初期研修医勉強会 担当:M先生
「局所麻酔薬中毒」
・局所麻酔薬
・リドカイン
・メピバカイン
・ブピバカイン
・ロピバカイン
・分子式
・共通構造:脂溶性の高い芳香基
・メピバカイン:共通構造+CH3
・ロピバカイン:共通構造+C3H7
・ブピバカイン:共通構造+C4H9
・塩基型(B)とイオン型(BH+)の平衡状態にある。
・電位依存性ナトリウムチャネル
・電離していない塩基型(B)の状態で細胞膜を通過
→イオン型(BH+)に変化
→細胞質側から電位依存性ナトリウムチャネルをブロック
→作用を発揮
・局所麻酔薬のpKa(酸解離定数)が7.4に近いと
→作用発現が早くなる
・脂溶性が高いほど
→局所麻酔の作用が強くなる
・ブピバカイン
・長時間作用型の局所麻酔薬
・長年にわたり使用されてきた
・ブピバカインの偶発的な血管内注入
→蘇生抵抗性の心停止が起こる
・ロピバカイン
・長時間作用性の局所麻酔薬
・脂溶性が低い
・心毒性が低い
・毒性の低いS(-)-エナンチオマーのみから構成
・副作用
・中枢神経障害
→意識障害、痙攣、めまい
・循環障害
→ショック、血圧上昇・低下
頻脈・徐脈、不整脈
・典型的な症状は
・中枢神経興奮(聴覚障害・口周囲の違和感・興奮)
・中枢神経抑制(昏睡・呼吸抑制)・けいれん
・循環促進(高血圧・頻脈)
・循環抑制(低血圧・徐脈・心停止)
・内頸動脈や、椎骨動脈などに流入した場合
→けいれんや循環障害が突然生じることも
・局所麻酔薬中毒の予防
→血管内への注入を防ぐこと!
→針やカテーテルの血管内に留置されていること
・穿刺時に陰圧をかける
→2%程度の偽陰性が存在する
・Test Dose
・フェンタニル100μg→傾眠傾向
・エピネフリン10〜15μg/mL
(1)HR 10bpm以上の上昇
(2)sBP 15mmHg以上の上昇
→感度 80%
・分割投与
・3~5mLを15〜30秒の間隔をあけながら注入する。
・HR、BPをモニターしながら。
・血管内注入の場合は1分以内に変化が現れる。
・超音波ガイド下局所麻酔
・治療
・まずは気道確保
→高CO2、低O2、アシドーシスは局所麻酔中毒の増悪因子
・痙攣が起こったら
→ベンゾジアゼピンにて鎮痙攣
・心停止、致死的不整脈が生じたら
→基本的にはACLSガイドラインに従って蘇生
→しかしブピバカイン誘発性の心停止は蘇生に抵抗性
・脂肪乳化剤注入
・局所麻酔中毒に対する治療での副作用は報告されていない。
・膵炎症状のない高アミラーゼ血症の報告も
・脂肪乳化剤を中止すると約45分後に循環が不安定に
・投与方法
・20%脂肪乳化剤を理想体重で1.5mL/kgボーラス投与
→循環が安定したら
→0.25~0.5mL/kg/minを10分程度まで持続投与
→循環が安定しなければ
→再度ボーラス投与+0.5mL/kg/minで持続
・30分で10mL/kgがが上限
・ただ適応症例や投与時期に関しては議論の余地がある。
・同じ脂肪乳化剤でもプロポフォールは使わない。