2016年3月4日金曜日

HITについて

麻酔科勉強会  担当:T先生

「HITについて」

・HITはヘパリンによる重大な副作用の一つ
・ヘパリン依存性自己抗体の出現が原因
・発症機序から2つに分類される
  ・I型
   ・ヘパリン投与後2-3日で発症
   ・非免疫機序
   ・血小板は10-20%の減少
   ・合併症は少ない
   ・ヘパリン継続可能、自然に回復a
  ・Ⅱ型
   ・ヘパリン投与後5-14日で発症
   ・ヘパリン依存性抗体の出現
   ・血小板は30-40%の減少
   ・動脈血栓の危険性
   ・ヘパリン中止で回復
   ・代替薬による抗凝固療法継続
・HITのリスク
 ・未分画ヘパリン>低分子ヘパリン (2.6% vs 0.2%)
 ・高容量>超高容量(CPB)>低用量(皮下注)
 ・女性>男性
 ・外科患者>内科患者(血管損傷が原因?)
・臨床的特徴
 ・ヘパリン投与開始5-14日に血小板減少が発症
 ・100日以内にヘパリン投与歴があれば急性発症を来すこともある
 ・Plt値は50%以下または10万/μl以下に減少
 ・Plt値は2万/μl以下になることはまれ
・臨床的特徴
 ・出血傾向を来すことはほとんどない
 ・約50%に血栓塞栓症が発症する
   →静脈血栓症:深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症
   →動脈血栓症:脳梗塞、心筋梗塞、四肢動脈閉塞症
   →透析での回路内凝血
・4T'sによるHITの臨床診断
  →3点以下可能性低い、6点以上可能性高い
・HIT抗体測定法
 ・機能的測定法:特異度が高い
   ・14C-セロトニン放出試験→日本では行えない。
   ・血小板凝集試験
   ・マイクロパーティクル法など
 ・免疫学的測定法:感度が高く特異度は低い
   ・酵素免疫測定法(ELISA)
   ・化学発光免疫測定法
   ・ラテックス免疫比濁法など
・治療
 ・すべてのヘパリン投与を中止
    →圧ライン中のヘパリン加生食、
     ヘパリンコーティング回路など
 ・代替の抗凝固療法
    →行われない場合は、約6%/dayの患者で
     血栓塞栓症を発症する
    ・抗トロンビン薬:アルガトロバン
    ・合成Ⅹa阻害薬:フォンダパリヌクス
・アルガトロバン
 ・10mg/2ml  1A
 ・フィブリン形成阻害、血小板凝集阻害
 ・主に肝代謝 ⇒腎機能低下でも使用可能
 ・アンチトロンビンⅢ活性が低くても使用可能
 ・半減期 45分
 ・拮抗薬なし
 ・モニタリング:aPTT 、ACT
・具体的な投与量
 ・2μg/kg/min(0.7μg/kg/min)で投与開始
 ・2時間ごとに採血を行い、aPTT 1.5-3.0倍(100秒以下)で調節
 ・最初の24時間は2時間ごと、その後は24時間ごとに採血
 ・ワーファリン投与にスイッチ 血栓症なし:最低4週間継続   
                血栓症あり:3ヵ月程度継続
 ・最低5日間はワーファリンとアルガトロバンの併用
 ・併用した状態でアルガトロバン 2γ以下で、
  PT-INRを4以上とする
 ・アルガトロバンを中止し4-6時間後にPT-INR測定
 ・PT-INR 2-3倍ならばそのまま継続。
  2倍以下ならアルガトロバン再開しワーファリン増量。
  翌日再評価。
・ワーファリン移行時の注意
 ・急性期HIT患者にワーファリンを投与すると、
  凝固阻止因子(プロテインC)の低下が率先して起こり、
  逆に血栓傾向へと傾く。
 ・Plt値が15万/μl以上に回復してから移行
・その後の対応
 ・HIT抗体は約50-85日で陰性化する
 ・HIT抗体が陰性化した後はヘパリンを再使用しても
  HITを必ずしも発症しないとされている。
 ・待機的心臓手術
    ・100日以上待ち、HIT抗体を陰性化させる。
    ・人工心肺中はヘパリンを使用(未分画ヘパリン)
    ・術前、術後の抗凝固はアルガトロバンを使用する。
・緊急の心臓手術時
 ・CPB使用時:アルガトロバン 0.1mg/kg投与後5-10γで持続投与
       評価はACT値で行う
 ・オフポンプ:アルガトロバン 2.5γ持続投与
        ACTをコントロールの2倍程度にする
 ・Up To Dateによると・・・
   →血漿交換を行い、HIT抗体の力価を弱めながらヘパリン使用
・海外のガイドラインでは
 ・肝機能、腎機能両方が悪い患者にbivalirudinの使用を推奨する。
 ・HIT抗体陽性患者が緊急心臓手術を要する場合は、
  bivalirudinの使用を推奨する。
・Bivalirudinとは??
 ・日本未発売
 ・抗凝固作用、抗血小板作用
 ・作用発現 5分、半減期 25分
   →出血リスクが少ない
 ・ほぼ血中で代謝(トロンビン、血中>腎) 
   →肝機能障害でも使用可
 ・ACT、aPTTでモニタリング可能
 ・出血合併症は少ないが、PCIでの使用時に  
  再梗塞やステント血栓症発生率が高い。