2016年6月16日木曜日

開心術後のCPR

ICU勉強会 担当:T先生

「開心術後の心肺蘇生」

・心肺停止の定義
  →心機能,肺機能のいずれか、または両方が停止状態
 ・心肺停止の判断は
   ①深昏睡
   ②自発呼吸消失
   ③頸動脈(乳児は上腕動脈)拍動消失
   ④心電図モニター上,心静止(asystole),心室細動(VF),
    無脈性心室頻拍(pulseless VT)、無脈性電気活動(PEA)
・開心術後の心肺停止
  ・CABGもしくはAVR後の心肺停止を解析したイギリスの報告では
   1999-2008年の7029例のうち108例(1.5%)が心肺停止
     ・心停止:86例(80%)、呼吸停止:13例(12%)
       心停止n=86のうち・・・
          ・VF/VT:70%
          ・Asystole:17%
          ・PEA:13%
              同じく心停止n=86のうち・・・
          ・心筋梗塞:53%
          ・心タンポナーデ/出血:24%
          ・ブロック:5%
          ・低K血症:6%
          ・原因不明:12%
       呼吸停止のn=13例のうち・・・
                    ・ARDS/COPD増悪:9例
          ・Stroke/narcosis(抜管後):4例
・心肺停止の時期は術当日が最も多い。
・蘇生方法
  →再開胸:52%, Bypass再建:16%
      再度bypass施行:6%, IABP:45%
・生存退院率は心停止で50%, 呼吸停止で69%
・ガイドラインあります。
  →EACTS guideline for resuscitation of a patient who arrests after cardiac surgery.
・開心術後CPRの注意点
  ・すぐには胸骨圧迫をしない
  ・VF/VTの場合にはまず除細動をする
  ・徐脈性不整脈から心停止となった場合はペーシングを
  ・ルーチンにアドレナリンは投与しない
  ・蘇生の可能性が低ければすぐに再開胸を
・気道・呼吸管理については・・・
  ・挿管されていたらFiO2=100%にしてPEEPをオフにする
  ・100%酸素のバッグバルブマスクに変えて
   挿管チューブの位置確認とカフ圧確認
  ・両側の胸郭運動、呼吸音確認(気胸血胸の評価)
  ・緊張性気胸が疑われたら第2肋間鎖骨中線に
   太いカニューレを留置
・CPAの確認
  ・まず頸動脈を触れる(10秒以内)
  ・その間にA lineやCVP、肺動脈圧PAPなどを確認する
  ・頸動脈も触れず波形が出ていなければ
   CPAとして人を集めて蘇生開始
  ・いずれかがある場合はNBPなども確認
・胸骨圧迫前に
  ・VF/pulseless VT
     →まずは心拍再開するまで3回DCを行う
     →心拍再開しなければ胸骨圧迫を行う
     →アミオダロン300mgをCVから静注
     →緊急再開胸の準備をしながら
      2分ごとのCPRとDCを継続する
  ・Brady cardia / asystole
     →心外膜ペーシングがあればすぐに
      DDDでbpm90にて最大出力にてpacingを行う
      (なければ経皮ペーシングを)
     →1分間で効果なしor1分以内にpacingできない場合は
      胸骨圧迫を開始する
     →可及的にアトロピン3mg投与を考慮する
          →緊急再開胸までCPR継続
  ・PEA
     →pacingをしている場合は
      VF誘発の可能性があるので中止する
     →緊急再開胸までCPRを行う
・胸骨圧迫を直ちには行わない理由
  ・2分以内に除細動すると生存が増えるという報告が多い
  ・胸部術後の胸骨圧迫による心損傷が多数報告されている
・ペーシングについて
  ・Pacingの有用性を示した報告はない
  ・侵襲性は低い
   →心停止、重度の徐脈に対してはまず試みるべきとの推奨
・アドレナリンについて
  ・心臓手術後の心停止にアドレナリンの有用性を示す研究はない
  ・一般的な心停止に対するアドレナリンの有用性は
   動物実験レベルのものしかない
  ・自己心拍再開後に重度の高血圧で大量に失血して
   心停止になった報告がある
   →可逆的な原因があったときに
    重度の高血圧をきたすリスクがある
 →アドレナリンのルーチンでの使用を推奨しない
 →0.1-0.3㎎静注を推奨
・再開胸について
  ・胸骨正中切開後の患者は再開胸が容易である
  ・心停止後10分以内に開胸した方が
   生存率が高かったとの報告がある(48% vs 12%)
  ・EACTSでもCPRが5~10分以上必要であると予測される場合は
      適応になるとしている
  ・術後10日は癒着が形成されないため再開胸を推奨している