2016年11月7日月曜日

利尿薬の使い方

ICU勉強会  担当:A先生

「利尿薬の使い方」

・そもそも利尿薬とは???
  →塩を体の外に出す薬(水利尿は例外)
・利尿薬の作用部位
  ・近医尿細管での再吸収60%
  →近位尿細管に作用する薬が最強では?
    →ヘンレ上行脚以降のNa再吸収量は
     管腔液流量に比例して増える。
    →近位尿細管でNa再吸収抑制しても
     下流で再吸収されてしまう。
    →利尿薬抵抗性の所以。
・塩分感受性と非感受性の話題。
・利尿薬が働くには??
  →そもそも尿細管に たどり着かないといけない。
  ・利尿薬はアルブミンなどと結合。
  ・その大きさから糸球体では濾過されず、
   近位尿細管細胞に取り込まれ管腔内に分泌。
  ※スピロノラクトンは唯一分泌されずに
   血管側から 集合管に入りアルドステロン受容体に作用。
・利尿薬が効かない・・・
尿細管にたどりつくまでの どこで障害が生じてもおこる 。
 ・腸管からの吸収不良
 ・腎血漿流量の低下
 ・低アルブミン血症
 ・GFR低下
 ・NSAID使用
 ・短期間作用型利尿薬投与のリバウンド
 ・・・
・利尿薬の個性について
 ・ループ利尿薬
   ・『最強』…?
   ・尿細管側からTALHにあるNKCC2を阻害。
   ・腎直血管血流量を増加
     →腎髄質の浸透圧勾配が崩れ尿濃縮を抑制する。
   ・心不全、AKIにおいて予後改善は示されていない。
  ・Braking phenomenon
      →近位尿細管より遠位に達するNaが増加し Na再吸収が増加。
    ・フロセミド朝1回投与
       →6時間は強力な利尿効果を発揮する。
       →その後18時間は減弱する。
    ・初日投与時よりも2日目以降は利尿効果が減少。
    ・連続投与で遠位尿細管の肥大やNKCC2の活性化が
     起こることが報告されている。
    →ループ利尿薬を急に中止すると浮腫が増悪する。
    ・心不全患者における利尿薬抵抗性
      ・腎不全では尿細管への分泌が低下しており
       同じ効果を得るには高用量が必要。
      ・心不全ではRAA系亢進によりNa再吸収が亢進している。
        →利尿薬の最大効果が減弱する。
     ・Braking phenomenonへの対応
    ・容量の増加
    ・投与方法の変更
      経口→iv、1回/day→2回/day、間欠投与→持続投与など。
    ・他のループ利尿薬への変更
      →長時間作用型のアゾセミド、トラセミドへ変更。
      →フロセミドと比し心不全患者におけるイベント抑制が示唆。
    ・その他の利尿薬との併用 サイアザイド,hANP等
 ・サイアザイド
  ・『利尿薬の祖』
  ・尿細管腔へ分泌され遠位尿細管のNa/Cl共輸送体を阻害。
  ・Ca拮抗薬、ACE阻害薬と比較してサイアザイドは
   心血管イベント/死亡で遜色なくコスト面でも使いやすい。
  ・単独での効果は弱め
    ・低用量で効果が飽和。
     増量しても副作用が増えるだけ。
    ・GFR<20ml/min, Cre>2.0mg/dLでは無効。
    ・Ca依存性Kチャネルを活性化し、
     血管平滑筋を弛緩させることによる降圧作用も。
 ・アルドステロン拮抗薬
  ・『付加価値』
  ・尿細管から分泌されず、集合管でアルドステロン受容体に
   拮抗しNa再吸収(ENaC)を阻害。
  ・作用発現まで3-7日程度かかるため純粋な利尿薬としてよりは
   RAA系抑制による心不全での予後改善を期待して投与するイメージ。
  ・アルダクトンを行儀よくしたのがセララ。
   セララは選択的アルドステロン受容体拮抗薬。
  ・HFrEF患者でのエビデンスが蓄積されている。
     ・EF<35%, NYHAⅢ-Ⅳを呈する患者において、
      スピロノラクトンを追加した群で死亡率が30%低下、
      再入院率が35%低下した。
     ・EF<30%, NYHAⅡを呈する患者において、
      心血管死亡/入院リスクがエプレレノンを追加した群で37%低下した。  
     ・EF<40%で心不全を合併したACS患者において、
      エプレレノンを追加した群で死亡率が15%低下した。
  ・HFpEFでの予後改善効果は不明
     ・心不全を有さないSTEMI患者において、
      エプレレノンを24時間以内に開始した群で
      心血管死亡/入院を含めた複合エンドポイントが抑制。
     ・HFpEF患者においてスピロノラクトン投与群は
      心不全による再入院を有意に抑制した。
      WRFや高K血症などの有害事象は有意に増加した。
 ・hANP
  ・『Cool Japan』
  ・ヒトの心房から出ているANPを合成したもの。
  ・日本でこれだけ使われているのはANP,BNP,CNPも
   その受容体もすべて日本人が発見したため(?)
  ・cGMP活性化を通じた心血管系に対する多様な作用。
   血管拡張、RAA系抑制、endothelin抑制、
   利尿作用、交感神経系抑制などなど。
  ・ループ利尿薬と違い利尿作用は用量依存性でない。
  ・高用量使用で低血圧による腎還流圧低下が生じないよう注意が必要。
   wet & warmで使いやすい。
  ・ATTEND registryでは急性心不全の約70%でhANPが使用されていた。
  ・Nesitirideの失われた10年
    ・ヒトBNPを合成したもの。
      →海外で積極的に使われていたが
       予後改善効果が否定され急速に下火に…。
  ・hANPの国内エビデンスは蓄積されている。
    ・日本国内65施設1216例の心筋梗塞患者において、
     低用量ハンプの3日間投与により梗塞サイズ縮小(14.7%)
     左室駆出率改善(5.1%)、慢性期左心機能改善により
     複合エンドポイントの 発生リスク低減。
    ・NYHA3−4を呈する急性心不全患者8施設49例で
     低用量ハンプの3日間投与。
     追跡期間18ヶ月での複合エンドポイント
    (総死亡+心不全による再入院)はハンプ投与群で有意に低かった。
 ・トルバプタン
  ・『待望の作用機序』
  ・腎集合管のV2受容体を阻害しAQP2発現を抑制。
  ・尿細管分泌を必要とせず腎機能に左右されない。
  ・自由水のみを排泄する点で他の利尿薬と異なる。
  ・腎髄質の高浸透圧が保たれ
   集合管での水再吸収が 活発に行われている場合に効果を発揮。
  ・ループの長期使用後に使用しても効果が出にくい。
  ・長期的な予後改善効果は不明。
   しかし・・・
     →体液貯留が多いほど術後のICUでの滞在日数が延長する。
     →トルバプタンは従来の利尿薬と全く別の機序で作用するため、
      現行薬剤に反応しない場合に効果が期待できる。
     →ちなみにADPKDに対してはトルバプタンが
      1st lineに位置づけられている。(cAMP阻害作用)
  ・注意点は重篤な肝機能障害、高Na血症。
     →必ず入院中に少量から投与開始。口渇時には飲水を。


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