麻酔科EBM勉強会 担当:K先生
「周術期βブロッカー」
・β受容体
・主に心筋に存在するβ1受容体
・平滑筋に存在するβ2受容体
・脂肪細胞に存在するβ3受容体
・βブロッカーについて
・β1選択性
→非選択型β遮断薬は、β2受容体も阻害する
→気管支喘息患者には禁忌となる。
・脂溶性or水溶性
→脂溶性のβ遮断薬は肝代謝
→作用時間が短い
→水溶性のβ遮断薬は腎排泄
→作用時間が長い。
・ISA(内因性β刺激作用)
→交感神経が興奮しているときはβを抑制
→興奮していないときはβをわずかに刺激する。
・ISA+は心拍出量を減少させすぎない
→高齢者や徐脈の患者さんに適している。
・ISA-は心拍出量を減少させる
→狭心症や頻脈の患者さんに適している。
・心筋梗塞の再発や虚血性疾患を防止
・心不全の予後を改善する。
・降圧薬としてのβ遮断薬
・臨床応用され半世紀以上経過する。
・高血圧治療ガイドライン(JSH2009)
Ca拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬と並ぶ高血圧の第一選択薬
・心臓血管死や心血管系イベントの観点からは・・・
・降圧薬の種類間で差異を認めない。
・むしろ目標血圧までの積極的な降圧の重要性を強調
・メタ解析
→降圧薬の種類に有意差なし。
→降圧の程度と心血管イベントのオッズ比との間に
逆相関関係が認められると報告
・高血圧治療ガイドライン(GL)2013改訂
→第一選択薬からβ遮断薬を外し、
→Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の4クラスとした
・抗不整脈薬としてのβ遮断薬
・術後心房細動
・心臓手術
→CABG後に最も多く(30%)発症する。
→弁置換術では30-40%、複合手術では40-50%で発症 Almassi GH et al: Ann Surg.1997;226 :501-11
・肺手術
→葉切除で10-20%,全摘術では40%の症例で発症する
・術後心房細動は術後2日目にもっとも多く発症
・その40%が再発
・発症すると・・・
・在院日数の延長
・脳梗塞発症率は3倍
・周術期死亡率も悪化
・β遮断薬の効果
・頻脈性頻脈,上室性不整脈,
さらにリドカイン抵抗性の心室細動に対しても有効との報告。
・アミオダロンとともに術後心房細動予防効果は確立。
・周術期心房細動発症時の治療にも使用される.
・ACC/AHA/ESC心房細動治療ガイドライン
→Class Ⅰで推奨(LOE A),
・ACC/AHA冠動脈バイパスガイドライン
→Class Ⅰで勧告(LOE B),
・ACC/AHA非心臓手術のための
周術期心血管系評価・管理ガイドライン
→Class Ⅰで推奨(LOE B)
・虚血性心疾患におけるβ遮断薬
・陰性変力作用による心収縮力抑制
・陰性変時作用による心拍数低下
・心筋酸素消費量の低下
・拡張時間延長による拡張機能の改善
・交感神経・レニン抑制による血管拡張
・β遮断薬,とくにカルベジロールは抗酸化作用が強い。
→ アポトーシス抑制にも関与する
・β遮断薬の有効性のメカニズムは複合的
→単一機能で説明することができない
・ACC/AHAガイドライン~非心臓手術の周術期β遮断薬
・服用中のβ遮断薬は継続(ClassⅠ; LOE C)
・血管手術・高リスク手術
→β遮断薬の投与を推奨(ClassⅡa; LOE B)
・新たに徐脈・低血圧に注意して使用
・低リスク症例に対する使用は明らかでない(ClassⅡb;LOE B)
・周術期に新たに開始する高用量β遮断薬の投与は有害
(ClassⅢ;LOE B)