2013年3月9日土曜日

局所麻酔薬中毒

初期研修医勉強会 担当:M先生

「局所麻酔薬中毒」

・局所麻酔薬
  ・リドカイン
  ・メピバカイン
  ・ブピバカイン
  ・ロピバカイン
・分子式
  ・共通構造:脂溶性の高い芳香基
    ・メピバカイン:共通構造+CH3
    ・ロピバカイン:共通構造+C3H7
    ・ブピバカイン:共通構造+C4H9
  ・塩基型(B)とイオン型(BH+)の平衡状態にある。
・電位依存性ナトリウムチャネル
・電離していない塩基型(B)の状態で細胞膜を通過
  →イオン型(BH+)に変化
  →細胞質側から電位依存性ナトリウムチャネルをブロック
  →作用を発揮
・局所麻酔薬のpKa(酸解離定数)が7.4に近いと
  →作用発現が早くなる
・脂溶性が高いほど
  →局所麻酔の作用が強くなる
・ブピバカイン
  ・長時間作用型の局所麻酔薬
  ・長年にわたり使用されてきた
  ・ブピバカインの偶発的な血管内注入
     →蘇生抵抗性の心停止が起こる
・ロピバカイン
 ・長時間作用性の局所麻酔薬
 ・脂溶性が低い
 ・心毒性が低い
 ・毒性の低いS(-)-エナンチオマーのみから構成
 ・副作用
   ・中枢神経障害
      →意識障害、痙攣、めまい
   ・循環障害
      →ショック、血圧上昇・低下
       頻脈・徐脈、不整脈
 ・典型的な症状は
   ・中枢神経興奮(聴覚障害・口周囲の違和感・興奮)
 ・中枢神経抑制(昏睡・呼吸抑制)・けいれん
 ・循環促進(高血圧・頻脈)
 ・循環抑制(低血圧・徐脈・心停止)
 ・内頸動脈や、椎骨動脈などに流入した場合
    →けいれんや循環障害が突然生じることも

・局所麻酔薬中毒の予防
    →血管内への注入を防ぐこと!
    →針やカテーテルの血管内に留置されていること
  ・穿刺時に陰圧をかける
    →2%程度の偽陰性が存在する
  ・Test Dose
    ・フェンタニル100μg→傾眠傾向
    ・エピネフリン10〜15μg/mL
      (1)HR 10bpm以上の上昇
      (2)sBP 15mmHg以上の上昇
          →感度 80%
  ・分割投与
    ・3~5mLを15〜30秒の間隔をあけながら注入する。
    ・HR、BPをモニターしながら。
    ・血管内注入の場合は1分以内に変化が現れる。
  ・超音波ガイド下局所麻酔
・治療
  ・まずは気道確保
    →高CO2、低O2、アシドーシスは局所麻酔中毒の増悪因子
  ・痙攣が起こったら
    →ベンゾジアゼピンにて鎮痙攣
・心停止、致死的不整脈が生じたら
  →基本的にはACLSガイドラインに従って蘇生
  →しかしブピバカイン誘発性の心停止は蘇生に抵抗性
・脂肪乳化剤注入
  ・局所麻酔中毒に対する治療での副作用は報告されていない。
  ・膵炎症状のない高アミラーゼ血症の報告も
  ・脂肪乳化剤を中止すると約45分後に循環が不安定に
 ・投与方法
   ・20%脂肪乳化剤を理想体重で1.5mL/kgボーラス投与
   →循環が安定したら
    →0.25~0.5mL/kg/minを10分程度まで持続投与
   →循環が安定しなければ
    →再度ボーラス投与+0.5mL/kg/minで持続
   ・30分で10mL/kgがが上限
   ・ただ適応症例や投与時期に関しては議論の余地がある。
・同じ脂肪乳化剤でもプロポフォールは使わない。