「麻酔科EBM勉強会」 担当;W先生
「術後認知機能障害:POCD」
・POCD(Postoperative cognitive dysfunction)
・術後に注意力・実行機能・記憶などが低下
・せん妄・認知症とは異なる
・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載がない
・明確な定義がなく診断基準がバラバラ
・診断には術前術後の神経心理学検査が必要
・多くは可逆的で大半は治癒
・厳しい診断基準
・認知機能の任意の2領域が-2SD以下
・複合認知機能スコアが-2SD以下
・やや緩い診断基準:多
・認知機能の任意の1領域が-1SD以下
・複合認知機能スコアが-1SD以下
・術前術後検査の信頼性、検査時の意欲などにより
認知機能スコアの解釈が難しい
→ある研究では33%の患者がPOCDと診断されてしまった
・POCDの診断
・reliable change index
→学習効果を除外するため、
対照群の平均学習効果を補正因子として差し引く
・せん妄とは
・高齢者に起こる急性の認知機能低下
・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載あり
・覚醒レベル・注意力・論理的思考などの障害
・急性発症、日内変動あり
・非術後のせん妄は、中等度認知機能障害者や
早期認知症患者で起こりやすく、
全身状態増悪や死亡率増加に関係
・非術後のせん妄
→中等度認知機能障害者や早期認知症患者で起こりやすく、
全身状態増悪や死亡率増加に関係
→術後せん妄は術後早期の65歳以上の患者に起こりやすく、
術後1〜2週間以内に改善
・術後せん妄とPOCDの関係、
→エビデンスがちらほら
・認知症とは
・脳機能の不可逆的&退行性変化
ex)Alzheimer病、Lewy小体型、脳血管性、Huntington
・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載あり
・記憶、性格変化、抑うつ、判断力低下、睡眠障害、ADL低下
→家族認識☓、寝たきり
・認知症とPOCDの関係性に結論は出ていないが…
→入院を繰り返すと認知機能↓
・特定の全身麻酔薬は病理学的変化をもたらす可能性
ex)イソフルラン
→脳内でβ-アミロイドやリン酸タウ蛋白を産生促進
→認知症発症or進行を加速?
・手術は神経系の炎症を促進
→認知症発症?
・手術&麻酔と認知症の関係は推測
→大半の研究で否定されている
・POCDの予防と治療
・低血圧・低酸素・低血糖・代謝異常を回避
→術中は十分な脳灌流を保つ!
・ICU入室者はPOCDのハイリスク!
・脳の臓器不全:SIRS、MODSの一症状
・他臓器不全の予防・治療が重要
ex)AKI→原因検索・治療、透析など
・手術合併症の回避
ex)出血、感染
・多面的治療
・疼痛・炎症への多面的アプローチ
・周術期の睡眠障害を最小に
・身体的・精神的活動を活性化:リハビリ
・いろいろな報告
・心臓手術を受けた患者の41%が
5年後も認知機能が低下していた
NEJM 2001; 344(6): 395-402
→認知機能低下は心臓手術の主要合併症だ!
→おそらくCPBが原因だ!
→off-pump手術の登場
・非心臓大手術を受けた高齢者の46%が
1年後も認知機能が低下していた
Anesthesiology 2010; 112(4): 852-9
→心臓・非心臓に限らず、約半数の患者にPOCDが起こる!
→International Study of POCD
・1994年設立、インパクト大
・非心臓手術でのPOCDの特徴を調査
・心臓手術、特にCPBを用いた術後は、重度のPOCDが持続する。
・POCDの遺伝的素因
→Alzheimer病などの変性疾患とoverlapしている?
・アポリポ蛋白E遺伝子のエプシロンアレル
→ADのリスク因子、脳損傷後の予後不良因子
→加齢での認知機能低下を加速
・POCDとアポリポ蛋白E遺伝子との関連は示されていない
→POCDの遺伝的素因は存在すると予想
→断基準が曖昧なため調査は難しい