初期研修医勉強会 担当:Y先生
「周術期体温管理」
・人間=恒温動物
・核心温度 core temperature
→通常37±0.2℃で調節されている
・行動性体温調節
→寒いから服を着る、暖房をつけるなど
→オペ室がさむくても患者さんは動けない
・自律性体温調節
→血管拡張収縮、発汗、ふるえによる調節
→全身麻酔下ではこれも制限されている
・麻酔中の体温低下のメカニズム
・熱喪失量の増加
・冷たい手術台への伝導
・冷たい空気が患者に当たることによる対流
・皮膚、露出した内蔵、気道からの蒸発
・全身麻酔による代謝率低下
・麻酔により体全体の代謝は20~30%も低下
・温度分布の変化
・核心温度:脳や胸腔内、腹腔内温度
・外殻温度:皮膚・皮下・筋肉などの温度
・通常は核心温度>外殻温度に保たれている
→麻酔により末梢血管が開く
→体温が再分布してしまう
・全身麻酔下では
→末梢血管収縮・シバリングの閾値温度が著明に低下
・体温管理
・室温の維持
・輸液剤、輸血用血液の加温
・吸入ガスの加温、加湿
→肺循環からの直接的な熱の奪取を防ぐ
→気化熱による体温低下も防止
・半閉鎖回路では
・酸素・空気の流量を減らすと
→再呼吸するガス量が増える
→熱喪失が減少
・温風対流式ブランケット
・最も有用な体温維持法
・手術30分程度前から使用すると
→外殻温度が上昇
→麻酔後の体温再分布による体温低下が防げるという報告
・温水還流式ブランケット
・オーバーヘッドランプ
・人工心肺
・アミノ酸輸液
・体温モニタリング
・鼓膜温、鼻咽頭温、食道温など様々な部位で測定される
・鼻咽頭温
・簡便
・深すぎると口腔内に近くなる。
・肺動脈に比べて0.5℃程度の誤差あり
・鼓膜温
・内頚動脈の血流支配下
・脳内温度として測定される
・食道温
・下部食道に留置すると大動脈温に近似
・上腹部・開胸手術では正確に測定しづらい
・肺動脈温
・ほとんど大動脈温と同じであり理想的
・肺動脈カテーテル挿入が必要
・直腸温
・一応、中枢温
・腸内ガスや糞便や手術操作の影響を受けやすい
→本来の中枢温より低めに測定
・膀胱温
・手術操作に影響されやすい
・直腸温より中枢温によく相関する
・周術期低体温の予防と合併症
・人工股関節手術患者60名の前向きランダム化試験で
積極的加温群で出血軽減
Schmied H ,et al;Lancet,1996
・中枢温度が1℃下がるだけで約16%出血↑、
輸血のリスクが22%↑
Rajagopalan S,et al;Anesthesiology,2008
・1時間程度の小手術でも加温が手術部位感染を抑制し
術後抗生剤の使用量が減少
Melling AC,et al;Lancet,2001
・周術期低体温により心イベント(VT、UAPなど)発生率増加
シバリング発生率とは相関せず独立したリスクの可能性
Frank SM,et al;JAMA,1997
・ヨーロッパでの体温モニタリングと加温の現状
→全体で20%で体温モニターされ、
約40%が積極的加温されているのみであった
Torossian A;Eur J Anaesthesiol,2007
・周術期低体温に関するガイドライン
→2008年、英国国立医療技術評価機構
・Deren ME,et al; J Arthroplasty,2011
・股関節・膝関節手術患者66名を対象
・高室温(24℃)とControl群(17℃)をランダム比較
→積極的加温が開始されるまでの中枢温は有意差あり
→手術開始までに積極的加温開始され、
手術終了時点では両群間の中枢温に有意差なし
・Inaba K,et al;J Trauma Acute Care Surg, 2012
・外傷で緊急手術を要した患者118名が対象
・手術室の気温と患者の中枢温を記録
→全体の41%の患者で手術終了時点で中枢温低下あり
→後ろ向き解析にて患者の中枢温低下と手術室気温は
関連が認められなかった