ICU勉強会 担当:T先生
「開心術後の心肺蘇生」
・心肺停止の定義
→心機能,肺機能のいずれか、または両方が停止状態
・心肺停止の判断は
①深昏睡
②自発呼吸消失
③頸動脈(乳児は上腕動脈)拍動消失
④心電図モニター上,心静止(asystole),心室細動(VF),
無脈性心室頻拍(pulseless VT)、無脈性電気活動(PEA)
・開心術後の心肺停止
・CABGもしくはAVR後の心肺停止を解析したイギリスの報告では
1999-2008年の7029例のうち108例(1.5%)が心肺停止
・心停止:86例(80%)、呼吸停止:13例(12%)
心停止n=86のうち・・・
・VF/VT:70%
・Asystole:17%
・PEA:13%
同じく心停止n=86のうち・・・
・心筋梗塞:53%
・心タンポナーデ/出血:24%
・ブロック:5%
・低K血症:6%
・原因不明:12%
呼吸停止のn=13例のうち・・・
・ARDS/COPD増悪:9例
・Stroke/narcosis(抜管後):4例
・心肺停止の時期は術当日が最も多い。
・蘇生方法
→再開胸:52%, Bypass再建:16%
再度bypass施行:6%, IABP:45%
・生存退院率は心停止で50%, 呼吸停止で69%
・ガイドラインあります。
→EACTS guideline for resuscitation of a patient who arrests after cardiac surgery.
・開心術後CPRの注意点
・すぐには胸骨圧迫をしない
・VF/VTの場合にはまず除細動をする
・徐脈性不整脈から心停止となった場合はペーシングを
・ルーチンにアドレナリンは投与しない
・蘇生の可能性が低ければすぐに再開胸を
・気道・呼吸管理については・・・
・挿管されていたらFiO2=100%にしてPEEPをオフにする
・100%酸素のバッグバルブマスクに変えて
挿管チューブの位置確認とカフ圧確認
・両側の胸郭運動、呼吸音確認(気胸血胸の評価)
・緊張性気胸が疑われたら第2肋間鎖骨中線に
太いカニューレを留置
・CPAの確認
・まず頸動脈を触れる(10秒以内)
・その間にA lineやCVP、肺動脈圧PAPなどを確認する
・頸動脈も触れず波形が出ていなければ
CPAとして人を集めて蘇生開始
・いずれかがある場合はNBPなども確認
・胸骨圧迫前に
・VF/pulseless VT
→まずは心拍再開するまで3回DCを行う
→心拍再開しなければ胸骨圧迫を行う
→アミオダロン300mgをCVから静注
→緊急再開胸の準備をしながら
2分ごとのCPRとDCを継続する
・Brady cardia / asystole
→心外膜ペーシングがあればすぐに
DDDでbpm90にて最大出力にてpacingを行う
(なければ経皮ペーシングを)
→1分間で効果なしor1分以内にpacingできない場合は
胸骨圧迫を開始する
→可及的にアトロピン3mg投与を考慮する
→緊急再開胸までCPR継続
・PEA
→pacingをしている場合は
VF誘発の可能性があるので中止する
→緊急再開胸までCPRを行う
・胸骨圧迫を直ちには行わない理由
・2分以内に除細動すると生存が増えるという報告が多い
・胸部術後の胸骨圧迫による心損傷が多数報告されている
・ペーシングについて
・Pacingの有用性を示した報告はない
・侵襲性は低い
→心停止、重度の徐脈に対してはまず試みるべきとの推奨
・アドレナリンについて
・心臓手術後の心停止にアドレナリンの有用性を示す研究はない
・一般的な心停止に対するアドレナリンの有用性は
動物実験レベルのものしかない
・自己心拍再開後に重度の高血圧で大量に失血して
心停止になった報告がある
→可逆的な原因があったときに
重度の高血圧をきたすリスクがある
→アドレナリンのルーチンでの使用を推奨しない
→0.1-0.3㎎静注を推奨
・再開胸について
・胸骨正中切開後の患者は再開胸が容易である
・心停止後10分以内に開胸した方が
生存率が高かったとの報告がある(48% vs 12%)
・EACTSでもCPRが5~10分以上必要であると予測される場合は
適応になるとしている
・術後10日は癒着が形成されないため再開胸を推奨している