初期研修医勉強会 担当:N先生
「麻酔薬は小児の神経発達に影響を及ぼすか」
・小児の神経発達
・胎児期から児童期にかけて神経細胞発達やシナプスが増加
・特に胎生6週〜3歳では発達が著しい。
・PANDA study
P:鼠径ヘルニアの3歳未満 小児105人,出生時に在胎36週以上
I:鼠径ヘルニア待機手術、全身麻酔時間 平均84分(20-240分)
C:麻酔薬暴露ない
O:認知機能G(IQ)低下 リスク上昇に関連するか。
また8~15歳時点で領域特異的な神経認知機能・行動異常に関連するか。
→平均IQに有意差なし
ただし麻酔曝露群では行動調査で
「internalizing(内面化)」 に関する異常が有意に多かった。
・GAS trial(現在進行中)
・5歳未満の小児の鼠径部ヘルニア修復術
・覚醒下局所麻酔238人 VS セボフルランベース全身麻酔294人
・セボフルラン曝露時間は54分(中央値)
→最初 2年間の追跡による中間発表では
両群間で発達に関するBayley III スコアに差がなかった。
→5歳時点で WPPSI-III IQ 測定値の評価待ち。
・2015年のシステマティックレビュー
・3歳未満の全身麻酔は神経発達障害リスクあり。
・3歳と4歳では有意に差がなく、
3歳以上では単回の全身麻酔は比較的安全である。
・2012のFDA, SmartTots, the American Academy of Pediatricsの共同声明
→3歳未満での待機手術をできる限り避けるべき。
・長時間の全身麻酔は学童期の知能に影響するか?
→論文読んできました。
2018年6月22日金曜日
2018年6月20日水曜日
肺高血圧症患者の麻酔
麻酔科勉強会 担当:K先生
「肺高血圧症患者の麻酔」
・肺高血圧症の定義と分類
・定義:安静時のmPAP ≧ 25mmHg
・分類:
第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)
第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症
第3群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症
第4群:慢性肺血栓塞栓症に伴う肺高血圧症(CTEPH)
第5群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症
・ちなみに
・薬物誘発性PAH
・食欲抑制薬
・フランスではPAHの約10%が食欲抑制薬によるもの
・CTD-PAH
・全身性強皮症や混合性結合組織病、SLEで合併率が高い。
・HIV
・HIV感染症の約0.5%にPAHを発症
・PoPH
・肝移植対象例の5%にPAHを合併
・住血吸虫
・肺に到達した虫卵により肺動脈に炎症が生じPAHを発症
・心エコーによるスクリーニング
・PHが疑われる患者、PHを合併しうる疾患の患者
→積極的に心エコーを行う。
・推定肺動脈収縮期圧=推定右房圧+三尖弁逆流圧較差
・推定肺動脈収縮期圧=推定右房圧+ 4 ×(三尖弁逆流ピーク速度)2
・IVC径 < 21mm かつ 呼吸性変動+→RAP 3 mmHg
・IVC径 > 21mm かつ 呼吸性変動-→RAP 15 mmHg
・それ以外→RAP 8 mmHg
・右房圧はあくまで推定でしかない。
→三尖弁逆流ピーク速度自体を
スクリーニングに使用することも推奨されている。
・PHを示唆する他の心エコー所見
・右室・右房の拡大
・右室による心室中隔の圧排
・肺動脈血流速波形の変化など
・肺高血圧症の治療
・一般的対応
・避妊
→妊娠・出産による死亡率は25%
・肺炎の予防
・全身麻酔を避ける。
・監視下での運動療法
・適切な運動の様式や頻度,強度,持続時間は確立されていない。
・有害事象として失神や不整脈がある。
・支持療法
・利尿薬
・HOT
・経口抗凝固療法
・鉄の補正
・ACEi/ARB
・β-blocker
・特異的薬物治療
・PGI2誘導体
・PED5阻害薬
・エンドセリン受容体拮抗薬
・肺高血圧症患者の麻酔管理
・PH患者の周術期死亡率は1~9%と報告されている。
・麻酔法による死亡率や合併症発生率の違いは明らかでない。
・全身麻酔or硬膜外麻酔
・全身麻酔
・呼吸管理が確実だが、肺血管抵抗上昇、循環抑制のリスク。
・硬膜外麻酔
・陽圧換気を避けられるが、交感神経緊張などのリスクも。
・実際には抗凝固薬内服などで選択の余地がない場合も多い。
・循環動態が悪化する原因としては次の2パターン。
・肺血管抵抗の急激な上昇により肺高血圧緊急症(PHC)を来たす。
・PHCは発生していないが体血圧が低下して
冠血流が低下し右心不全を来たす。
→麻酔管理の目標は肺血管抵抗の上昇や体血圧の低下を避けること。
・肺高血圧緊急症(PHC)
・PVR上昇因子
・低酸素血症
・高二酸化炭素血症
・低体温
・アシドーシス
・交感神経緊張
・亜酸化窒素
・以上より・・・
・適切な換気、保温、鎮痛、適切な麻酔深度を保つことが重要。
・低血圧は肥大した右室の虚血をもたらす。
→PheやNAD、VPで積極的に治療する。
・VPは肺血管抵抗を上昇させずに体血圧を上昇させる。
・右室機能が低下している場合
→DOBやMilなどの強心薬を使用(体血圧低下に注意)
・肺高血圧の増悪に対してはPGI2やニトログリセリンなどを投与する。
→体血管抵抗も低下させるため慎重に使用
・NOの吸入は体血管抵抗を変化させず肺血管抵抗のみ低下させる。
→重症例では準備しておくべき。
「肺高血圧症患者の麻酔」
・肺高血圧症の定義と分類
・定義:安静時のmPAP ≧ 25mmHg
・分類:
第1群:肺動脈性肺高血圧症(PAH)
第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症
第3群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症
第4群:慢性肺血栓塞栓症に伴う肺高血圧症(CTEPH)
第5群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症
・ちなみに
・薬物誘発性PAH
・食欲抑制薬
・フランスではPAHの約10%が食欲抑制薬によるもの
・CTD-PAH
・全身性強皮症や混合性結合組織病、SLEで合併率が高い。
・HIV
・HIV感染症の約0.5%にPAHを発症
・PoPH
・肝移植対象例の5%にPAHを合併
・住血吸虫
・肺に到達した虫卵により肺動脈に炎症が生じPAHを発症
・心エコーによるスクリーニング
・PHが疑われる患者、PHを合併しうる疾患の患者
→積極的に心エコーを行う。
・推定肺動脈収縮期圧=推定右房圧+三尖弁逆流圧較差
・推定肺動脈収縮期圧=推定右房圧+ 4 ×(三尖弁逆流ピーク速度)2
・IVC径 < 21mm かつ 呼吸性変動+→RAP 3 mmHg
・IVC径 > 21mm かつ 呼吸性変動-→RAP 15 mmHg
・それ以外→RAP 8 mmHg
・右房圧はあくまで推定でしかない。
→三尖弁逆流ピーク速度自体を
スクリーニングに使用することも推奨されている。
・PHを示唆する他の心エコー所見
・右室・右房の拡大
・右室による心室中隔の圧排
・肺動脈血流速波形の変化など
・肺高血圧症の治療
・一般的対応
・避妊
→妊娠・出産による死亡率は25%
・肺炎の予防
・全身麻酔を避ける。
・監視下での運動療法
・適切な運動の様式や頻度,強度,持続時間は確立されていない。
・有害事象として失神や不整脈がある。
・支持療法
・利尿薬
・HOT
・経口抗凝固療法
・鉄の補正
・ACEi/ARB
・β-blocker
・特異的薬物治療
・PGI2誘導体
・PED5阻害薬
・エンドセリン受容体拮抗薬
・肺高血圧症患者の麻酔管理
・PH患者の周術期死亡率は1~9%と報告されている。
・麻酔法による死亡率や合併症発生率の違いは明らかでない。
・全身麻酔or硬膜外麻酔
・全身麻酔
・呼吸管理が確実だが、肺血管抵抗上昇、循環抑制のリスク。
・硬膜外麻酔
・陽圧換気を避けられるが、交感神経緊張などのリスクも。
・実際には抗凝固薬内服などで選択の余地がない場合も多い。
・循環動態が悪化する原因としては次の2パターン。
・肺血管抵抗の急激な上昇により肺高血圧緊急症(PHC)を来たす。
・PHCは発生していないが体血圧が低下して
冠血流が低下し右心不全を来たす。
→麻酔管理の目標は肺血管抵抗の上昇や体血圧の低下を避けること。
・肺高血圧緊急症(PHC)
・PVR上昇因子
・低酸素血症
・高二酸化炭素血症
・低体温
・アシドーシス
・交感神経緊張
・亜酸化窒素
・以上より・・・
・適切な換気、保温、鎮痛、適切な麻酔深度を保つことが重要。
・低血圧は肥大した右室の虚血をもたらす。
→PheやNAD、VPで積極的に治療する。
・VPは肺血管抵抗を上昇させずに体血圧を上昇させる。
・右室機能が低下している場合
→DOBやMilなどの強心薬を使用(体血圧低下に注意)
・肺高血圧の増悪に対してはPGI2やニトログリセリンなどを投与する。
→体血管抵抗も低下させるため慎重に使用
・NOの吸入は体血管抵抗を変化させず肺血管抵抗のみ低下させる。
→重症例では準備しておくべき。
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