2017年9月30日土曜日

SSI予防、FiO2いくらにする?

麻酔科勉強会  担当:H先生

「SSI予防、FiO2いくらにする?」

・CDC 2017より
 ・周術期の血糖コントロールを実施し、糖尿病の有無にかかわらず
  血糖の目標レベルを200 mg/dL未満にする。(カテゴリー IA)
 ・周術期の正常体温を維持する。(カテゴリー IA)
 ・気管内挿管されている全身麻酔の正常肺機能の患者では、
  手術中および手術直後の抜管のあとはFIO2 を増加させる。
  組織の酸素輸送を最適にするために、
  周術期の正常体温と十分な体液補充を維持する。(カテゴリー IA)
 ・禁忌でなければ、アルコールベースの消毒薬にて
  皮膚を消毒する。(カテゴリー IA)
 ・SSIの予防のためにヨードホール水溶液にて深部
  もしくは皮下組織を術中に潅流することを考慮にいれる。
  不潔もしくは汚染の腹部手術において
  ヨードホール水溶液での術中潅流は必要ない。(カテゴリーII)
・WHOのガイドライン
 ・術中はFiO2 80%、術後2-6hも継続を推奨。
・今までのガイドラインでは?
 ・SHEA/IDSA (2014)
   ・術中、術後も十分な酸素を投与すること。
 ・NICE (2008), The Royal College of Physicians of Lreland (2012),
    Health Protection Scotland bundle (2013),
    UK High impact intervention bundle (2011)
   →Haemoglobin Satを95%以上に保つことを推奨。
・2013 Anesthesiology
   →FiO2高い方がSSIを減らすとのメタがあった。
    (FiO2 0.5より上か下かで比較)

・酸素の害と利益
  • Paule Bert(1878)
   →動物で痙攣発作,
    人間では視野狭窄、めまい、頭痛、耳鳴、
    嘔気、嘔吐、けいれん
  • Smith(1898)
   →100% O2を24時間
   →呼吸苦、胸痛、無気肺、気管支炎、肺水腫
  • hyperoxic acute lung injury: ←ROSによる。
  • ROSは病原菌も正常組織も傷害する
・FiO2
  • FiO2 28%を1時間→ROS,IL-6増加
  • FiO2 40%炎症惹起、apoptosis,細胞死(全身の組織に影響)
  • 中等度、軽度の脳卒中後の酸素は
   ADLの低下につながる。(Stroke. 1999 Oct;30(10):2033-7.)
・Crit Care Med. 2015;43:1508-19
  →Hyperoxiaはpoor hospital outcomeと関連する。
・JAMA. 2009;302:1543-50.
  →腹部手術においてFiO2 80%はFiO2 30%と比較して
   SSIのリスクに有意差はない。
  →2年後のfollow upではFiO2 0.8、Hazard 比1.3で死亡率増大。
・Br J Anaesth. 2015;115:434-43
  →FiO2 80%にしてもSSIリスクを減らさない。

・さあ、どうしましょうか。

2017年9月26日火曜日

平成30年度採用 専攻医(後期研修医)募集その2

専攻医の募集要項が正式に掲示されました。
インターネット出願も可能です。

http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical/guideline


見学に来られた皆様、アンケートへのご協力をありがとうございました。
この場を借りて御礼申し上げます。

2017年9月16日土曜日

平成30年度採用 専攻医(後期研修医)募集

今年度は18人の先生方が、麻酔科専攻医またはICUフェローの病院見学に来ていただきました。(現在、ICUフェローの募集はすでに始まっています。~9/22まで)
このたび新専門医機構の方針決定を受けて、14日、当院の専攻医の選考試験日程が変更、決定されました。

選考試験日: 11月3日(金・祝)
試験方法:小論文(事前提出)、面接

今後のスケジュール

1次募集   9/25-10/20
採用試験 11/3
結果通知 11/6~
2次募集 11月中旬以降(選考試験随時)

参考URL
http://chuo.kcho.jp/recruit/late_resident/medical


応募される先生方にとっては受難の年としか言いようがありませんが、
随時、必要情報を公開していきますので、よろしくお願いします。

2017年9月6日水曜日

関西支部学術集会

「関西支部学術集会」

9月2日、大阪国際会議場にて日本麻酔科学会第63回関西支部学術集会が開催されました。当院からは専攻医の先生を中心に8つの演題を応募し、発表させて頂きました。








当科では専攻医の学術発表も重視しており、今年も専攻医1年目の先生方には全員発表してもらうこととなりました。
今後もスタッフ一同、若手の先生方の学術活動を支援していきます。

2017年9月2日土曜日

麻酔器、呼吸器について

「麻酔科勉強会」 担当:O先生

「麻酔器、呼吸器について」

・麻酔器と人工呼吸器との違い
 ・麻酔器は呼気を再利用する閉鎖循環式(再呼吸)回路
 ・人工呼吸器ではCO2を排出する装置がないため、呼気を再利用しない。
 ・ジャクソン・リースとアンビューバッグ回路の違いに似ている。
・陽圧換気のモード
  ・量制御換気(volume-controlled ventilation:VCV)
  ・圧制御換気(pressure-controlled ventilation:PCV)
 ・どちらが優れた呼吸器設定であるかは画一した答えは無い
 ・いずれの換気設定にしても問題となるのは
  人工呼吸器関連肺障害(ventilator-induced lung injury:VILI)
   →空気を押し込む際の異常な圧力や張力により肺構造を損傷する。
   →容量障害と圧障害の2つのタイプに分けられる。
 ・容量障害
  ・1980年代、高吸気圧よりも高吸気量が
   肺血管外水分量を増加させるという研究が発表された。
  ・それ以降、容量障害という言葉が
   人工呼吸による肺浸潤のメカニズムを説明するために使用された。
  ・肺胞の過膨張と肺胞-毛細管界面の破壊
    →肺の炎症性浸潤を生じるというメカニズム。
  ・どの程度の容量設定にするか?
    →ARDS患者を対象とした6ml/kgvs12ml/kgでのトライアルが示すのみ。
 ・圧障害
  ・陽圧換気
    →気道や肺胞の破裂によってエアリークを生じる可能性。
  ・プラトー圧が30cmH2Oを超えないように設定する必要がある。
 ・無気肺損傷
  ・呼吸器使用中、細気道は呼気終末に虚脱する。
   ↑吸気量が陰圧と比較して圧倒的に少ないため。
  ・肺コンプライアンスが低下していると増悪
  ・呼吸器管理中、細気道の開通と虚脱を繰り返すことにより
   過度の剪断力が発生し、気道上皮が損傷する。
   →無気肺損傷と呼ばれる。
・VCVについて
 ・1回換気量をあらかじめ設定設定。
 ・設定した換気量まで気道内圧は一定速度で上昇。
 ・最高気道内圧(Ppeak)に達するのは、
  気道、胸腔の抵抗及び弾性力の圧(Pres,Pel)に打ち勝つ瞬間。
 ・Ppeak=Pres+Pel
 ・Ppeak自体が肺およびその周囲に障害を与える直接的な因子ではない。
 ・VCVでのプラトー圧は?
   ・Pplateau(プラトー圧)は呼気終末の肺胞の最高圧(Palv)
   ・吸気ホールド(通常1秒)を行うことによって算出できる。
   ・Pplateauが肺障害と直接的に関連する。
・PCVについて
 ・吸気圧を前もって設定し、
  望む1回換気量を得るために吸気時間を設定する。
 ・吸気流速は圧を一定に保つために、吸気開始時に早くその後減速。
 ・吸気終末気道内圧(Paw)とプラトー圧は理論的には一致する。
・呼吸器は診断補助ツール
 ・Ppeak(Paw)が高いとき何が起こっているのか、
  診断補助ツールに使うことができる。
 ・2つの値を計算することで診断補助に使用できる。
  ①胸腔コンプライアンス(50-80)
  ②気道抵抗(3-7)
・胸郭コンプライアンス
 ・肺と胸壁の両方を含んだ値でCstatで表現される
  ・VCV:Cstat=Vt(1回換気量)/(Pplateau-Peep)
  ・PCV:Cstat=呼気Vt/(Paw-Peep)
 ・どちらのモードでも計算できるが、
  1回換気量が変化することは計算上望ましくない。
 ・呼吸筋収縮の影響を受けるため、受動的呼吸時にのみ計算が有効。
 ・計算上の1回換気量は呼吸回路のコンプライアンスで補正する。
・気道抵抗
 ・吸気抵抗(Rinsp)と呼気抵抗(Rexp)の2つが存在する。
 ・流量が一定であること(VCVであること)、
  短形波(漸減波ではない)であることが測定の条件。
  ・Rinsp=(Ppeak-Pplataeu)/Vinsp(吸気流速)
  ・Rexp=(Ppeak-peep)/PEFR(最高呼気流速)
 ・呼気抵抗はCOPDなど細気管支などの閉塞傾向を鋭敏に反映し
  吸気抵抗より通常高くなる。
 ・最高呼気流量の計算が難しいため通常は吸気抵抗を計算する。
 ・気管チューブや呼気弁の影響を受けることに注意。