2018年5月11日金曜日

妊娠と麻酔薬

麻酔科勉強会 担当:O先生

「妊娠と麻酔薬」

・ミダゾラム
 ・添付文章では・・・
   ・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(慎重投与)
 ・日本麻酔科学会
   ・口唇口蓋裂や鼠経ヘルニアを持った児が生まれるとの報告があるが、
    明らかな因果関係は示されていない。
 ・胎盤移行性は低いが、胎児抑制は強い
・チオペンタール、チアミラール
 ・添付文章
  ・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
  ・帝王切開の分娩時にはできるだけ最小限に使用
 ・日本麻酔科学会
  ・動物実験レベルでの催奇形性があり使用は最小限にとどめる。
  ・胎盤移行性が高い。
  ・鎮静や循環・呼吸抑制からの回復はプロポフォールより不利
  ・喘息に注意
 ・産科領域で最も古くから使用されてきた薬であり、推奨される。
・プロポフォール
  ・添付文章
   ・妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,
    治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
    ※2018年3月より禁忌から外れた!
  ・日本麻酔科学会
   ・全身麻酔に導入・維持ともに非妊娠時と同様に使用する。
   ・臨床使用量では子宮収縮を抑制しない。
・ケタラール
  ・添付文章
   ・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
  ・日本麻酔科学会
   ・1.0mg/kgでは臨床上問題なく使用できる。
   ・1.5mg/kg以上で児の抑制(Apgar scoreの低下)、
    子宮血流の低下、子宮収縮の増大
・セボフルラン
  ・添付文章
   ・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
  ・日本麻酔科学会
   ・安全性は確立していない。
   ・ただし臨床使用上明らかな催奇形性などの有害報告もない
   ・動物レベルで学習異常、行動異常の可能性
   ・子宮弛緩作用(0.5MAC以上の使用)に考慮する。
・デスフルラン
  ・添付文書
   ・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
  ・日本麻酔科学会
   ・安全性は確立していない
   ・子宮弛緩作用がある。
     →セボフルランよりも弱い0.5MACでは同等、1.0MACで差が出始める。
   ・非喫煙者、非喘息患者では
    分娩後の麻酔にはセボフルランよりも適しているかもしれない。
・筋弛緩薬
 ・催奇形性などは報告されず。
 ・臨床利用量での胎盤移行はほぼ認めない。
   ・ロクロニウム
    ・スガマデクスの登場により第一選択の座に?
   ・スキサメトニウム
    ・素早い消失
    ・Kの上昇が腎機能障害の妊婦では問題になることがある。
    ・ごくまれに線維束性攣縮による胃内圧が上昇が誤嚥を引き起こす。
・モルヒネ
 ・長らく使用されてきた実績のある麻薬
 ・ハムスターで催奇形性あり。ラットでは報告なし。
 ・フェンタニルの登場や、効果出現の遅さ、
  遅発性呼吸抑制などのため使用される機会は減少してきている
 ・妊婦は脳内麻薬による痛みへの閾値の上昇、
  モルヒネの半減期の短縮が起こっていることに留意
・フェンタニル
 ・現時点で明らかな催奇形性などの有害性なし
 ・母乳移行性は強い。
   ・経口による吸収率の低さから授乳にも影響しにくい。
 ・モルヒネ同様に半減期が短くなっている。
   →痛み閾値の上昇から必要量が増えている。
・レミフェンタニル
 ・他の薬剤と比較し安全性が確立しているとはいいがたい。
 ・明らかな催奇形性などの有害性も報告なし
 ・胎盤移行性あり。
   →ただしその消失半減期から胎児への影響はほぼ無視できるとされる。
 ・現在、無痛分娩時のIVやIV-PCAでの使用も行われている。
・フルルビプロフェンアキセチル
 ・妊娠後期で動脈管閉鎖や収縮のリスクあり。
 ・妊娠後期での使用は避けるよう添付文章記載。
・アセトアミノフェン
 ・妊娠後期で動脈管収縮のリスクあり
 ・妊娠後期での使用は注意するよう添付文章記載
 ・フロロビプロフェンと一緒??
 ・実はFDAのリスク分類ではアスピリン以外のNSAIDsと同等のBランク
リドトリン
 ・βブロッカー
 ・5mgIVし、以降20分ごとに5-10mgIV
 ・肺水腫が5%に発生する。
   →輸液量に注意
・ニカルジピン
 ・Caブロッカー
 ・0.5mg-2mgIV
 ・乳汁移行性あり注意
・抗生剤
 ・安全と考えられる抗菌薬
   ・ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系,クリンダマイシン
 ・注意しながら使用可能な抗菌薬
   ・アミノグリコシド系,メトロニダゾール,
    ST合剤,グリコペプチド系
 ・禁忌とされる抗菌薬
   ・テトラサイクリン系,ニューキノロン系