「HITについて」
・HITはヘパリンによる重大な副作用の一つ
・ヘパリン依存性自己抗体の出現が原因
・発症機序から2つに分類される
・I型
・ヘパリン投与後2-3日で発症
・非免疫機序
・血小板は10-20%の減少
・合併症は少ない
・ヘパリン継続可能、自然に回復a
・Ⅱ型
・ヘパリン投与後5-14日で発症
・ヘパリン依存性抗体の出現
・血小板は30-40%の減少
・動脈血栓の危険性
・ヘパリン中止で回復
・代替薬による抗凝固療法継続
・HITのリスク
・未分画ヘパリン>低分子ヘパリン (2.6% vs 0.2%)
・高容量>超高容量(CPB)>低用量(皮下注)
・女性>男性
・外科患者>内科患者(血管損傷が原因?)
・臨床的特徴
・ヘパリン投与開始5-14日に血小板減少が発症
・100日以内にヘパリン投与歴があれば急性発症を来すこともある
・Plt値は50%以下または10万/μl以下に減少
・Plt値は2万/μl以下になることはまれ
・臨床的特徴
・出血傾向を来すことはほとんどない
・約50%に血栓塞栓症が発症する
→静脈血栓症:深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症
→動脈血栓症:脳梗塞、心筋梗塞、四肢動脈閉塞症
→透析での回路内凝血
・4T'sによるHITの臨床診断
→3点以下可能性低い、6点以上可能性高い
・HIT抗体測定法
・機能的測定法:特異度が高い
・14C-セロトニン放出試験→日本では行えない。
・血小板凝集試験
・マイクロパーティクル法など
・免疫学的測定法:感度が高く特異度は低い
・酵素免疫測定法(ELISA)
・化学発光免疫測定法
・ラテックス免疫比濁法など
・治療
・すべてのヘパリン投与を中止
→圧ライン中のヘパリン加生食、
ヘパリンコーティング回路など
・代替の抗凝固療法
→行われない場合は、約6%/dayの患者で
血栓塞栓症を発症する
・抗トロンビン薬:アルガトロバン
・合成Ⅹa阻害薬:フォンダパリヌクス
・アルガトロバン
・10mg/2ml 1A
・フィブリン形成阻害、血小板凝集阻害
・主に肝代謝 ⇒腎機能低下でも使用可能
・アンチトロンビンⅢ活性が低くても使用可能
・半減期 45分
・拮抗薬なし
・モニタリング:aPTT 、ACT
・具体的な投与量
・2μg/kg/min(0.7μg/kg/min)で投与開始
・2時間ごとに採血を行い、aPTT 1.5-3.0倍(100秒以下)で調節
・最初の24時間は2時間ごと、その後は24時間ごとに採血
・ワーファリン投与にスイッチ 血栓症なし:最低4週間継続
血栓症あり:3ヵ月程度継続
・最低5日間はワーファリンとアルガトロバンの併用
・併用した状態でアルガトロバン 2γ以下で、
PT-INRを4以上とする
・アルガトロバンを中止し4-6時間後にPT-INR測定
・PT-INR 2-3倍ならばそのまま継続。
2倍以下ならアルガトロバン再開しワーファリン増量。
翌日再評価。
・ワーファリン移行時の注意
・急性期HIT患者にワーファリンを投与すると、
凝固阻止因子(プロテインC)の低下が率先して起こり、
逆に血栓傾向へと傾く。
・Plt値が15万/μl以上に回復してから移行
・その後の対応
・HIT抗体は約50-85日で陰性化する
・HIT抗体が陰性化した後はヘパリンを再使用しても
HITを必ずしも発症しないとされている。
・待機的心臓手術
・100日以上待ち、HIT抗体を陰性化させる。
・人工心肺中はヘパリンを使用(未分画ヘパリン)
・術前、術後の抗凝固はアルガトロバンを使用する。
・緊急の心臓手術時
・CPB使用時:アルガトロバン 0.1mg/kg投与後5-10γで持続投与
評価はACT値で行う
・オフポンプ:アルガトロバン 2.5γ持続投与
ACTをコントロールの2倍程度にする
・Up To Dateによると・・・
→血漿交換を行い、HIT抗体の力価を弱めながらヘパリン使用
・海外のガイドラインでは
・肝機能、腎機能両方が悪い患者にbivalirudinの使用を推奨する。
・HIT抗体陽性患者が緊急心臓手術を要する場合は、
bivalirudinの使用を推奨する。
・Bivalirudinとは??
・日本未発売
・抗凝固作用、抗血小板作用
・作用発現 5分、半減期 25分
→出血リスクが少ない
・ほぼ血中で代謝(トロンビン、血中>腎)
→肝機能障害でも使用可
・ACT、aPTTでモニタリング可能
・出血合併症は少ないが、PCIでの使用時に
再梗塞やステント血栓症発生率が高い。