2012年9月20日木曜日

麻酔と蘇生の歴史

初期研修医勉強会  担当:U先生

「麻酔と蘇生の歴史」

・紀元前4000年頃から西暦1840年代まで
  →天然物を鎮痛薬として内服
     →アヘン、大麻、マンドラゴラ、
         ヒヨス、マンダラゲ、アルコールなど
・全身麻酔の始まり
  1771:Joseph Priestley, Scheel(イギリス)
      →O2、N2Oを発見 
  1795:Humphry Davy(イギリス)
      →N2Oの鎮痛作用を確認
  1804:華岡青洲(日本)
      →通仙散を乳癌手術麻酔に用いる(156例)
  1818:Michael Farady(イギリス) 
      →エーテルに催眠・鎮痛作用のあることを発見
・全身麻酔の発達
  1842:Crawford W. Long(アメリカ)
      →エーテルを用いて頸部の腫瘤摘出
  1844:Horace Wells(アメリカ)
      →笑気麻酔下に無痛で抜歯
  1845:笑気麻酔の公開で失敗する
  1846:William T.M. Morton(アメリカ)
     →エーテル麻酔の公開を成功
  1847:James Y.Simpson(イギリス)
     →クロロホルム麻酔に成功
  1878:William Macemen(イギリス)
     →気管内挿管による全身麻酔が開始
  1884:Carl Koller(ドイツ)
     →コカインによる表面麻酔に成功
      William S.Halsted(アメリカ)
     →コカインを伝達麻酔に用いた
  1898:August C.G.Bier(ドイツ)
     →くも膜下腔にコカインを注入して脊髄麻酔
・合成麻薬の発見
  1904:プロカインの合成
  1947:リドカインの応用
  1949:サクシニルコリンの筋弛緩作用発見
  1955:ハロタンが使用される
  1963:エンフルランの合成
  1965:イソフルラン、フェンタニルの合成
  1968:セボフルランの合成
・近代麻酔の完成
  ・ベクロニウム
  ・ロピバカイン
  ・プロポフォール(1989-臨床使用)
  ・レミフェンタニル
  ・スガマデクス
    →これらは1980-2000年代に発見されている
・華岡青洲
  ・1804年10月13日、世界初の全身麻酔
  ・実験台は嫁、姑
・通仙散
  ・経口麻酔薬
  ・効果発現に時間を要する
  ・個人差が大きい
・通仙散の作り方
  ・マンダラゲ8分
  ・トリカブト2分
  ・ビャクシ2分
  ・トウキ2分
  ・センキュウ2分
  ・ナンセイシャ1分
     (分=匁の1/10(375mg)。1匁=3.75g)
・通仙散の飲み方
  ①前スライドのものを細かく砕く
  ②熱湯に投じてかき混ぜる
  ③滓を取り除く
  ④温かいうちに飲む
    →2-4時間で効果がみられる

ブレイク
「長崎とカステラ」

・麻酔器具の歴史
  1831:プラバーズ注射器の発明
  1854:中空の金属針開発
  1886:アンプル完成
  1895:直接喉頭鏡完成
  1932:マッキントッシュブレード開発
  1952:全プラスチックのディスポ注射器完成
・麻酔器の発達
  1867:鼻と口を覆う笑気ガス吸入器製作
      クロロホルム吸入器を開発
  1872:笑気吸入器を製作
  1877:携帯式麻酔器製作
  1882:エーテルクロロホルム麻酔器開発
・蘇生法の歴史
  ・古代から
   →温熱法・むち打ち法・ふいご法・燻煙法・逆さづり法・樽法等
  18世紀:回転法(呼気・吸気を作る)
  1848:世界初の術中死
  1892:胸骨圧迫(120/分)を提唱
  1901:開胸マッサージ
  1911:VFの心電図記録
  1937:除細動器の開発
  1947:漏斗胸手術にVFを治療
  1951:閉胸式除細動器開発
  1956:口対口呼吸の人工呼吸の完成
  1957:ABCの提唱
  1960:非開胸式心臓マッサージの報告(20例中70%蘇生)


血液凝固とPoint of Care

麻酔科勉強会  担当:Y先生

「血液凝固とPoint of Care」

・Waterfall model (1964)
  ・一般凝固機能、抗凝固薬の作用機序の原理を理解するには便利
  ・生体内の血液凝固を説明する上で正確ではない
  ・複雑?
・Cell-based model
  ・生体内の血液凝固をより正確に反映するモデル

・血小板の活性化
  ①血管損傷部位
     →GPIb/IXはvW因子を介して露出されたコラーゲンに粘着。
  ②血管外の組織因子も露出
     →血中の活性型VII因子と結合
     →Xaを経て微量のトロンビン(IIa)発生。
  ③コラーゲンとトロンビンはそれぞれGPVIとPAR1を活性化
     →局所の血小板凝集を活性化する
・血小板活性化の波及
  ・活性化された血小板はADPやトロンボキサンA2を放出
    →周囲の血小板も二次的に活性化。
    →活性化した血小板はフィブリノゲンと結合。
・血小板の凝集
  ・活性化をうけた血小板はGPIIb/IIIbを多数発現。
  ・このレセプターにvW因子またはフィブリノゲンが結合。
  ・多数の血小板が血管損傷部位を覆う(一次止血)
・クロット形成
  ・活性化した血小板表面
    →微量のトロンビンがV、VIII、XI因子を活性化する
  ・X因子活性化酵素による効率的なトロンビン産生。
    →十分な量のトロンビン
    →フィブリノゲンをXIIIa因子のもと安定化フィブリン重合化へ。
    →最終的に強固なclotが形成される。

・従来の凝固検査
  →生体内での血液凝固を説明するものとして必ずしも正確ではない
・PT、APTT
  ・血漿成分での評価
  ・フィブリンが析出するまでの時間の測定
  ・血餅の強度の評価ができない
  ・線溶系の評価ができない
・PT
  ・外因系凝固カスケードの活性をスクリーニング
  ・クエン酸加被検血漿に組織TPとCa2+を含んだ試薬を添加
    →フィブリン析出までの時間を測定する
・APTT
  ・内因系凝固カスケードの活性をスクリーニング
  ・クエン酸加被検血漿
  ・組織TPとCa2+を含んだ試薬を添加
  ・フィブリン析出までの時間を測定する(PTT)。
  ・さらにセライトやカオリン、エラジン酸などの陰性荷電物質を添加
    →XII因子などの接触物質の十分な活性化
    →安定で制度の高い方法にした検査(APTT)
・ACT
  ・全血凝固検査法
  ・活性化凝固時間
  ・高容量域のヘパリン効果はAPTTでは評価できない
  ・ベットサイドで測定可能
  ・活性化剤を混じたテストtube内に血液を入れる
    →凝固塊形成
    →tube内の棒磁石が重力に抗して回転移動。

・Point of Careモニター
・代表的な機器
  ・トロンボエラストグラフ(TEG®:Thrombelastograph)
  ・トロンボエラストメトリー(ROTEM®: Thromboelastometry)
  ・ソノクロット(Sonoclot®)
・point of careモニター
  ・装置が小型である(設置や移動が容易であること)
  ・検体の前処理(遠心分離など)が不要である
  ・測定時間が短い
  ・比較的少量の検体で測定できる
  ・結果の解釈が容易である
  ・臨床的再現性が高い
・従来の凝固検査と異なる点
  ・全血検査なので血小板と凝固因子の相互作用を評価できる
  ・凝固反応の速度を測定できる点
  ・血餅の弾性粘張度の変化を測定する
     →止血血栓の強度を計測できる点
  ・凝固過程だけではなく線溶過程も評価できる
  ・凝固・線溶過程を波形から視覚的にも評価できる点

・簡単にROTEM
  ・INTEM、EXTEMのCTはそれぞれAPTT、PTに相当
  ・CTは凝固因子活性を反映
  ・MCFはフィブリノゲン、血小板数に影響を受ける
  ・FIBTEMはフィブリノゲンのレベルと相関する
  ・FIBTEMのMCFが10mm以下orEXTEMのCTが正常の1.5倍以上
      →フィブリノゲン製剤の投与指標となる
  ・APTEM-EXTEMで線溶系の異常
  ・INTEM-HEPTEMでヘパリンの影響

・臨床応用
  ・心臓手術の術後出血管理
    →TEG導入後、輸血使用量を、著しく減らすことが可能になった。
  ・集中治療室での外傷ケアに推奨
  ・肝移植で輸血量の減少



2012年9月11日火曜日

麻酔科研修


9月になり、新しく2名の研修医の先生が、
麻酔科研修に来てくれました。



     マスク換気がかなり上手なU先生。



     指導医の熱い指導を受けるK先生。


U先生、K先生、頑張ってください!

2012年9月6日木曜日

Acute mesentric ischemia

ICU勉強会 担当:U先生

「Acute mesentric ischemia」

・Acute mesentric ischemia
  →腸管膜血管の急性循環不全に起因する疾患の総称
  →重篤な合併症を引き起こす
  →広範な腸管虚血・壊死・汎発性腹膜炎や多臓器不全など
・閉塞性と非閉塞性
・リスク因子
  ・心血管リスクのある高齢者
  ・AR
  ・sepsis
  ・不整脈
  ・ジゴキシン、α作動薬の使用
  ・コカイン
  ・心臓手術後
  ・透析患者
・病態生理
  ・もともとはhomeostaticな機序
   →心臓と脳血流を守るために血液がシフトする。
   →バソプレッシン、アンギオテンシン、その他神経内分泌因子など関与。
・臨床所見
   →あまり当てにならない。
  ・疼痛は遅れてやってくることも。
  ・血便を伴う腹痛は大腸虚血を疑う
  ・腹膜刺激徴候
  ・反跳痛など
・診断
  ・臨床的に疑うかどうか。
  ・家族歴が役に立つことも。
  ・とにかく早期診断!
  ・症状は非特異的。
・AGAガイドラインによれば・・・
  ・静脈血栓型ではCTが有用
  ・強く疑えば血管造影へ。
    →パパベリン動注も可能。
・治療
  ・代謝性アシドーシスの改善
  ・広域抗生剤投与
  ・NGチューブ挿入し減圧
  ・血管収縮薬とジギタリスは使用しない
  ・DOB、低容量DOA、ミルリノン。
  ・アンギオカテからパパベリン。



    4階中央手術室。全18室あります。

セボフルランvsプロポフォール

初期研修医勉強会  担当:I先生


「セボフルランvsプロポフォール」


・吸入麻酔薬
  →吸入させることで肺胞から血中に拡散
  →中枢神経などに運搬
  →脂肪や筋肉組織にも運ばれ定常状態に
・定常状態とは
  →吸入濃度=肺胞濃度=血中濃度=組織濃度
・血液/ガス分配係数
  →小さいほど調節性が良い
・吸入麻酔薬の作用
  ・意識消失
  ・不動化(MAC)
  ・高次精神機能低下
  ・自律神経反射抑制
  ・筋弛緩や鎮痛効果はない
  ・MAC(Minium alveolar concentration)
・MACとは皮膚切開時に50%の人が体動しない1気圧での最少肺胞濃度
・MACawake:意識喪失に必要な麻酔薬の量
  →通常は0.33MAC
・平衡状態
  ・肺胞、血液、脳の吸入麻酔薬分圧は等しくなっている
    →肺胞濃度は脳での分圧を反映
    →では肺胞濃度を規定する因子は?
・肺胞濃度
  ・吸入濃度は、到達する肺胞濃度とその到達速度に影響を及ぼす
  ・吸入濃度が高いと、FA/FI比の上昇が速くなる
  ・肺胞換気量も濃度規定に関与
・肺胞から血中へ
  ・取り込み量={λ×Q×(PAーPV)}/大気圧で規定
    ・λ(血液/ガス分配係数)が大きくなる
      →多くの麻酔薬が取り込まれる
      →FA/FI比の低下を招く
    ・Q(心拍出量)が大きくなる
      →肺血流量は増加
      →多くの麻酔薬が肺胞から運ばれてしまいFA/FIは低下
・セボフルラン
  ・気管支拡張作用
  ・心筋保護作用
  ・副作用として悪性高熱症、肝機能異常、悪心嘔吐、頭痛、悪寒

・静脈麻酔薬の作用
  ・プロポフォール
    →GABA-Areceptor作動薬
    →Cl-channelを開口
    →神経細胞の過分極をもたらし活動抑制
  ・ケタミン
    →NMDAreceptorでグルタミン酸と拮抗し興奮性電動を抑制
・コンパートメントモデルのお話
・プロポフォール
  ・鎮静作用はあるが、筋弛緩作用はない
  ・作用発現が速い
  ・呼吸抑制作用は強い
  ・血管痛
  ・血管拡張、動脈圧の低下
  ・個体差が大きい
  ・体内蓄積が少ない
  ・制吐作用

ブレイク
「ベルギーに住んでました。」

・論文など



2012年9月2日日曜日

JB-POT対策

第9回 日本周術期経食道心エコー(JB-POT)認定試験が
11月11日に行われます。
当院麻酔科には10名のJB-POTterおよび、
2名のNBE PTEeXAM合格者が在籍しております。
そろそろ試験2ヶ月前になり、
今年受験される先生の勉強にも熱が入っているようです。




     JB-POT対策資料・再現過去問集


過去数年分の過去問再現(ビデオ&文章)と、
出題されたトピックスをまとめた、
当院麻酔科のマル秘テキストです。


受験される先生方、頑張ってください!

関西支部学術集会

日本麻酔科学会・第58回関西支部学術集会が、
9月1日大阪国際交流センターにて開催されました。
当科より、口演4題、ポスター3題、
計7人の先生が発表されました。














 発表された先生、お疲れ様でした。