「酸素化戦略」
・人間には約60兆個の細胞が存在
・各細胞は食物から得られるADPをATPに変換し、ATPをエネルギーとして全身で利用
・その際に酸素を利用することで、効率的にATPを産生
・ADP1単位から好気性代謝でATP36単位、嫌気性代謝で2単位生成
・輸液療法も輸血療法も酸素化療法(人工呼吸管理)
→最大の目標は『全身の酸素化』
・酸素供給
・酸素需要
・酸素利用率
・血液中の酸素
・酸素を運搬しているのはHb
・SO2=酸素Hb/総Hb
・酸素解離曲線の存在
・溶存酸素(ml/dL)=0.03(ml/L)×0.1×PO2(mmHg)
・動脈血酸素含有量(CaO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SaO2+0.003×PaO2;正常値:20
・静脈血酸素含有量(CvO2;ml/dL)
=1.34×Hb×SvO2+0.003×PvO2;正常値15
・溶存酸素は非常に小さい値なので(<0.3ml)
→簡易酸素含量=1.34×Hb×SO2
・酸素を細胞内に取り入れる最大の組織は肺
・肺は肺胞/肺血管を通じて、CO2とO2を交換
・O2は血液に取り込まれHbに結合することで血中へ(わずかに溶存もする)
・ポンプ機能を持つ心臓によって全身に送られる(心拍出量に依存)
・酸素の供給
・酸素供給量はDO2(mL/min)で計算
・DO2=CO×1.34×Hb×SaO2×10
・正常値は900-1100mL/min、体格補正(体表面積;BSAで割ったもの)で520-600
→250を下回ると組織の低酸素に至る
・輸液やカテコラミンは主にCOに影響
・酸素摂取量(VO2)
・組織内には酸素を貯蔵されない
・酸素摂取量=酸素消費量の包括的測定値
・酸素摂取量はVO2で計算
→COを求めるFickの式を使用して計算
VO2=CO×1.34×Hb×(SaO2-SvO2)×10
・限界もある。
・VO2の計算に必要な測定項目であるCO,Hb,SO2,血中酸素含量には
測定誤差(内因性の変動)があり、最大で18%もの誤差がある
・肺の酸素摂取量が計算値に含まれていないため
厳密には『全身の酸素摂取量』ではない
・肺のVO2は5%程だが炎症で20%まで変化
・全身のVO2の計算式:VO2=VE(分時換気量)×(FiO2-FeO2)
・VO2低下の原因
・代謝の異常(低代謝)と嫌気性代謝をもたらす組織酸素化の不足
・低代謝の原因
・全身麻酔薬の存在(鎮静、麻薬、筋弛緩)
・低体温
・低活動、高齢者
・敗血症(全身の炎症反応)
・VO2の正常値は200~270、体格補正後は110-160
・VO2/BSAから110を引いた値に時間をかけたものが『酸素負債』
・酸素負債と多臓器不全のリスクは直接関係する。
・酸素摂取率(O2ER)
・O2ER=O2ER=VO2/DO2
・溶存酸素を無視し、共通項(CO,1.34,Hb,10)を消して簡易化する
→O2ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・正常値は0.20-0.30
・0.30を超える場合はDO2の低下を意味する(貧血や低心機能など)
・0.50(嫌気性代謝閾値)を超えると組織の低酸素になる(後述)
・0.20未満では組織の酸素利用障害を示す
・DO2が減少しても初期にはVO2に変化はない
・DO2が下がりすぎるとある一点でVO2が低下する。
・この点が嫌気性代謝の閾値
・これらを見るために必要なモニターは?
・SaO2にはパルスオキシメーター(Aガス)
・HbにはABG or VBG
・COはPAC、CV(プリセップ)、エコーで測定もしくは推測可能
・SvO2はPACのみ・・・
→ScvO2でも推測可能
・混合静脈血
・上大静脈』『下大静脈』『冠静脈』の3つの静脈血、
すなわち肺を除く静脈血の混合(合流)した静脈血の酸素飽和度
・3つの静脈の合流場所は右心房。測定場所は通常肺動脈
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)
・65%-75%が正常値
・呼吸器の使用や酸素化されてSaO2が一定であれば
その変化はERの逆に捉えることができる
=ER=(SaO2-SvO2)/SaO2
・SvO2<65%は酸素供給量の低下(貧血、低心拍出量)
・SvO2<50%は組織低酸素
・SVO2>75%は組織の酸素利用障害
・中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)
・CVカテが留置されていれば測定可能
・先端が留置されている場所での静脈血のガス測定が可能。
→『上大静脈』or『下大静脈』
・酸素が極端に少ない冠静脈は含まれない
・SvO2とScvO2の間には差がある(ScvO2の方が高い)
・ScvO2の変化は一般的に有意である
・正常値は70-89%
・SvO2とScvO2の解離
・正常でもScvO2はSvO2よりも3-11%程度高い。
・この差は心不全、心原性ショック、敗血症で大きくなる
・上大静脈にカテ先端が留置されている場合
・心不全、心原性ショックなどで低心拍出量
→末梢血管抵抗の増大により脳血流が保たれる。
→ScvO2は相対的に高い値を示す
・敗血症性ショックでScvO2がSvO2よりも比較的高い場合
→腹部での酸素消費量の増加を示唆する
・乳酸値
・乳酸は嫌気性解糖の最終産物
・高乳酸値は低酸素状態(および脱水)を必ずしも反映しない
・低酸素状態になればlacは上昇するがVO2の低下から数時間遅れる
・これは乳酸が負に帯電しており細胞膜通過に時間がかかるため
・組織低酸素ではない高乳酸血症
・全身性炎症反応症候群
・チアミン欠乏(原因不明の高lac血症)
・薬物
・アドレナリン、メトホルミン
抗レトロウィルス薬、リネゾリド
プロピレングリコール
→プロピレングリコールを含む薬剤
・ロラゼパム
・ジアゼパム
・エスモロール
・ニトログリセリン
・フェニトイン
・アルカローシス
・痙攣
・肝機能障害
・喘息発作
・悪性腫瘍
・シアン化合物
・一酸化炭素など
・乳酸そのものは有害なのか
・敗血症性ショックでは心臓における乳酸の酸化が亢進している
・低酸素状態の神経組織では乳酸の酸化が重要なエネルギー源である
・乳酸アシドーシスの治療は原因となった代謝異常を是正することが第一
・重症敗血症と高乳酸値
・細菌のエンドトキシン
→ピルビン酸からアセチルコエンザイムAに変換される過程を障害
→ピルビン酸の蓄積による高乳酸血症になる
・敗血症において高乳酸血症=酸素化の不足は一対一対応ではない