麻酔科勉強会 担当:O先生
「妊娠と麻酔薬」
・ミダゾラム
・添付文章では・・・
・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(慎重投与)
・日本麻酔科学会
・口唇口蓋裂や鼠経ヘルニアを持った児が生まれるとの報告があるが、
明らかな因果関係は示されていない。
・胎盤移行性は低いが、胎児抑制は強い
・チオペンタール、チアミラール
・添付文章
・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
・帝王切開の分娩時にはできるだけ最小限に使用
・日本麻酔科学会
・動物実験レベルでの催奇形性があり使用は最小限にとどめる。
・胎盤移行性が高い。
・鎮静や循環・呼吸抑制からの回復はプロポフォールより不利
・喘息に注意
・産科領域で最も古くから使用されてきた薬であり、推奨される。
・プロポフォール
・添付文章
・妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
※2018年3月より禁忌から外れた!
・日本麻酔科学会
・全身麻酔に導入・維持ともに非妊娠時と同様に使用する。
・臨床使用量では子宮収縮を抑制しない。
・ケタラール
・添付文章
・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
・日本麻酔科学会
・1.0mg/kgでは臨床上問題なく使用できる。
・1.5mg/kg以上で児の抑制(Apgar scoreの低下)、
子宮血流の低下、子宮収縮の増大
・セボフルラン
・添付文章
・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
・日本麻酔科学会
・安全性は確立していない。
・ただし臨床使用上明らかな催奇形性などの有害報告もない
・動物レベルで学習異常、行動異常の可能性
・子宮弛緩作用(0.5MAC以上の使用)に考慮する。
・デスフルラン
・添付文書
・妊娠またはその可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
・日本麻酔科学会
・安全性は確立していない
・子宮弛緩作用がある。
→セボフルランよりも弱い0.5MACでは同等、1.0MACで差が出始める。
・非喫煙者、非喘息患者では
分娩後の麻酔にはセボフルランよりも適しているかもしれない。
・筋弛緩薬
・催奇形性などは報告されず。
・臨床利用量での胎盤移行はほぼ認めない。
・ロクロニウム
・スガマデクスの登場により第一選択の座に?
・スキサメトニウム
・素早い消失
・Kの上昇が腎機能障害の妊婦では問題になることがある。
・ごくまれに線維束性攣縮による胃内圧が上昇が誤嚥を引き起こす。
・モルヒネ
・長らく使用されてきた実績のある麻薬
・ハムスターで催奇形性あり。ラットでは報告なし。
・フェンタニルの登場や、効果出現の遅さ、
遅発性呼吸抑制などのため使用される機会は減少してきている
・妊婦は脳内麻薬による痛みへの閾値の上昇、
モルヒネの半減期の短縮が起こっていることに留意
・フェンタニル
・現時点で明らかな催奇形性などの有害性なし
・母乳移行性は強い。
・経口による吸収率の低さから授乳にも影響しにくい。
・モルヒネ同様に半減期が短くなっている。
→痛み閾値の上昇から必要量が増えている。
・レミフェンタニル
・他の薬剤と比較し安全性が確立しているとはいいがたい。
・明らかな催奇形性などの有害性も報告なし
・胎盤移行性あり。
→ただしその消失半減期から胎児への影響はほぼ無視できるとされる。
・現在、無痛分娩時のIVやIV-PCAでの使用も行われている。
・フルルビプロフェンアキセチル
・妊娠後期で動脈管閉鎖や収縮のリスクあり。
・妊娠後期での使用は避けるよう添付文章記載。
・アセトアミノフェン
・妊娠後期で動脈管収縮のリスクあり
・妊娠後期での使用は注意するよう添付文章記載
・フロロビプロフェンと一緒??
・実はFDAのリスク分類ではアスピリン以外のNSAIDsと同等のBランク
リドトリン
・βブロッカー
・5mgIVし、以降20分ごとに5-10mgIV
・肺水腫が5%に発生する。
→輸液量に注意
・ニカルジピン
・Caブロッカー
・0.5mg-2mgIV
・乳汁移行性あり注意
・抗生剤
・安全と考えられる抗菌薬
・ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系,クリンダマイシン
・注意しながら使用可能な抗菌薬
・アミノグリコシド系,メトロニダゾール,
ST合剤,グリコペプチド系
・禁忌とされる抗菌薬
・テトラサイクリン系,ニューキノロン系
2018年5月10日木曜日
妊娠時における生理的変化
麻酔科勉強会 担当:O先生
「妊娠時における生理的変化」
・妊娠週数について
・妊婦の正期産は37-41週
・周産期の非産科手術については3半期に分けて考える
・第1三半期(妊娠0週0日~妊娠13週6日)
・第2三半期(妊娠14週0日~妊娠27週6日)
・第3三半期(妊娠28週0日~)
・気道について
・妊娠早期より毛細血管は拡張
→上気道粘膜が浮腫状になる。
・機械操作による易出血性(喉頭鏡操作や経鼻挿管は注意)
・Mallampati分類は非妊娠時より悪化する。
(12wに対して38wでMaallamapatiⅣは34%増加)
・Mallamapati分類は40%の妊婦で分娩進行時も悪化
→妊婦の気道系は導入前に再評価。
・仮声帯部分の浮腫で声門開口部が狭くなる。
→挿管時、非妊娠時より細いチューブも考慮
→difficult airway management
・呼吸器系について
・換気量&血液ガス
・プロゲステロン作用によりCO2に対する呼吸中枢の感受性上昇。
・CO2の産生増加に対して、呼吸回数、1回換気量は上昇する。
→正期妊婦の呼吸回数は15%up、1回換気量は40%up
・分時換気量は50%上昇する
・PaCO2は10mmHgほど低下、呼吸性アルカローシスに傾く。
・それに対してHCO3-は代償性に20mEq/lまで低下
・アルカローシスの進行
→母体の意識消失、低換気・低酸素血症
・子宮血管の収縮による子宮胎盤血流の低下
・母体の酸素解離曲線の左方移動による胎児の酸素供給量の低下
→術後の鎮痛不十分による疼痛には特に気をつける。
・分娩中には分時換気量が3倍にまで増加する。
・肺気量
・肥大した子宮が横隔膜を頭位に挙上
→機能的残気量(FRC)は立位で20%、仰臥位で30%減少
・FRCがclosing capacity以下になると
安静呼気時でも換気血流比が低下し低酸素に
・妊婦は妊娠正期で酸素消費量が60%上昇
・FRCの低下によって無呼吸時、急速に低酸素血症に
・循環器系
・心拍出量
・心拍出量(CO)=1回拍出量(SV)×心拍数(HR)
・妊娠5-32wにかけてCOは増大していく。
・妊娠5-8週までは主にHRが増大による(13wで15%↑)。
・以降はSVが増大していく(24wで30%↑)
・正期でCOは40~50%up (分娩時はさらにup)
※非妊娠時まで戻るには分娩後12-24wかかる。
・血圧
・プロゲステロンやプロスタサイクリン作用による体血管拡張作用
・低圧系血管床(胎盤絨毛管腔)の発達
→体血管抵抗が20%下がる。
→この結果、CO↑にも関わらず平均血圧は15mmHg低下する。
→収縮期血圧より拡張期血圧の低下が大きいため脈圧は増大
・大動脈下大静脈圧迫症候群(仰臥位低血圧症候群)
・仰臥位で肥大した子宮が下大静脈を圧排
→心臓への静脈還流が低下
→心拍出量が低下
・妊娠20w以降は注意
・子宮胎盤血流も20%低下
・母体の交感神経の緊張の抑制、子宮静脈圧の上昇で血流低下
・腹部大動脈の圧迫も原因になることも(上肢血圧は正常)
・妊婦の右腰下に枕、手術台を左に傾ける、子宮を左方に押して対応
・妊婦のCPA時、胎児心拍の低下時、最も簡便にできる蘇生法の1つ
・血液・凝固系
・血液量
・血液量(8-16wは↓)、血漿量共にup→循環血液量up
・エストロゲン、プロゲステロンがRA系を活性化
→Na貯留、水分貯留で循環血液量up
・正期で血液量は20%up、血漿量は35-45%up
→このギャップのため、正期妊婦は相対的貧血になる。
・心拍出量増加、酸素解離曲線の右方移動で酸素運搬能維持
→このギャップで血液粘性が20%↓
→子宮胎盤循環の血管床開通性の維持
・凝固系
・出産時の出血の備えるため、凝固系はⅪ、XⅢ以外すべて亢進
・生理的抗凝固因子であるATⅢ、抗Xa因子は活性低下
・血小板は寿命のが短縮して軽度減少
→結果としてDVT、PEのリスクが上昇する。
・消化器系
・肥大した子宮が胃や腸を圧迫する。
→胃内圧が上昇
・下部食道が胸腔内に移動(LES圧の低下)
・プロゲステロンもLES圧を低下させる。
・LES圧は妊娠第2三半期から低下
・胃内容物の排泄時間は陣痛開始までは延長しない。
・原則として第2三半期以降はフルストマックとして対応
・術前投薬としてH2ブロッカーを推奨する参考書も
・腎臓
・妊娠早期より腎血流、糸球体濾過率は上昇する。
・第1三半期より50%上昇
・BUN,Creは低下するのが正常
→「正常値」を示す場合は腎機能障害が疑われる。
・右の尿管が子宮に圧迫されて通過障害が起きやすい。
→尿路感染症に注意が必要
・Naは再吸収されやすい一方、糖は再吸収されにくい。
・神経系
・中枢神経系
・MAC(吸入麻酔薬の最小肺胞濃度)は低下する。
→プロゲステロンの鎮静作用?
・ただしMACの低下が鎮静作用の亢進を意味していないかもしれない。
・BISは必要と考えられる。
・導入時のチオペンタールの必要量は18%~35%減少
・導入時のプロポフォールの必要量は非妊娠時と変わらない。
・揮発麻酔薬は子宮筋弛緩作用がある。
・静脈麻酔薬は上記の作用がない。
・末梢神経
・脊髄クモ膜下麻酔、硬膜外麻酔において局所麻酔薬の必要量が減少
・子宮の下大静脈の圧排
→側副路として硬膜外腔の静脈叢の拡張
→硬膜外腔の狭小化&脊髄クモ膜下腔の脊髄液量の減少
・プロゲステロンまたはその代謝物による感受性の亢進?
・筋骨格系
・リラキシンによって恥骨結合や靭帯が軟化・弛緩
→硬膜外麻酔や脊髄麻酔時に注意
・脊髄の前彎が増大し、後方に反り返る。
→脊髄の棘突起管腔が狭くなる
・骨盤が広がり、また脊柱彎曲がTh6~7で最低部になる。
→側臥位で頭低位になりやすい。
・乳房の肥大、胸壁の前突
→喉頭鏡の操作を困難に
「妊娠時における生理的変化」
・妊娠週数について
・妊婦の正期産は37-41週
・周産期の非産科手術については3半期に分けて考える
・第1三半期(妊娠0週0日~妊娠13週6日)
・第2三半期(妊娠14週0日~妊娠27週6日)
・第3三半期(妊娠28週0日~)
・気道について
・妊娠早期より毛細血管は拡張
→上気道粘膜が浮腫状になる。
・機械操作による易出血性(喉頭鏡操作や経鼻挿管は注意)
・Mallampati分類は非妊娠時より悪化する。
(12wに対して38wでMaallamapatiⅣは34%増加)
・Mallamapati分類は40%の妊婦で分娩進行時も悪化
→妊婦の気道系は導入前に再評価。
・仮声帯部分の浮腫で声門開口部が狭くなる。
→挿管時、非妊娠時より細いチューブも考慮
→difficult airway management
・呼吸器系について
・換気量&血液ガス
・プロゲステロン作用によりCO2に対する呼吸中枢の感受性上昇。
・CO2の産生増加に対して、呼吸回数、1回換気量は上昇する。
→正期妊婦の呼吸回数は15%up、1回換気量は40%up
・分時換気量は50%上昇する
・PaCO2は10mmHgほど低下、呼吸性アルカローシスに傾く。
・それに対してHCO3-は代償性に20mEq/lまで低下
・アルカローシスの進行
→母体の意識消失、低換気・低酸素血症
・子宮血管の収縮による子宮胎盤血流の低下
・母体の酸素解離曲線の左方移動による胎児の酸素供給量の低下
→術後の鎮痛不十分による疼痛には特に気をつける。
・分娩中には分時換気量が3倍にまで増加する。
・肺気量
・肥大した子宮が横隔膜を頭位に挙上
→機能的残気量(FRC)は立位で20%、仰臥位で30%減少
・FRCがclosing capacity以下になると
安静呼気時でも換気血流比が低下し低酸素に
・妊婦は妊娠正期で酸素消費量が60%上昇
・FRCの低下によって無呼吸時、急速に低酸素血症に
・循環器系
・心拍出量
・心拍出量(CO)=1回拍出量(SV)×心拍数(HR)
・妊娠5-32wにかけてCOは増大していく。
・妊娠5-8週までは主にHRが増大による(13wで15%↑)。
・以降はSVが増大していく(24wで30%↑)
・正期でCOは40~50%up (分娩時はさらにup)
※非妊娠時まで戻るには分娩後12-24wかかる。
・血圧
・プロゲステロンやプロスタサイクリン作用による体血管拡張作用
・低圧系血管床(胎盤絨毛管腔)の発達
→体血管抵抗が20%下がる。
→この結果、CO↑にも関わらず平均血圧は15mmHg低下する。
→収縮期血圧より拡張期血圧の低下が大きいため脈圧は増大
・大動脈下大静脈圧迫症候群(仰臥位低血圧症候群)
・仰臥位で肥大した子宮が下大静脈を圧排
→心臓への静脈還流が低下
→心拍出量が低下
・妊娠20w以降は注意
・子宮胎盤血流も20%低下
・母体の交感神経の緊張の抑制、子宮静脈圧の上昇で血流低下
・腹部大動脈の圧迫も原因になることも(上肢血圧は正常)
・妊婦の右腰下に枕、手術台を左に傾ける、子宮を左方に押して対応
・妊婦のCPA時、胎児心拍の低下時、最も簡便にできる蘇生法の1つ
・血液・凝固系
・血液量
・血液量(8-16wは↓)、血漿量共にup→循環血液量up
・エストロゲン、プロゲステロンがRA系を活性化
→Na貯留、水分貯留で循環血液量up
・正期で血液量は20%up、血漿量は35-45%up
→このギャップのため、正期妊婦は相対的貧血になる。
・心拍出量増加、酸素解離曲線の右方移動で酸素運搬能維持
→このギャップで血液粘性が20%↓
→子宮胎盤循環の血管床開通性の維持
・凝固系
・出産時の出血の備えるため、凝固系はⅪ、XⅢ以外すべて亢進
・生理的抗凝固因子であるATⅢ、抗Xa因子は活性低下
・血小板は寿命のが短縮して軽度減少
→結果としてDVT、PEのリスクが上昇する。
・消化器系
・肥大した子宮が胃や腸を圧迫する。
→胃内圧が上昇
・下部食道が胸腔内に移動(LES圧の低下)
・プロゲステロンもLES圧を低下させる。
・LES圧は妊娠第2三半期から低下
・胃内容物の排泄時間は陣痛開始までは延長しない。
・原則として第2三半期以降はフルストマックとして対応
・術前投薬としてH2ブロッカーを推奨する参考書も
・腎臓
・妊娠早期より腎血流、糸球体濾過率は上昇する。
・第1三半期より50%上昇
・BUN,Creは低下するのが正常
→「正常値」を示す場合は腎機能障害が疑われる。
・右の尿管が子宮に圧迫されて通過障害が起きやすい。
→尿路感染症に注意が必要
・Naは再吸収されやすい一方、糖は再吸収されにくい。
・神経系
・中枢神経系
・MAC(吸入麻酔薬の最小肺胞濃度)は低下する。
→プロゲステロンの鎮静作用?
・ただしMACの低下が鎮静作用の亢進を意味していないかもしれない。
・BISは必要と考えられる。
・導入時のチオペンタールの必要量は18%~35%減少
・導入時のプロポフォールの必要量は非妊娠時と変わらない。
・揮発麻酔薬は子宮筋弛緩作用がある。
・静脈麻酔薬は上記の作用がない。
・末梢神経
・脊髄クモ膜下麻酔、硬膜外麻酔において局所麻酔薬の必要量が減少
・子宮の下大静脈の圧排
→側副路として硬膜外腔の静脈叢の拡張
→硬膜外腔の狭小化&脊髄クモ膜下腔の脊髄液量の減少
・プロゲステロンまたはその代謝物による感受性の亢進?
・筋骨格系
・リラキシンによって恥骨結合や靭帯が軟化・弛緩
→硬膜外麻酔や脊髄麻酔時に注意
・脊髄の前彎が増大し、後方に反り返る。
→脊髄の棘突起管腔が狭くなる
・骨盤が広がり、また脊柱彎曲がTh6~7で最低部になる。
→側臥位で頭低位になりやすい。
・乳房の肥大、胸壁の前突
→喉頭鏡の操作を困難に
2018年5月9日水曜日
肺動脈カテーテル(PAC)
麻酔科勉強会 担当:O先生
「肺動脈カテーテル(PAC)」
・PACから得られる情報
・中心静脈圧
・(右房圧)
・(右室圧)
・肺動脈圧
・肺動脈楔入圧(PAOP, PAWP, PCWP)
・心拍出量(心係数)
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
・測定エラーの確認
・ゼロ点:仰臥位(または半坐位30度)
・‘fast flush’test(Underdamping, Overdamping)
→圧ラインをflushしたあとの反応性をみることで信頼性を評価
・正常では、四角形の波形を描き、垂直方向に落ちたあと、
1回上昇してからベースラインに戻る。
・上下せずにそのままベースラインにもどる波形:Overdamping波形
→カテーテル内の気泡、カテーテルのキンク、カテーテル内の血餅、
フラッシュバッグ(へパ生)の量が少ない、
フラッシュバッグにかかる圧が不十分、など。
→equipmentを確認する必要あり。脈圧が低く表示される。
・何度も上下してからベースラインに戻っていく波形:Underdamping波形
→カテーテルが長すぎる、三活がはさまっている、
頻脈、心拍出量が大きいなど。
→この場合収縮期血圧が高く見積もられて表示される。
・肺動脈圧波形
・右心拍出にひきつづく立ち上がりの成分(percussion wave)
→Percussion waveの立ち上がり角度は右室の収縮性を反映。
・tidal wave
・肺動脈弁閉鎖と同時にみられるdicrotic notch(重複切痕)
・dicrotic waveは肺動脈弁閉鎖後の肺動脈収縮に伴って形成されるとも。
→Dicrotic waveは1回右室駆出量に対する肺血管抵抗を反映する。
・肺動脈楔入圧波形
・LA圧を反映
・A波とv波からなる。
・A波はLAの収縮に伴って生じる(拡張期)。
・V波はM弁が閉鎖している状態で、PVからLAへ血液が充満し、
LA内圧が上昇することで形成される(収縮期)。
・Afではa波は消失。
・肺動脈楔入圧波形の異常
・MRの場合
・MRではPAWPでV波増高。
・肺動脈圧波形は通常の順行性の波形に、
逆行性のPAWP(LAP)波形を重ねたような波形になる。
・PAWPとPAPの区別がつきにくいので要注意。
①PAPの方が立ちあがりが速く急峻。
②PAPは正常なnotchではないものの谷ができる。
・Wedgeしていることに気づかずバルーンを膨らませると血管損傷。
・MSの場合
・MSではLA収縮に伴うa波増高(Afなのでa波はない)。
・拡張期にLAからLVに流れにくいのでV波の下降はゆるやか。
・左室コンプライアンスの低下
・a波は増高する。
・拡張期のLAからLVへの血液の流れは悪くないので、
V波の下降が急峻であるのがMSとの違い。
・Overwedging
・過剰楔入:カテーテル先端が血管壁に当たる。
・拍動性の消失、圧の上昇
・カテーテルが遠位に移動したりバルーンが偏って拡張すると起こる。
・血管損傷や肺梗塞の原因となるので、
速やかにカテーテルを後退させる必要がある。
・カテーテルの動揺
・RVから駆出される血液によってカテーテルが動揺することがある。
・この場合、R波に一致してアーチファクトとしてスパイクが生じる。
・拡張期圧が異常に低く出る。
・数cm抜き差しすると改善。
・左心系の前負荷について
・前負荷
→細胞レベルでは心筋細胞の静止長を長くする力
→静脈灌流により心室に加わる力
・Frank-Starlingの法則に従い、
静脈灌流が増えると心筋が伸長されて収縮力が増強する。
・前負荷は拡張末期容量に相当
・容量の代わりに圧を測定することで前負荷の指標とする。
・ただし容量変化に対する圧の変化はコンプライアンスの影響を強く受ける。
→心臓の病態次第では必ずしもこのルールに則らない。
・左室拡張末期圧
・PAC留置下では肺動脈楔入圧がEDLVPに相当する。
→M弁に異常がない場合、拡張終期において
肺動脈から左室にかけて障害物がないためこの関係は成り立つ。
・PAP-LAP=肺血流量×肺血管抵抗
・Wedgeしているときは肺血流量=0 PAP=LAP
・ただし・・・
・Wedge pressure =LVEDPとなるのは肺毛細管圧>肺胞圧の時。
・そうでないときはPAWP=肺胞圧となる。
・この肺毛細管圧>肺胞圧となる領域を第3ゾーンと呼ぶ。
・第3ゾーンにカテーテルを置くには・・・
→PAC先端がLAの高さより重力方向に入れることになる。
・ほとんどの場合PACは自然に下側の肺野領域に入る。
・楔入圧が呼吸性変動している場合
→肺胞圧が毛細管圧より高い部位にPAC先端があることを示す。
→肺胞圧が陽圧のときに楔入圧を測定すると肺胞圧を示してしまうため、
肺胞圧が大気圧と最も近くなる呼気終末で楔入圧を測定することにより、
LVEDPを推定することができる。
・BA、肺うっ血などで呼気相の気道内圧が上昇する時
=内因性PEEPがかかるとき
→PAWPも上昇するので要注意。
・拡張期PAP=LVEDP
・拡張末期において左室は肺動脈とつながる。
・拡張期肺動脈圧はEDLVPに近似される。
「肺動脈カテーテル(PAC)」
・PACから得られる情報
・中心静脈圧
・(右房圧)
・(右室圧)
・肺動脈圧
・肺動脈楔入圧(PAOP, PAWP, PCWP)
・心拍出量(心係数)
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
・測定エラーの確認
・ゼロ点:仰臥位(または半坐位30度)
・‘fast flush’test(Underdamping, Overdamping)
→圧ラインをflushしたあとの反応性をみることで信頼性を評価
・正常では、四角形の波形を描き、垂直方向に落ちたあと、
1回上昇してからベースラインに戻る。
・上下せずにそのままベースラインにもどる波形:Overdamping波形
→カテーテル内の気泡、カテーテルのキンク、カテーテル内の血餅、
フラッシュバッグ(へパ生)の量が少ない、
フラッシュバッグにかかる圧が不十分、など。
→equipmentを確認する必要あり。脈圧が低く表示される。
・何度も上下してからベースラインに戻っていく波形:Underdamping波形
→カテーテルが長すぎる、三活がはさまっている、
頻脈、心拍出量が大きいなど。
→この場合収縮期血圧が高く見積もられて表示される。
・肺動脈圧波形
・右心拍出にひきつづく立ち上がりの成分(percussion wave)
→Percussion waveの立ち上がり角度は右室の収縮性を反映。
・tidal wave
・肺動脈弁閉鎖と同時にみられるdicrotic notch(重複切痕)
・dicrotic waveは肺動脈弁閉鎖後の肺動脈収縮に伴って形成されるとも。
→Dicrotic waveは1回右室駆出量に対する肺血管抵抗を反映する。
・肺動脈楔入圧波形
・LA圧を反映
・A波とv波からなる。
・A波はLAの収縮に伴って生じる(拡張期)。
・V波はM弁が閉鎖している状態で、PVからLAへ血液が充満し、
LA内圧が上昇することで形成される(収縮期)。
・Afではa波は消失。
・肺動脈楔入圧波形の異常
・MRの場合
・MRではPAWPでV波増高。
・肺動脈圧波形は通常の順行性の波形に、
逆行性のPAWP(LAP)波形を重ねたような波形になる。
・PAWPとPAPの区別がつきにくいので要注意。
①PAPの方が立ちあがりが速く急峻。
②PAPは正常なnotchではないものの谷ができる。
・Wedgeしていることに気づかずバルーンを膨らませると血管損傷。
・MSの場合
・MSではLA収縮に伴うa波増高(Afなのでa波はない)。
・拡張期にLAからLVに流れにくいのでV波の下降はゆるやか。
・左室コンプライアンスの低下
・a波は増高する。
・拡張期のLAからLVへの血液の流れは悪くないので、
V波の下降が急峻であるのがMSとの違い。
・Overwedging
・過剰楔入:カテーテル先端が血管壁に当たる。
・拍動性の消失、圧の上昇
・カテーテルが遠位に移動したりバルーンが偏って拡張すると起こる。
・血管損傷や肺梗塞の原因となるので、
速やかにカテーテルを後退させる必要がある。
・カテーテルの動揺
・RVから駆出される血液によってカテーテルが動揺することがある。
・この場合、R波に一致してアーチファクトとしてスパイクが生じる。
・拡張期圧が異常に低く出る。
・数cm抜き差しすると改善。
・左心系の前負荷について
・前負荷
→細胞レベルでは心筋細胞の静止長を長くする力
→静脈灌流により心室に加わる力
・Frank-Starlingの法則に従い、
静脈灌流が増えると心筋が伸長されて収縮力が増強する。
・前負荷は拡張末期容量に相当
・容量の代わりに圧を測定することで前負荷の指標とする。
・ただし容量変化に対する圧の変化はコンプライアンスの影響を強く受ける。
→心臓の病態次第では必ずしもこのルールに則らない。
・左室拡張末期圧
・PAC留置下では肺動脈楔入圧がEDLVPに相当する。
→M弁に異常がない場合、拡張終期において
肺動脈から左室にかけて障害物がないためこの関係は成り立つ。
・PAP-LAP=肺血流量×肺血管抵抗
・Wedgeしているときは肺血流量=0 PAP=LAP
・ただし・・・
・Wedge pressure =LVEDPとなるのは肺毛細管圧>肺胞圧の時。
・そうでないときはPAWP=肺胞圧となる。
・この肺毛細管圧>肺胞圧となる領域を第3ゾーンと呼ぶ。
・第3ゾーンにカテーテルを置くには・・・
→PAC先端がLAの高さより重力方向に入れることになる。
・ほとんどの場合PACは自然に下側の肺野領域に入る。
・楔入圧が呼吸性変動している場合
→肺胞圧が毛細管圧より高い部位にPAC先端があることを示す。
→肺胞圧が陽圧のときに楔入圧を測定すると肺胞圧を示してしまうため、
肺胞圧が大気圧と最も近くなる呼気終末で楔入圧を測定することにより、
LVEDPを推定することができる。
・BA、肺うっ血などで呼気相の気道内圧が上昇する時
=内因性PEEPがかかるとき
→PAWPも上昇するので要注意。
・拡張期PAP=LVEDP
・拡張末期において左室は肺動脈とつながる。
・拡張期肺動脈圧はEDLVPに近似される。
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