2013年7月24日水曜日

緊急時の麻酔導入・気管挿管

麻酔科EBM勉強会  担当:O先生

「緊急時の麻酔導入・気管挿管」

・緊急の麻酔導入がなぜ困難か。
  ・既往がわからない
  ・気道系の評価が十分にできない
  ・血行動態の不安定さ
  ・外傷後の頸椎損傷
  ・フルストマック
  ・不慣れな環境(手術室外での場合)
  ・不慣れな介助者
  ・不十分な設備、モニタリング
・患者評価
  ・何故緊急なのか?
  ・患者にどういった医学的な問題があるか?
  ・最近どういった治療がなされていたか?
  ・アレルギーはあるか?
  ・麻酔に関してこれまで何か問題があったか?
  ・神経学的な問題はあるか?
  ・最終の食事は何時間前か?
  ・ラボデータでの異常はあるか?
  ・心電図の評価はどうか?
  ・その他の陽性所見は?
・緊急時の麻酔導入
  →様々な危険が伴う
   ・喉頭痙攣
   ・疼痛
   ・血行動態の不安定化
   ・攻撃的な振舞
   ・誤嚥
  →素早い気道の確保・麻酔導入が必要となってくる
・ミラー麻酔科学に載ってるフローチャート
  ・挿管の必要性あり
    →前酸素化
    →誤嚥防止のため輪状軟骨を圧迫
    →麻酔薬・筋弛緩薬を投与
    →喉頭鏡を用いた挿管、迅速導入
    →だめだった場合、もう一度挿管
    →それでもだめな場合はラリマで気道を確保
    →それも不可能な場合、輪状甲状膜切開。
・古典的な迅速導入法
  ・3〜5分の前酸素化
  ・麻酔導入薬・筋弛緩薬を予定量を一気に注入する
  ・誤嚥防止のため輪状軟骨圧迫
  ・マスク換気をせずに薬が効くのを待つ
  ・挿管
・挿管のためだけの筋弛緩投与なら
   →ロクロニウム+スガマデクスはいい選択肢
・挿管前の鎮静について
  ・欧米ではエトミデートが主流
    →日本では未発売
    →作用時間が短く血圧低下もない。脳保護作用(+)
  ・プロポフォール、イソゾール
    →血管拡張によるBP低下に注意
    →状況によって使い分ける、慣れた薬を使う
  ・多くの場合、最低限の投与での鎮静が好ましい
・最近の迅速導入について
  →論文読んできました。
  →A&A:Rapid Sequence Induction and Intubation:Current Controversy
・クリコイドプレッシャーは?
  ・1961年にSelickにより提唱された。
  ・44N(4.45kg)で押し続ける
    →覚醒下で10N(1kg)、麻酔下で20〜30N
  ・科学的な根拠にかける
  ・逆に挿管の妨げになって危険である。
  ・逆流を防ぐには有用だが、気道確保の妨げになる、
  ・バッグマスク換気中に関してはエビデンスがありそう。
  ・軟部組織損傷の報告も。
・挿管困難デバイスについて
 ・AWS
 ・ビデオラリンゴスコープ
 ・トラキライト、など。
・迅速導入以外の選択
 →意識下挿管
  ・気道確保が困難、上気道の外傷、頸椎が不安定である
    →軽度の鎮静後に局所麻酔し挿管
    →気道を安全に確保できる。
  ・気管支鏡を用いると診断の手がかりを得られる
  ・血行動態が不安定な患者、非協力的な患者には向いてない



    MEさん主催の人工心肺ハンズオン


低流量麻酔

麻酔科勉強会  担当:O先生

「低流量麻酔」

・低流量麻酔
 →分時換気量以下の新鮮ガス流量で行う麻酔
・麻酔器の種類
 ・開放式
 ・半開放式
 ・半閉鎖式:低流量麻酔は主にこれ
 ・閉鎖式
・閉鎖式循環式回路の歴史
  ・1850's:再呼吸回路
  ・1917:ソーダライムの発明
  ・1980's:イソ、デス、セボ。環境問題への関心の高まり
  ・1986:カプノモニターの発明
・循環回路の仕組
  ・新鮮ガス流入
    →麻酔ガスが添加され呼吸回路へ
    →呼気回路から一部は余剰ガス排出装置へ
    →一部はカニスタを通り新鮮ガスと再び合流、呼吸回路へ。
・吸入麻酔薬の取り込み
  →肺胞内で平衡に達するまでは吸入麻酔薬それなりに必要
  →それ以降は代謝されないため必要量は減る
・低流量麻酔の利点と欠点
  ・利点:経済的、環境にやさしい
  ・欠点:回路内への有害物質の蓄積
      FGと吸入ガスの組成の不一致
・有害物質の蓄積
  ・窒素:大気から迷入する可能性
      ・FGと回路内ガス濃度の乖離が見られたら?
        →高流量に切り替えてみる
  ・メタン:消化管から発生、安全限界に達することはない。
  ・アセトン:飢餓状態に発生。安全限界にはまず達しない。
・ソーダライム関連
  ・乾燥したソーダライムと吸入麻酔薬で一酸化炭素の発生
    →デス>エン>イソ>ハロ>セボの順
    ・温度が高いと一酸化炭素発生しやすい
    ・高流量だと回路内が乾燥しやすいため起こる可能性。
      →低流量なら呼気の再利用が多く回路は乾燥しにくい。
・FGと吸入ガスの組成の不一致
  →ドレーゲル社の資料より
・麻酔科学サマーセミナーでデスの低流量麻酔特集してました。
  →紹介


デスフルランいろいろ

初期研修医勉強会  担当:T先生

「デスフラランいろいろ」

・麻酔薬の歴史
  ・1722:Joseph Priestleyが亜酸化窒素を発見
  ・亜酸化窒素がパーティーで流行
  ・1795:Sir Humphry Davyが鎮痛作用、二日酔い治療効果に気づく。
  ・1844:Gardner Quincy Colton, Horace Wells笑気で抜歯
  ・William Mortonがエーテル麻酔下に頸部腫瘍摘出術
    →1842:Crawford Longが同様の手術
  ・Sir James Simpsonがクロロホルム麻酔下に分娩
  ・1853:John Snowがクロロホルム麻酔下にヴィクトリア女王の分娩
  ・1929:Hendersonがシクロプロパンの麻酔作用を発見
  ・1950's:ハロタンの開発、臨床応用開始
  ・1960's:エンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、
       デスフルランの合成
・歯科医師Horace Wellsの生涯
  ・1815:コネチカット州で出生
  ・1844:Coltonの抜歯ショーを見学する
  ・同年:友人の歯科医John Riggsを笑気麻酔下で抜歯
  ・1845:MGHでの公開実験失敗
  ・セールスマンになる
  ・1848:売春婦に硫酸をかけるなで異常行動あり収監
  ・1848:クロロホルム麻酔下に足を剃刀で切り自殺
・デスフルランの歴史
  ・1987:動物における安全性・有効性確認
  ・1988-91:欧米で第1-3相臨床試験
  ・1992:FDAが認可
  ・2007-8:日本で臨床試験
  ・2011:日本で認可
・物理化学的性質
  ・沸点22.8℃
    →室温で沸騰してしまう
    →特別な気化器が必要
      ・加圧機能付き、加温機能付き
  ・脂肪-血液分配係数が低い
・40分程度の手術だと・・・
  →開眼、従命、orientationつくまでの時間は明らかに早い。
・手術時間が長くなると?
  ・セボフルランは嚥下できるまでの時間が延長する
  ・デスフルランは延長しない
・気道刺激性の問題
・喘息患者では?
  ・犬の気管支平滑筋を弛緩させる
  ・モルモットの気管支平滑筋を弛緩させる
  ・摘出灌流ラット肺、アセチルコリン誘発気管支攣縮
・気管支拡張作用
  デス>セボ>ハロ=イソ
・PONV、コスト、地球温暖化への影響、環境半減期など  



2013年7月9日火曜日

周術期の血糖コントロール

「麻酔EBM勉強会」  担当:K先生

「周術期の血糖コントロール」

・高血糖と易感染性
  ・FBS>200㎎/dlを超える高血糖
   →多角白血球の粘着能・走化能・殺菌能・貪食能の低下
・血糖コントロールについての時代の流れ
   ・重症患者に血糖管理を厳密に行うと予後が改善。
     ・DIGAMI study(1995年)
       →以降血糖値は180~200㎎/dl程度に。
   ・Intensive Insulin Therapyの提唱
     →LeuvenⅠ&Ⅱtrial
        ・BS>150mg/dl:死亡率上昇
        ・BS110~150㎎/dl:死亡率低下・低血糖発生率変化なし
        ・BS<110㎎/dl:死亡率低下・低血糖発生率上昇
   ・LeuvenⅠ&Ⅱtrialの問題点
      ①患者重症度が低い。
      ②ICU入室直後から800~1200kcalを経静脈的に糖負荷
      ③単施設研究
      ④LeuvenⅠは開心術が60%以上を占めていた。
   ・NICE-SUGAR study(NEJM 2009)
     →IIT群では90日死亡率が有意に高い。
     →重症低血糖の頻度14.7倍高い
   ・その後のメタアナライシスでも
     →IITを行うことで低血糖の発生率は5.99倍高くなった。
・ICUでの血糖値の目標
  ・AHA/ACC:110-180
  ・ACE:140-180
  ・ADA:140-180
  ・米国胸部外科学会:180未満
  ・米国集中治療医学会:150未満
    →米国集中治療医学会だけ基準が厳し目なのは?
      ・対象患者が1000人以下のRCTを6つ新たに加えたこと。
      ・心臓血管外科術後患者で血糖値を150未満でコントロール
        →胸骨の感染が減少し、院内死亡率が低下した
・DM患者の血糖コントロールは?
  ・糖尿病患者
   →非糖尿病患者と比べて高血糖に日々暴露
   →急激な血糖低下は有害である可能性あり。
  →血糖値の基準はより甘めでよいのかもしれない。
・NICE-Sugar studyの弱点は?
  ・簡易血糖測定器の使用
    ・多くの簡易血糖測定器はHt:40%であると仮定
    ・ICUでの輸血の閾値は7~8㎎/dl。
    ・血糖値が高めに出ている可能性
       ・低血糖を見逃している可能性
       ・BS<180㎎/dlではなくもっと低かった可能性あり
・血糖値のゆらぎ
  ・プロテインキナーゼC-β
    ・酸化ストレスの指標
    ・高血糖から正常血糖に低下するときに上昇する
  ・臍帯静脈細胞を用いたモデル
    ・高血糖から正常血糖に急速に低下するときに
     細胞のアポトーシスが増加する
  ・血糖値の変動も患者予後に影響を与える可能性がある。
    →持続的に血糖値を測定しより厳密に血糖をコントロールすれば
     予後改善が期待できるかも?
・人工膵臓
  ・国内唯一の人工膵臓。
  ・一部の大学で臨床で使用されている。
  ・設定した血糖値を上回るとインスリンが、
   下回るとグルコースが自動的に注入される。



     超緊急帝王切開シミュレーション

2013年7月7日日曜日

集中治療医学会・近畿地方会

7月6日、第58回日本集中治療医学会・近畿地方会が
ポートアイランド・兵庫医療大学にて開催されました。
当科からも2名の先生が発表されました。








 発表された先生方、お疲れ様でした。

2013年7月4日木曜日

肥満と麻酔

「麻酔科勉強会」 担当:W先生

「肥満と麻酔」

・各国別の肥満者の割合
・男女別肥満者の割合
  ・男性:30.4%
  ・女性:21.1%
・BMIとObesity Class分類
・肥満を来す疾患いろいろ
・麻酔管理上の問題点
   ・気道管理
   ・体位
   ・酸素化
   ・循環管理
   ・術後疼痛管理
   ・術後悪心・嘔吐
   ・創感染
   ・深部静脈血栓症
・教科書的には
  ・頚部が太く短い
  ・舌が大きい
  ・咽頭軟部組織が厚い
     →喉頭展開・挿管が困難
・BMIとMallampati分類
  ・仰臥位、肩枕使用、sniffing position
  ・BMIは挿管困難の指標とはならなかった
  ・Mallampati分類ハイスコアが潜在的な挿管困難の指標か
  ・喉頭展開と挿管の難易度は相関しない
・30°半側臥位、sniffing position
  →Mallampati分類 3以上が挿管困難の独立したリスク因子だが、
   特異度・陽性的中率は共に低い(62%, 29%)
・エコーでの気道評価
  ・皮膚〜気管前壁の軟部組織の厚さを評価
    ・声帯レベルの気管前面の軟部組織の厚さ
    ・頚部周囲長
   →挿管困難の指標
・sniffing vs ramped position
・肥満と酸素化
  ・肺活量・深吸気量・予備呼気量・機能的残気量が減少
  ・Closing volumeの増加
  →酸素飽和度の急激な低下
・CPAP+PEEPや、head up/reverse Trendelenbergが酸素化に有効。


Journal超ななめ読み6月

「Journal超ななめ読み6月 」


Management of antithrombotic therapy in patients undergoing invasive procedures.
侵襲的処置を受ける患者に対する抗凝固療法の管理レビュー
N Engl J Med. 2013 May 30;368(22):2113-24.


Ischemic mitral regurgitation: an intraoperative echocardiographic perspective.
Ischemic MRの術中エコー評価のレビュー
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Jun;27(3):573-85.


Thoracic epidural anesthesia improves early outcome in patients undergoing cardiac surgery for mitral regurgitation: a propensity-matched study.
胸部硬膜外麻酔は僧帽弁手術における早期outcomeを向上させる
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Jun;27(3):445-50.


Early parenteral nutrition in critically ill patients with short-term relative contraindications to early enteral nutrition: a randomized controlled trial.
早期経腸栄養比較的禁忌の重症患者における早期静脈栄養
JAMA. 2013 May 22;309(20):2130-8.


Meta-analysis of randomized trials of effect of milrinone on mortality in cardiac surgery: an update.
心臓手術においてミルリノンが死亡率に及ぼす影響のメタ解析
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2013 Apr;27(2):220-9.


Use of Therapeutic Hypothermia After In-Hospital Cardiac Arrest*
院内心停止後の低体温療法の実態研究
Crit Care Med. 2013 Jun;41(6):1385-1395.



・ブラザキサ、イグザレルト、エリキュースも休薬期間をチェック。
・tetheringの評価、左室・左房リモデリングの評価も。
・胸部硬膜外麻酔は僧帽弁手術後の心臓、呼吸器合併症を減らす可能性。
・早期EN禁忌患者に対する早期PNも主要outcomeは向上しなかった。
・メタ解析ではミルリノン使用は死亡率の増加と関連がない可能性。
・院内心停止に対して低体温療法を行う施設はまだまだ少ない。