が肺移植)を施行。
・肺移植においては全米トップの件数を誇る。
・手術見学(心臓・肺移植)
・Cardiac anesthesia部門
・フェローは年間4人
・研修期間は1年
・主にTEEを学ぶ → PTEexam取得を目標
・心臓血管麻酔・肺移植の麻酔を担当
・①redo MVR+TAPを見学してきました。
・導入前にA-line (上腕からシース)
・導入はプロポフォール・フェンタニル・エスラックス
・ネオシネジンにて血圧コントロールしながら挿管
→なぜか挿管前にメパッチを貼布
・SGカテは麻酔器の上で開封(清潔?)
・シースはルーメン2つ付きの三叉シース使用
・TEEのお作法
・ルーチンワークは似たような感じ
・ZOOMを多用し、弁の性状などじっくり見ていた
・外科医にまとめて所見を述べていた
・Weaning
・Ao declamp前から、カテコラミン投与開始
・麻酔科側からMg・lidocaine・Ca投与
・プロタミン投与前にDDAVPを静脈内投与
・TEGで凝固系のチェック
・Redo症例にも関わらず30分くらいで帰室していた模様
・DDAVP使ってた。
・②肺移植見学してきました。
・Nitric Oxide使ってた。
・呼吸回路に組み込んで投与
・肺高血圧に対して使用
・使用後PA圧かなり下がってた。
・ECMOとpulmonoplegia
・再灌流
・気管→PA→PVと吻合
・Reperfusion前にソルメドロールを投与
・肺にはpulmonoplegiaを灌流しておく(CPB回路使用)
・ちなみに肺移植は
・single-lung transplant
・en bloc double-lung transplant
・sequential double-lung transplant
・heart-lung transplant
の4種類がある。
当院でも心臓外科手術ではTEG
2012年12月8日土曜日
膠質液いろいろ
麻酔科勉強会 担当:S先生
「膠質液いろいろ」
・輸液製剤
・晶質液:リンゲル液、生理食塩水
・膠質液:
・アルブミン製剤:
・4-5%:hypooncotic
・20-25%:hyperoncotic
・合成膠質液
・HES
・ゼラチン
・デキストラン
・HES:① HES (②/③) 』
・① : concentration (%)
・② : molecular weight (kDa)
・③ : degree of substitution
(DS ; 2nd generation HES = 0.5)
・例:HespanderTM = 6% HES (70/0.5)
・Boldt scandal
・ドイツの麻酔科医Joachim Boldt。
→colloidの世界的権威。
・102本中89の研究が倫理委員会の認可なしに行われた。
・少なくとも10本の論文はfalse dataであった。
・膠質液 vs 晶質液
・Perel P,et al. Cochrane Database Syst Rev 2012;6
・(Boldtを含む)66 RCTのメタ解析。
・outcome:mortality
・アルブミン vs 晶質液:Risk ratio 1.01
・HES vs 晶質液:Risk ratio 1.10
・アルブミン vs HES
・Bunn F, et al Cocherane Database Syst Rev 2012;7
・(Boldtを含む)86 RCT(n=5,484)のメタ解析。
・surgical ICU入院患者
・outcome:mortality
・Risk Radio 1.06
・hypooncotic vs hyperoncotic
・Schortgen F, et al. Intensive Care Med 2008;34:2157-68.
・MC-cohort study
・shockの患者(n=1,013)。
・outcome:①腎合併症、②ICU death。
・晶質液でのodds ratio 1.00
・人工高張膠質液:①1.16(0.52-2.57) ②1.76(1.00-3.11)
・高張アルブミン:①5.99(2.75-13.08)②2.79(1.42-5.47)
・アルブミン vs 晶質液
・Finfer S, et al. NEJM 2004;350:2247-56
・SAFE study。
・4%アルブミン vs 生食
・ICU入室患者(n=6,997)
・probability of survival:p=0.96
・Severe sepsis患者:Relative Risk 0.87(0.74-1.02)
・HES vs 晶質液
・Myburgh JA, et al. NEJM 2012;367:1901-11
・CHEST trial。
・ICU入室患者(n=6,742)
・6% HES(130/0.4) vs 生食
・90日死亡:p=0.26
・RRT使用:HES群で高い。
・心臓手術における膠質液
・Novickis RJ, et al. Thorac Cadiovasc Surg 2012;144:223-30
・(Boldtを含まない)18 RCT(n=970)のメタ解析。
・人工心肺を使用した心臓手術患者。
・水分バランス、ICU滞在期間、死亡率に有意差なし。
・頭部外傷におけるアルブミン
・Myburgh J, et al. NEJM 2007;357:874-84
・ICU入室の頭部外傷患者(n=460)
・4%アルブミン vs 生食
・probabillity of survival:生食群が有意に高い。
・GOSe(Extended Glasgow Outcome Scale)
→生食群で有意に高い。
・sepsisにおけるアルブミン使用
・Delaney AP, et al. Crit Care Med 2011;39:386-91
・sepsis患者
・アルブミン vs その他の製剤
・死亡率:アルブミン群のほうが低い。
・sepsisにおけるHESその1
・Schortgen F, et al. Lancet 2001;357:911-6
・severe sepsisまたはseptic shockの患者(n=129)
・6% HES(200/0.6) vs 3% fluid-modified gelatin
・HES群でARFリスクが高い。
・sepsisにおけるHESその2
・Bayer O, et al. Crit Care Med 2011;39:1335-42
・surgical ICUのsevere sepsisまたはseptic shock患者(n=346)。
・HES群、ゼラチン群でRRT実施が多くなる。
・sepsisにおけるHESその3
・Guidet B, et al. Crit Care 2012;16:R94
・multi center RCT
・CRYSTMAS study。
・severe sepsis患者(n=196)
・6% HES(130/0.4) vs 生食
・輸液使用量は生食群が多い。
・sepsisにおけるHESその4
・Perner A, et al. NEJM 2012;367:124-34
・multi center RCT
・6S trial
・severe sepsisまたはseptic shock患者(n=798)
・6% HES(130/0.42)+必要なら晶質液 vs リンゲル。
・HES群でprobabillity of survivalは低い。
・ショック群ではリンゲルの方がいい。
・6% HESは本当に安全か。
・Suzuki T, et al. j Anesth 2010;24:418-25
・SC-retrospective cohort study
・5,000ml以上出血した手術患者。
・6% HES(70/0.55)(n=31)
・術後AKI vs 術後non-AKI
・差はなし。
・ATS consensus statement for colloid in ICU
・Am J Respir Crit Care Med 2004;170:1247-59
・頭部外傷には膠質液は控えるべき。
・全ての膠質液は凝固系に影響を与える。
・HESはsepsis患者ではAKIリスクを高める。
・透析関連の低血圧には膠質液が晶質液より優れる。
・高張アルブミンは腹水大量吸引後には投与するべき。
・血行動態的に安定期のARDSには輸液制限が適す。
・ESICM consensus statement for colloid in ICU
・Reinhart K, et al. Intensive Care Med 2012;38:368-83
・推奨(recommend)
・severe sepsis、AKIハイリスク
→HES(>200/>0.4)使わない。
・頭部外傷には膠質液を使わない。
・臓器移植ドナーにはHESを使わない。
・提案(suggest)
・severe sepsisにはアルブミンを使ってもいい。
・AKIハイリスクにはHES(130/0.4)を使わない。
・輸液蘇生に高張膠質液を使わない。
「膠質液いろいろ」
・輸液製剤
・晶質液:リンゲル液、生理食塩水
・膠質液:
・アルブミン製剤:
・4-5%:hypooncotic
・20-25%:hyperoncotic
・合成膠質液
・HES
・ゼラチン
・デキストラン
・HES:① HES (②/③) 』
・① : concentration (%)
・② : molecular weight (kDa)
・③ : degree of substitution
(DS ; 2nd generation HES = 0.5)
・例:HespanderTM = 6% HES (70/0.5)
・Boldt scandal
・ドイツの麻酔科医Joachim Boldt。
→colloidの世界的権威。
・102本中89の研究が倫理委員会の認可なしに行われた。
・少なくとも10本の論文はfalse dataであった。
・膠質液 vs 晶質液
・Perel P,et al. Cochrane Database Syst Rev 2012;6
・(Boldtを含む)66 RCTのメタ解析。
・outcome:mortality
・アルブミン vs 晶質液:Risk ratio 1.01
・HES vs 晶質液:Risk ratio 1.10
・アルブミン vs HES
・Bunn F, et al Cocherane Database Syst Rev 2012;7
・(Boldtを含む)86 RCT(n=5,484)のメタ解析。
・surgical ICU入院患者
・outcome:mortality
・Risk Radio 1.06
・hypooncotic vs hyperoncotic
・Schortgen F, et al. Intensive Care Med 2008;34:2157-68.
・MC-cohort study
・shockの患者(n=1,013)。
・outcome:①腎合併症、②ICU death。
・晶質液でのodds ratio 1.00
・人工高張膠質液:①1.16(0.52-2.57) ②1.76(1.00-3.11)
・高張アルブミン:①5.99(2.75-13.08)②2.79(1.42-5.47)
・アルブミン vs 晶質液
・Finfer S, et al. NEJM 2004;350:2247-56
・SAFE study。
・4%アルブミン vs 生食
・ICU入室患者(n=6,997)
・probability of survival:p=0.96
・Severe sepsis患者:Relative Risk 0.87(0.74-1.02)
・HES vs 晶質液
・Myburgh JA, et al. NEJM 2012;367:1901-11
・CHEST trial。
・ICU入室患者(n=6,742)
・6% HES(130/0.4) vs 生食
・90日死亡:p=0.26
・RRT使用:HES群で高い。
・心臓手術における膠質液
・Novickis RJ, et al. Thorac Cadiovasc Surg 2012;144:223-30
・(Boldtを含まない)18 RCT(n=970)のメタ解析。
・人工心肺を使用した心臓手術患者。
・水分バランス、ICU滞在期間、死亡率に有意差なし。
・頭部外傷におけるアルブミン
・Myburgh J, et al. NEJM 2007;357:874-84
・ICU入室の頭部外傷患者(n=460)
・4%アルブミン vs 生食
・probabillity of survival:生食群が有意に高い。
・GOSe(Extended Glasgow Outcome Scale)
→生食群で有意に高い。
・sepsisにおけるアルブミン使用
・Delaney AP, et al. Crit Care Med 2011;39:386-91
・sepsis患者
・アルブミン vs その他の製剤
・死亡率:アルブミン群のほうが低い。
・sepsisにおけるHESその1
・Schortgen F, et al. Lancet 2001;357:911-6
・severe sepsisまたはseptic shockの患者(n=129)
・6% HES(200/0.6) vs 3% fluid-modified gelatin
・HES群でARFリスクが高い。
・sepsisにおけるHESその2
・Bayer O, et al. Crit Care Med 2011;39:1335-42
・surgical ICUのsevere sepsisまたはseptic shock患者(n=346)。
・HES群、ゼラチン群でRRT実施が多くなる。
・sepsisにおけるHESその3
・Guidet B, et al. Crit Care 2012;16:R94
・multi center RCT
・CRYSTMAS study。
・severe sepsis患者(n=196)
・6% HES(130/0.4) vs 生食
・輸液使用量は生食群が多い。
・sepsisにおけるHESその4
・Perner A, et al. NEJM 2012;367:124-34
・multi center RCT
・6S trial
・severe sepsisまたはseptic shock患者(n=798)
・6% HES(130/0.42)+必要なら晶質液 vs リンゲル。
・HES群でprobabillity of survivalは低い。
・ショック群ではリンゲルの方がいい。
・6% HESは本当に安全か。
・Suzuki T, et al. j Anesth 2010;24:418-25
・SC-retrospective cohort study
・5,000ml以上出血した手術患者。
・6% HES(70/0.55)(n=31)
・術後AKI vs 術後non-AKI
・差はなし。
・ATS consensus statement for colloid in ICU
・Am J Respir Crit Care Med 2004;170:1247-59
・頭部外傷には膠質液は控えるべき。
・全ての膠質液は凝固系に影響を与える。
・HESはsepsis患者ではAKIリスクを高める。
・透析関連の低血圧には膠質液が晶質液より優れる。
・高張アルブミンは腹水大量吸引後には投与するべき。
・血行動態的に安定期のARDSには輸液制限が適す。
・ESICM consensus statement for colloid in ICU
・Reinhart K, et al. Intensive Care Med 2012;38:368-83
・推奨(recommend)
・severe sepsis、AKIハイリスク
→HES(>200/>0.4)使わない。
・頭部外傷には膠質液を使わない。
・臓器移植ドナーにはHESを使わない。
・提案(suggest)
・severe sepsisにはアルブミンを使ってもいい。
・AKIハイリスクにはHES(130/0.4)を使わない。
・輸液蘇生に高張膠質液を使わない。
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