2016年10月27日木曜日

輸液蘇生の6つの原則

ICU勉強会  担当:K先生

「輸液蘇生の6つの原則」

先月号のCCM、Mr. Marik氏より。

1・輸液反応性が大事!輸液蘇生の目的を知るべし。
    ・輸液蘇生の目的はSVの増加!!これに尽きる。
   ・SVが増加するためには以下の2つの条件が揃わなければならない。
  ①CVPが上がるよりもstressed volume (MCFP)が増え、
   結果としてVenous returnが増えること
  ②両心室の機能がFrank-Starling曲線の上行脚にいること

2・臨床所見、胸部レントゲン、CVP、エコーで輸液反応性を評価すべきでない。
   ・低血圧や頻脈、脈圧の低下、CRTの延長など
     →不適切な組織灌流を反映するが
      volume statusや輸液反応性を決定することはできない。
   ・CVPの変化やIVCの変化、MAPの変化など
     →輸液反応性の指標としては不適切である。
   ・心エコーでのVTI
     →測定手技の習熟度の問題と再現性の問題もあり適さない。
  → やっぱりSVモニタリング!

3・Stroke volumeをモニターしながらの下肢挙上テストと
  Fluid challengeが輸液反応性を見る唯一の正しい方法である。

4・輸液反応性の効果は短命と知るべし。
   ・Fluid challenge (200-500mL)の効果はわずかで一時的なものである。
   ・30min-1hrもすれば元に戻る。
  →低血圧、ショック、乏尿の場合の治療戦略として
   Fluid challengeは不十分であることが多い。

5・輸液反応性があるからといって輸液をしなければならないわけではない。
  ・健康成人のほとんどがFrank-Starling曲線の上行脚にいる。
  ・重症患者をFrank-Starling曲線のトップを目指す必要はない。
  ・fluid challengeによる血行動態に及ぼす利点が
   プラスバランスとして体液を蓄える欠点を上回る時だけである。

6・CVP高値は臓器灌流障害の原因となる。
  ・MAP-CVPが臓器灌流を規定する。
  ・SSCGでは初期輸液で8mmHgを目指すよう言われているが
   CVP>8mmHgはAKIリスクである。


麻酔科ローテーション研修医Drへのオリエンテーション

虚血性心疾患患者の麻酔管理

麻酔科勉強会  担当:M先生

「虚血性心疾患患者の麻酔管理」

・リスク評価
  ・1999年のLeeらの報告では50歳以上の待機的手術患者
  ・High-risk seurgery(AAA 開腹など)
  ・虚血性心疾患の既往
  ・心不全の既往
  ・インスリン使用の糖尿病
  ・Cre>2.0
  ・術中MACEが0.5%(0-2点)、1.3%(4)、4%(5)、9%(5)
・2014年AHA周術期ガイドラインでは?
  ・Low risk(MACE1%)とelevated riskに分類
  ・MACEの計算は専用サイトで。
  ・1%以下でもRCRI2点以上はelevated risk
    →いずれにせよ何らかのスコア化は有用。
・ハイリスク群では?
 ・運動耐用能力を調べる
  ・METs
   →>10:excellent 7-10:good,4-7:moderate,<4:poor
  ・Dukes Activity Status Index
・スコア化されていないがMACEに影響する併存疾患
  ・7日以内のACSもしくは1か月以内のMI
  ・Canada calssⅢ以上のuAP
  ・非代償性心不全
  ・Severe AS
  ・不整脈:高度房室ブロックなど
  ・高齢
  ・肺高血圧
・術前検査
 ・心電図
   →虚血性心疾患患者のroutine検査は有用(Ⅱa)
   →冠動脈疾患の既往が不明な場合も考慮してよい(Ⅱb)
 ・左室機能検査
   →原因不明の労作時息切れの患者
   →LVEF<30 p="">・術前CAGの適応
  ・AHA
    ・ルーチンの検査は不要
  ・日本
    ・術後心不全管理を要求される患者
    ・冠動脈再建を先行させるかの精査
・術前からの内服薬について
 ・βブロッカー
   ・継続か否か
    →POISE studyではβの内服で心臓イベントは抑制、
     脳卒中および死亡率は増加
    →術中の血圧低下、徐脈の関与の関与
    →維持量の患者は原則継続
    →RCRI>2のhigh risk群ではより効果は高い
   ・新規の導入
     →新規の導入はlow risk患者において推奨されない。
 ・ACEi/ARB
   ・現時点では継続によるbenefitは示されず
   ・術中低血圧が多かったがoutcomeには影響せず。
   ・休薬が必ずしも必要ではない
   ・休薬する場合は可能な限り早期の再開
 ・αブロッカー
   ・心イベントの予防効果なし
   ・術中低血圧イベント多く基本休
 ・ニトロ製剤
   ・予防的投与における虚血予防効果は認めていない。
 ・CCB
   ・虚血および頻脈の予防効果は一部論文であり。
   ・ルーチンでの投与は推奨されない。
   ・休薬の必要は指摘されず。
 ・スタチン
   ・スタチン内服は死亡率の低下あり。
   ・内服は継続
   ・ESCガイドラインでは2週間前からの内服も推奨
 ・アスピリン
   ・出血量は増加する
     →重篤な合併症をきたすほどの出血は有意差なし
   ・休薬によってmaceは3倍以上になるとの報告もあり。
   ・出血リスクが上回る場合を除いて継続を可能な限りおこなう。 
・周術期の虚血、梗塞を起こす病態は?
 ・需要の増大
 ・頻脈
 ・後負荷増大
 ・手術侵襲
 ・供給の低下
 ・還流圧の低下
 ・低酸素血症
 ・貧血
・術後モニタリング
 ・心電図
   →72時間以上の心電図のモニタリングは勧められず
 ・マーカー
   →上昇するタイミングは術後8-24時間がピーク




ハイリスク患者における抜管後の予防的HFNCvsNIV

ICU勉強会 担当:K先生

「ハイリスク患者における抜管後の予防的HFNCvsNIV」

・HFNCの研究
→比較対象が通常の「酸素療法」の場合と「NIV」の場合の2種類。
→抜管後の「予防」の場合と、呼吸不全の「治療」の場合の2種類。
  ・HFNCでは「予防」に関する研究が多い?
・予防的NIV
  ・これまでに2つのメタアナリシスで有効性が示されている。
   →ある程度のエビデンスはあると捉えて良いだろう。
  ・ただしメタアナリシスはないような。
  →ハイリスク患者での予防という意味ではコンセンサスを得ている。
・予防的HFNC
  ・2014年のAJRCCM、2016年のJAMA
    ・それぞれICU一般ローリスク患者を対象
    ・HFNCは酸素療法と比較して
     酸素化の維持や再挿管率の低下などを示した。
  ・2015年のJAMA
    ・心外術後患者の術後低酸素に対するNIVとの比較での
     非劣勢を示した。
  ・同じく2015年のICM
    ・肥満患者で通常酸素療法と比較して有効性を示せなかった。
・ハイリスク患者の抜管後再挿管「予防」に対しての「NIVとの比較」は?
 →スペインの3つのICUで行われたRCT(PROBE法)、非劣性試験。
  P:12時間以上挿管された患者で抜管が予定されたハイリスク患者
  I:HFNC群290名(抜管後24時間使用)
  C:NIV群314名(抜管後24時間使用)
  O:Primary;72時間以内の再挿管率
 →結果
  ・Primary:再挿管率はNIV群19.1% vs. HFNC群22.8%と非劣性
  ・再挿管理由が非呼吸関連のものを除いても同様の結果
  ・実際にNIVを装着した時間は14時間(IQR 8-23)
   18時間以上装着できなかったものが40%
  ・Secondary:抜管後呼吸不全率とその理由、再挿管理由、
   再挿管までの時間、ICU/入院期間、死亡などに有意差なし
・治療的HFNC
  ・2015年のNEJMに報告あり。
  ・2015年のICMでHFNC粘りすぎたら予後悪いという報告もあり。)
 →治療的HFNCの立ち位置はまだ定まってはいない。
 →治療的HFNCを通常の酸素療法とNIVとどう使い分けるのかはまだわからない。


GICU回診