2016年11月22日火曜日

高乳酸血症の鑑別

ICU勉強会 担当:O先生

「高乳酸血症の鑑別」

・乳酸とは
 ・ピルビン酸
  =細胞質におけるブドウ糖解糖の最終産物
    →LDHによる脱水素
    →乳酸の産生。
・乳酸の多くは、肝臓に取り込まれ代謝される。
・バイオマーカーとしての乳酸
  ・ショック状態において重症化初期の乳酸値が4mmol/L以上
    →72時間後の死亡率上昇に関連する。
  ・24時間以内に乳酸値が正常範囲内に戻れば死亡率は低下する。
・高乳酸血症(L-Lactate)の原因
  ・ピルビン酸の産生増加
    ・糖原病、褐色細胞腫、β刺激、敗血症(SIRS)
  ・ピルビン酸から乳酸への代謝シフト
    ・組織低酸素
      ・全身性痙攣、激しい運動、シバリング、重症喘息発作
       ショック、心停止、重症低酸素血症
    ・ミトコンドリアでの代謝異常
      ・敗血症(SIRS)、チアミン欠乏、DKA、Rey's 症候群
  ・薬剤性
     ・抗ウイルス薬、メトホルミン、プロピレングリコール、
      プロポフォールなど
・乳酸代謝障害
     ・低灌流、アルコール依存症、肝障害
  ・メカニズム不明
     ・特発性、悪性腫瘍、低血糖
・D-乳酸について
  ・乳酸にはL-乳酸とD-乳酸が存在。
    →両者は光学異性体の関係にある。
  ・臨床の現場で遭遇する乳酸はL-乳酸
  ・D-乳酸は細菌により産生されることが多い。
  ・稀にD-乳酸がアシドーシスの原因となる。
・D-乳酸アシドーシスを考慮するのは?
  ①短腸症候群
     ・腸管での吸収不全が背景にある患者
     ・吸収されなかったグルコースが腸内細菌による分解。
       →細菌から大量のD-乳酸が産生される。
       →これらが大腸で吸収されることで生じる。  
  ②プロピレングリコールの投与
     ・プロピレングリコール 
       →ロラゼパム、ジアゼパムの溶媒として使用される。
     ・プロピレングリコールの代謝産物の中にD-乳酸あり。
  ③ 糖尿病性ケトアシドーシス
     ・DKA患者
       →アセトンやジヒドロキシアセトンが産生される。    
       →代謝産物であるmethylglyoxalからD-乳酸産生。
・D-乳酸アシドーシスの診断
  ・臨床症状+患者背景から疑う。
    ・何らかの意識障害や構音障害が最も頻度が多い症状。
    ・検査から迅速に診断することは困難


ロボット支援下前立腺手術にて