2015年12月13日日曜日

筋弛緩とリバース

初期研修医勉強会  担当:I先生

「筋弛緩薬とリバース」

・中枢性筋弛緩薬
 ・GABAb受容体遮断
・末梢性筋弛緩薬
 ・脱分極性
   ・ACh受容体に結合
     →イオンチャネルを開いて終板電位を発生させる
     →脱分極を起こす
     →長時間持続されるため終末周囲筋膜の閾値が上昇して
      遮断が起こる。
   ・シナプス間隙にあるAChエステラーゼによる加水分解はされず、
    拡散して血漿中コリンエステラーゼ分解される。
   ・副作用:洞性徐脈、心室性期外収縮、悪性高熱症、高K血症
     →現在はあまり使われなくなった。
 ・非脱分極性
   ・ACh受容体に結合し、Achと競合的に働いてAchを遮断
     →筋弛緩効果を発揮。受容体に結合はするが、
      受容体を活性化させないためイオンチャネルは開かない。
・筋弛緩薬リバース
 ・ネオスチグミン
   ・コリンエステラーゼを一時的に不活化
     →アセチルコリンの分解を抑制
     →終板近辺にアセチルコリンが増加
     →神経筋接合部の伝達が促進される。
   ・アセチルコリンは神経筋接合部のみならず、
    ニコチン受容体やムスカリン受容体に結合。
     →分泌の亢進、気管支収縮、徐脈などを起こす
     →ムスカリン受容体拮抗薬であるアトロピンを併用。

 ・スガマデックス
   ・スガマデクスはロクロニウムと1:1の複合体を形成
     →ロクロニウムがニコチン性Ach受容体に結合できなくする
     →血液中の非結合ロクロニウム濃度が急激に減少
     →濃度勾配に基づいて神経筋接合部や
      末梢Compartmentからロクロニウムの急激な拡散が生じる。
     →ロクロニウムが終板のニコチン性Ach受容体から解離し、
      筋弛緩効果から迅速に回復する
・リバース使用法
 ・ネオスチグミン
   ・TOF 4以上を確認
   ・ネオスチグミン:アトロピン=2:1
 ・スガマデクス
   ・浅い筋弛緩状態(TOF T2確認)→2mg/kg
   ・深い筋弛緩状態(TOF 0, PTC 1-2回単収縮確認)→4mg/kg
・再筋弛緩
 →拮抗後の筋弛緩作用の再出現。
  麻酔終了後に筋弛緩効果が再出現すること。
・ネオスチグミンに影響を与える因子
   ・ネオスチグミンは腎排泄
     →腎不全患者では半減期が約2倍に延長するため、
      再筋弛緩の可能性は少ないと考えられる。
   ・呼吸性アシドーシス、代謝性アルカローシス存在下では、
    ネオスチグミン濃度の神経筋接合部と血中との平衡状態が変化し、
    ネオスチグミン作用が減弱すると考えられているが、詳細不明。
   ・重症筋無力症
     →治療にコリンエステラーゼ阻害薬を使用。
     →ネオスチグミンの投与で筋弛緩拮抗を行う場合は、
      コリン作動性クリーゼの危険性あり。
     →筋弛緩状態をモニタリングすべし。
・硫酸Mgの前投与はスガマデクスによるリバース時間に影響なし
・筋弛緩モニターなしでスガマデクス投与→PACUでのTOFR<0.9
  →1.7%-9.4%(95%CI)
・スガマデクス投与でも筋弛緩が残存する可能性あり
  →モニタリング
・スガマデクスに関する論文を2本読んできました。紹介。