麻酔科EBM勉強会 担当:W先生
「周術期脳梗塞」
・各手術における脳卒中合併率
・心臓手術・血管手術:約1〜10%
・一般手術:1%未満(ただし頭頸部手術は5%)
・頸動脈内膜剥離術
・有症状患者(脳梗塞・TIA後):約5%
・無症状患者:約2.5%
・発症時期
・対象リスク群や観察期間がバラバラ
・非心臓手術:
・術中16%、術後84%(中央値2日、最長16日)
・心臓手術:術中35%、術後65%
・病態による分類
・塞栓62%
・分類不能14%
・多因子10%
・低灌流9%
・ラクナ3%
・血栓1%
・出血1%
・潜在性脳梗塞
・明らかな麻痺・言語障害などがなく、MRIで初めて発見される
・心臓手術後の25〜50%に生じる
・術後認知機能低下のリスク
・分水嶺梗塞
・臨床症状があっても画像では診断できない場合がある
・MRI 68% > CT 37 %
・両側の梗塞では、より診断が難しい
・MRI 48 % > CT 22 %
・低灌流
・global hypoperfusion
ex)両側の分水嶺梗塞
・relative hypoperfusion
ex)頸動脈狭窄による片側性分水嶺梗塞
・塞栓
・不整脈:心房細動など
・大動脈弓の石灰化・粥腫
・周術期心筋梗塞
・心臓・内頚動脈への術操作
・人工心肺
・卵円孔開存
・脂肪塞栓
・手術侵襲→易血栓性
→術後14-21日まで
・易血栓性のリスク因子
・全身麻酔
・術後脱水
・ベッドレスト
→抗血小板薬・抗凝固薬の使用は一時的に過凝固を更に亢進
→しかし安全性が認められてきた
・一般外科手術における脳卒中リスク因子
・脳卒中の既往
・心疾患
・高血圧
・糖尿病
・末梢血管疾患
・心房細動
・On-Pump vs Off-Pump CABG
・Off-Pumpの方が周術期脳梗塞発生率が少ない傾向
→有意差がない報告もあり
・TEE、epiaortic echo、血栓フィルターなどの併用でリスク↓
・エコーでの粥腫
→>5mm:no-touch technique、Off-Pump
→3-5mm:カニュレーション位置検討、
・最小限のクロスクランプ(シングルクランプ)
・心臓手術における脳卒中リスク因子
・女性
・高齢
・大血管手術
・末梢血管疾患
・脳卒中の既往
・心機能低下
・慢性腎障害
・高血圧
・糖尿病
・心房細動
・緊急手術
・人工心肺時間
・CEAにおける脳卒中リスク因子
・術側と反対側の内頸動脈閉塞
・術側の脳卒中・TIAの既往
・高血圧(拡張期血圧>90mmHg)
・糖尿病
・左内頸動脈に対するCEA
→女性は男性と比較してCEAの効果は少ない
・術前術後の血圧コントロール
・収縮期血圧<180mmHg
・拡張期血圧>110mmHg
であれば脳梗塞のリスクは増加しない
・拡張期血圧>110mmHgは心筋梗塞・脳梗塞のリスク
・術中血圧コントロール
・平均血圧が普段より10mmHg以上低下すると
→脳梗塞リスクは4倍に増加する
・人工心肺中の平均血圧はcontroversial
2014年3月13日木曜日
TAVIの術後管理
ICU勉強会 担当:S先生
「TAVIの術後管理」
・術後問題となりうる点
・神経学的な問題(譫妄・痛み・TIA&CI)
・循環器の問題(不整脈、ARetc.)
・呼吸器不全
・腎不全
・バスキュラーアクセス部位に生じる問題
・抗血小板・抗凝固療法
・術後に言及のあるガイドライン
→2012 ACCF/AATS/SCAI/STS EXpert Consensus
Document on Transcatheter Aortic Valve Replacement
・術後せん妄
・ガイドラインには特に記載なし
・後ろ向きの研究ではTAで51%、TFで16%発生
→ICU滞在期間が要因?(TA 84hr v.s. TF36hr)
・TAVI患者はPODの危険因子多し。
→高齢(平均83歳)、合併症の多さ、ICU入室など。
→ルーチンにCAM-ICUなどで評価してもよいのでは?
・活動低下型の譫妄に注意
・治療は一般に準じて(ハロペリドール・クエチアピン・オランザピン)
・鎮痛
・TAの場合はかなり痛い
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・持続肋間神経ブロック
・創部浸潤麻酔
・麻薬/非麻薬系鎮痛薬
・硬膜外麻酔は血腫の問題があり推奨されない
・155名を対象とした研究
→硬膜外麻酔の方が呼吸器合併症と
30日以内の合併症発生率が低かったという報告も
・TFでは?
腸骨鼠径~腸骨下腹神経ブロック単体で手術を行った場合、
全身麻酔と比較して手術室滞在時間と入院期間の減少が認められた
・TIA&脳梗塞
・TAVI後の脳梗塞発生率
→TFで2.9~9.1%、TAで1.5~6.7%
・31名のTAVI患者を対象に拡散強調MRIを撮影したところ
77%に脳虚血があったという報告がある
・術後1週間以内で生じることが多い。
・PARTNER trialでは12/31が2日以内。
・その他の報告でも24時間以内にもっとも多いとされている
・中大脳動脈領域の梗塞が多く、症状はすぐに出やすい
・治療は?
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・出血性梗塞の場合はすぐに抗凝固・抗血小板薬をストップ
・FFPなどの輸血を行う
・メジャーな血管では抗凝固療法or血栓除去術を考慮
・Caのよるものが多いが、血栓によるものはrt-PAも考慮する
→出血のリスクに注意。
・マイナーな血管の場合の治療はアスピリン
・Afありは抗凝固も
・心腔内血栓あるときはヘパリン化を
・患者が安定していて頸・椎骨動脈閉塞や頭蓋内占有病変が
見当たらないとき
→心エコー、ホルター心電図など原因の究明を
・再梗塞予防
→アスピリンor徐放性チエノピリジンorクロピドグレルの
使用を推奨
→アスピリンは必ず飲む
・完全房室ブロック
・術前からの伝導遅延や脚ブロックがリスク
・埋め込み弁による伝導路の障害が原因
・Sapienでは1.8%~8.5%で生じる
・ほとんどが術中~術直後に生じるが30日後に生じた例も
・発症していなくてもリスクのある患者にはバックアップが無難・・・
・ベータブロッカーはリスク患者は控える
・AF
・PARTNERtrialでは25%は術前からAF
・新規発症は0.6~8.6%%とされているが31.9%という報告もあり
・TA、LAサイズ大がリスク因子と考えられている
・発症時は通常のAF治療を
・AR
・術後のparavalvular leakageは85%に起こる。
→1年後でも75%は残存
・そのうち3分の1以上はmild以上のAR(3度以上は稀)
・弁周囲の高度石灰化が要因
・SevereARが残ると明らかに予後に影響する
→valve-in valve or AVR
・mild-moderateARが残っている場合は・・・
→ACCF/AATS/SCAI/STS もお手上げ
→一般的なAR管理を行うくらいしかない
・その他の循環器合併症
・ショック・LOS
→IABP、PCPS、カテコラミン、利尿薬など
・弁輪部破裂
→緊急開心術 血圧管理に注意
・人工弁の移動・変位
→valveの拡張不足による。
→術後に生じた例はない。
・冠動脈入口部狭窄によるMI
→PCI or CABG
・心破裂
→TAでリスク↑ 血圧管理に注意
・とはいえ目標血圧ははっきりしない。
・平均血圧60~80くらいで管理。
・呼吸不全
・PARTNERtrialでは・・・
→41%がCOPDで21%は酸素投与を要していた
・術後肺障害が生じる割合
→TFで1%、TAで2%との報告がある
・再挿管の原因
→痛みのコントロール不良と肺水腫
・術後volume負荷が必要な症例が多い。
→肺水腫になりがち。
・胸水貯留も多い。
→評価・胸水穿刺が必要になることも
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは“早期抜管“を推奨しているのみ
・6分歩行の距離でリスクを判別できるという報告も。
・腎不全
・ガイドラインに記載はない
・PARTNERtrialでは・・・
→5%、他の報告では50%の患者で術前腎機能低下あり
・造影剤使用が必須のためリスクは高い
・小規模stadyでは・・・
→9%のAKI発症、術前からの腎機能低下例では35%の発症。
・対策
・還流圧を保つ
・Nアセチルシステイン
・ハイドレーション
→心肺機能が悪い患者が多く、避けるのが無難。
・術後透析
・造影剤の使用量を減らす
・Vascular access部位に生じる問題
・主に後腹膜への出血、動脈解離、仮性動脈瘤
・PARTNERtrialでは・・・
→30%に血管障害(16%はメジャートラブル)
・TFでの予測因子
・施設経験
・血管石灰化
・SFAR(血管径÷シースの外径)<1.05
・後ろ向き研究によると・・・
→後腹膜血腫の症状
・鼠径上部の圧痛100%
・背部痛64%
・下肢の神経症状34%に見られた
・術後のショックの原因の一つとして覚えておく必要あり
・沈子をしっかり固定、外した後も注意することが重要
・術後抗凝固療法
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・アスピリン(81mg/day 永久に)
+クロピドグレル(75mg/day 3-6か月)
or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
・CCSでは・・・
・低用量アスピリン(永久に)
+チエノピリジン系抗血小板剤(1-3か月)
or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
・PARTNERtrialでは・・・
・アスピリン(81mg/day)
+クロピドグレル(75mg/day 90日間)
・エビデンスはない
「TAVIの術後管理」
・術後問題となりうる点
・神経学的な問題(譫妄・痛み・TIA&CI)
・循環器の問題(不整脈、ARetc.)
・呼吸器不全
・腎不全
・バスキュラーアクセス部位に生じる問題
・抗血小板・抗凝固療法
・術後に言及のあるガイドライン
→2012 ACCF/AATS/SCAI/STS EXpert Consensus
Document on Transcatheter Aortic Valve Replacement
・術後せん妄
・ガイドラインには特に記載なし
・後ろ向きの研究ではTAで51%、TFで16%発生
→ICU滞在期間が要因?(TA 84hr v.s. TF36hr)
・TAVI患者はPODの危険因子多し。
→高齢(平均83歳)、合併症の多さ、ICU入室など。
→ルーチンにCAM-ICUなどで評価してもよいのでは?
・活動低下型の譫妄に注意
・治療は一般に準じて(ハロペリドール・クエチアピン・オランザピン)
・鎮痛
・TAの場合はかなり痛い
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・持続肋間神経ブロック
・創部浸潤麻酔
・麻薬/非麻薬系鎮痛薬
・硬膜外麻酔は血腫の問題があり推奨されない
・155名を対象とした研究
→硬膜外麻酔の方が呼吸器合併症と
30日以内の合併症発生率が低かったという報告も
・TFでは?
腸骨鼠径~腸骨下腹神経ブロック単体で手術を行った場合、
全身麻酔と比較して手術室滞在時間と入院期間の減少が認められた
・TIA&脳梗塞
・TAVI後の脳梗塞発生率
→TFで2.9~9.1%、TAで1.5~6.7%
・31名のTAVI患者を対象に拡散強調MRIを撮影したところ
77%に脳虚血があったという報告がある
・術後1週間以内で生じることが多い。
・PARTNER trialでは12/31が2日以内。
・その他の報告でも24時間以内にもっとも多いとされている
・中大脳動脈領域の梗塞が多く、症状はすぐに出やすい
・治療は?
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・出血性梗塞の場合はすぐに抗凝固・抗血小板薬をストップ
・FFPなどの輸血を行う
・メジャーな血管では抗凝固療法or血栓除去術を考慮
・Caのよるものが多いが、血栓によるものはrt-PAも考慮する
→出血のリスクに注意。
・マイナーな血管の場合の治療はアスピリン
・Afありは抗凝固も
・心腔内血栓あるときはヘパリン化を
・患者が安定していて頸・椎骨動脈閉塞や頭蓋内占有病変が
見当たらないとき
→心エコー、ホルター心電図など原因の究明を
・再梗塞予防
→アスピリンor徐放性チエノピリジンorクロピドグレルの
使用を推奨
→アスピリンは必ず飲む
・完全房室ブロック
・術前からの伝導遅延や脚ブロックがリスク
・埋め込み弁による伝導路の障害が原因
・Sapienでは1.8%~8.5%で生じる
・ほとんどが術中~術直後に生じるが30日後に生じた例も
・発症していなくてもリスクのある患者にはバックアップが無難・・・
・ベータブロッカーはリスク患者は控える
・AF
・PARTNERtrialでは25%は術前からAF
・新規発症は0.6~8.6%%とされているが31.9%という報告もあり
・TA、LAサイズ大がリスク因子と考えられている
・発症時は通常のAF治療を
・AR
・術後のparavalvular leakageは85%に起こる。
→1年後でも75%は残存
・そのうち3分の1以上はmild以上のAR(3度以上は稀)
・弁周囲の高度石灰化が要因
・SevereARが残ると明らかに予後に影響する
→valve-in valve or AVR
・mild-moderateARが残っている場合は・・・
→ACCF/AATS/SCAI/STS もお手上げ
→一般的なAR管理を行うくらいしかない
・その他の循環器合併症
・ショック・LOS
→IABP、PCPS、カテコラミン、利尿薬など
・弁輪部破裂
→緊急開心術 血圧管理に注意
・人工弁の移動・変位
→valveの拡張不足による。
→術後に生じた例はない。
・冠動脈入口部狭窄によるMI
→PCI or CABG
・心破裂
→TAでリスク↑ 血圧管理に注意
・とはいえ目標血圧ははっきりしない。
・平均血圧60~80くらいで管理。
・呼吸不全
・PARTNERtrialでは・・・
→41%がCOPDで21%は酸素投与を要していた
・術後肺障害が生じる割合
→TFで1%、TAで2%との報告がある
・再挿管の原因
→痛みのコントロール不良と肺水腫
・術後volume負荷が必要な症例が多い。
→肺水腫になりがち。
・胸水貯留も多い。
→評価・胸水穿刺が必要になることも
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは“早期抜管“を推奨しているのみ
・6分歩行の距離でリスクを判別できるという報告も。
・腎不全
・ガイドラインに記載はない
・PARTNERtrialでは・・・
→5%、他の報告では50%の患者で術前腎機能低下あり
・造影剤使用が必須のためリスクは高い
・小規模stadyでは・・・
→9%のAKI発症、術前からの腎機能低下例では35%の発症。
・対策
・還流圧を保つ
・Nアセチルシステイン
・ハイドレーション
→心肺機能が悪い患者が多く、避けるのが無難。
・術後透析
・造影剤の使用量を減らす
・Vascular access部位に生じる問題
・主に後腹膜への出血、動脈解離、仮性動脈瘤
・PARTNERtrialでは・・・
→30%に血管障害(16%はメジャートラブル)
・TFでの予測因子
・施設経験
・血管石灰化
・SFAR(血管径÷シースの外径)<1.05
・後ろ向き研究によると・・・
→後腹膜血腫の症状
・鼠径上部の圧痛100%
・背部痛64%
・下肢の神経症状34%に見られた
・術後のショックの原因の一つとして覚えておく必要あり
・沈子をしっかり固定、外した後も注意することが重要
・術後抗凝固療法
・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
・アスピリン(81mg/day 永久に)
+クロピドグレル(75mg/day 3-6か月)
or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
・CCSでは・・・
・低用量アスピリン(永久に)
+チエノピリジン系抗血小板剤(1-3か月)
or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
・PARTNERtrialでは・・・
・アスピリン(81mg/day)
+クロピドグレル(75mg/day 90日間)
・エビデンスはない
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