2014年5月14日水曜日

周術期β遮断薬

麻酔科EBM勉強会  担当:K先生

「周術期βブロッカー」

・β受容体
  ・主に心筋に存在するβ1受容体
  ・平滑筋に存在するβ2受容体
  ・脂肪細胞に存在するβ3受容体
・βブロッカーについて
  ・β1選択性
    →非選択型β遮断薬は、β2受容体も阻害する
    →気管支喘息患者には禁忌となる。
  ・脂溶性or水溶性
        →脂溶性のβ遮断薬は肝代謝
       →作用時間が短い
    →水溶性のβ遮断薬は腎排泄
       →作用時間が長い。
  ・ISA(内因性β刺激作用)
    →交感神経が興奮しているときはβを抑制
    →興奮していないときはβをわずかに刺激する。
    ・ISA+は心拍出量を減少させすぎない
      →高齢者や徐脈の患者さんに適している。
    ・ISA-は心拍出量を減少させる
      →狭心症や頻脈の患者さんに適している。
      ・心筋梗塞の再発や虚血性疾患を防止
      ・心不全の予後を改善する。
・降圧薬としてのβ遮断薬
  ・臨床応用され半世紀以上経過する。
  ・高血圧治療ガイドライン(JSH2009)
     Ca拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,
     アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬と並ぶ高血圧の第一選択薬
  ・心臓血管死や心血管系イベントの観点からは・・・
    ・降圧薬の種類間で差異を認めない。
    ・むしろ目標血圧までの積極的な降圧の重要性を強調
    ・メタ解析
      →降圧薬の種類に有意差なし。
      →降圧の程度と心血管イベントのオッズ比との間に
       逆相関関係が認められると報告
  ・高血圧治療ガイドライン(GL)2013改訂
    →第一選択薬からβ遮断薬を外し、
    →Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の4クラスとした
・抗不整脈薬としてのβ遮断薬
  ・術後心房細動
    ・心臓手術
      →CABG後に最も多く(30%)発症する。
      →弁置換術では30-40%、複合手術では40-50%で発症        Almassi GH et al: Ann Surg.1997;226 :501-11
    ・肺手術
      →葉切除で10-20%,全摘術では40%の症例で発症する 
  ・術後心房細動は術後2日目にもっとも多く発症
  ・その40%が再発
  ・発症すると・・・
    ・在院日数の延長
    ・脳梗塞発症率は3倍
    ・周術期死亡率も悪化
  ・β遮断薬の効果  
   ・頻脈性頻脈,上室性不整脈,
     さらにリドカイン抵抗性の心室細動に対しても有効との報告。
   ・アミオダロンとともに術後心房細動予防効果は確立。
   ・周術期心房細動発症時の治療にも使用される.
     ・ACC/AHA/ESC心房細動治療ガイドライン
       →Class Ⅰで推奨(LOE A),
     ・ACC/AHA冠動脈バイパスガイドライン
       →Class Ⅰで勧告(LOE B),
     ・ACC/AHA非心臓手術のための
      周術期心血管系評価・管理ガイドライン
       →Class Ⅰで推奨(LOE B)
・虚血性心疾患におけるβ遮断薬
  ・陰性変力作用による心収縮力抑制
  ・陰性変時作用による心拍数低下
  ・心筋酸素消費量の低下
  ・拡張時間延長による拡張機能の改善
  ・交感神経・レニン抑制による血管拡張
  ・β遮断薬,とくにカルベジロールは抗酸化作用が強い。
    → アポトーシス抑制にも関与する
  ・β遮断薬の有効性のメカニズムは複合的
    →単一機能で説明することができない
・ACC/AHAガイドライン~非心臓手術の周術期β遮断薬
  ・服用中のβ遮断薬は継続(ClassⅠ; LOE C)
  ・血管手術・高リスク手術
    →β遮断薬の投与を推奨(ClassⅡa; LOE B)
  ・新たに徐脈・低血圧に注意して使用
  ・低リスク症例に対する使用は明らかでない(ClassⅡb;LOE B)
  ・周術期に新たに開始する高用量β遮断薬の投与は有害
                                          (ClassⅢ;LOE B)



小児の気道管理

麻酔科勉強会  担当:W先生

「小児の気道管理」

・無呼吸後の酸素飽和度低下時間
  ・肥満127kg大人<10kg子供<70kg大人
・解剖学的違い
  ・相対的に舌が大きく、鼻腔が狭い
  ・喉頭位置は前方・頭側(成人C6、小児C4)
  ・喉頭蓋が長い
  ・声帯が傾斜し、円錐型の喉頭は輪状軟骨部が最も狭い
  ・相対的に頭が大きく、後頭部突出
    →仰臥位で自然と首が屈曲
・生理学的違い
  ・酸素予備量・機能的残気量が小さい
  ・酸素消費量が多い(成人3ml/kg/min、乳児6ml/kg/min)
    →上気道閉塞や無呼吸で急激に酸素飽和度が低下する
  ・新生児と乳児
    →肺胞が少なく、肺の弾性収縮力・コンプライアンスが小さく、
     胸郭コンプライアンスが大きい
    →無気肺と肺内シャントのリスクが増大
・低酸素血症
  ・気管挿管に手間取る、迅速導入
  ・喉頭痙攣
    →感冒やインフルエンザ、興奮期や第2期の麻酔深度で抜管
  ・覚醒時でも普段から息こらえがある
    ・息こらえ=Valsalva様現象
       →声門閉鎖により腹腔・胸腔内圧が上昇
       →換気困難となり肺血管抵抗↑、
        卵円孔開存から右→左シャントが生じる可能性
・準備は万端に
  ・薄い円座と肩枕
  ・経口・経鼻エアウェイが非常に有効
  ・曲型ブレード
    →アデノイドや扁桃肥大で視野が悪いとき
    →舌を圧排し視野を確保
  ・直型ブレード
    →喉頭が前方頭側にあり喉頭蓋で喉頭が見えないとき
  ・基本的に「~1歳が直型、1歳~が曲型」
  ・LMA、気管支ファイバー、AWSなど
  ・挿管チューブ
    ・カフ無し:4+年齢/4
    ・カフ有り:3.5+年齢/4
    ・少なくとも前後3サイズを準備
    ・カフ有りチューブでは、カフを輪状軟骨より遠位に挿入
  ・カフ圧:25~30cmH2O未満?
  ・成人の毛細管圧は25~35mmHgだが小児は不明
  ・気道内圧25cmH2Oでリークがない場合
    →抜管後の咳嗽・喉頭痙攣が多いという報告
・小児の迅速導入
  ・準備万端にし、導入時役割分担を決定
  ・可能であれば予め胃管で胃内容吸引
  ・マスク密着で酸素化
  ・輪状軟骨の位置確認
  ・薬剤投与
     ・アトロピン0.01mg/kg
     ・チオペンタール4~6mg/kg
     ・ロクロニウム0.9mg/kg
  ・入眠後に輪状軟骨圧迫
  ・マスク換気は行わず30~60秒後に挿管
  ・挿管確認
  ・挿管失敗時は輪状軟骨を圧迫しながらマスク換気を行い再度挿管
・ロクロニウムを増量
  →効果発現は早くなるが作用時間が延長する
・不適切な輪状軟骨圧迫
  →喉頭展開不良・気道閉塞・食道損傷の原因となる
・浅麻酔での輪状甲状軟骨圧迫
  →バッキングや咳を誘発させる
・輪状甲状軟骨に必要な圧
  ・成人では30~40N(約3~4kgf)が推奨
  ・小児では規定されていない
・迅速導入変法
  新生児
   →十分太い胃管で体位を変えながら胃を圧迫しつつ吸引
   →誤嚥には問題のないレベルまで胃内容が減少する
  ・十分に胃を吸引した後に、
   単なる急速導入または輪状軟骨を圧迫しながら
   換気を行うmodified RSIが行われることも多い
・薬剤投与後に輪状軟骨を圧迫しながら100%酸素でマスク換気
  →筋弛緩が得られたのちに挿管する方法も。
・腸重積整復について
  ・「非観血的整復術を無麻酔で行っても全身麻酔下で行っても
    整復率に差はなく、全身麻酔は必要ない:推奨度C2」
  ・動物実験
     ・鎮静は息こらえの働きを抑制させる。
       →穿孔の危険性が高くなる可能性。
・腸重積症
  ・6ヶ月〜2歳未満、男児に多い
  ・三大症状は、腹痛・嘔吐・血便
  ・脱水が強い
  ・発症から時間経過が短く、軽症のものは注腸整復が容易
  ・開腹手術適応
    ・イレウスや消化管穿孔を合併した症例
    ・器質的疾患を持ち整復不可能であった症例など
  ・当院では原則全身麻酔だが・・・
    ・そもそも全身麻酔で行わない
    ・スキサメトニウムによる迅速導入
    ・筋弛緩の発現が早い
    ・非脱分極性筋弛緩薬による迅速導入
    ・priming principle
    ・意識下挿管


術後認知機能障害~POCD

「麻酔科EBM勉強会」 担当;W先生

「術後認知機能障害:POCD」

・POCD(Postoperative cognitive dysfunction)
 ・術後に注意力・実行機能・記憶などが低下
 ・せん妄・認知症とは異なる
 ・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載がない
 ・明確な定義がなく診断基準がバラバラ
 ・診断には術前術後の神経心理学検査が必要
 ・多くは可逆的で大半は治癒
・厳しい診断基準
 ・認知機能の任意の2領域が-2SD以下
 ・複合認知機能スコアが-2SD以下
・やや緩い診断基準:多
 ・認知機能の任意の1領域が-1SD以下
 ・複合認知機能スコアが-1SD以下
 ・術前術後検査の信頼性、検査時の意欲などにより
  認知機能スコアの解釈が難しい
    →ある研究では33%の患者がPOCDと診断されてしまった
・POCDの診断
 ・reliable change index
   →学習効果を除外するため、
    対照群の平均学習効果を補正因子として差し引く
・せん妄とは
  ・高齢者に起こる急性の認知機能低下
  ・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載あり
  ・覚醒レベル・注意力・論理的思考などの障害
  ・急性発症、日内変動あり
  ・非術後のせん妄は、中等度認知機能障害者や
   早期認知症患者で起こりやすく、
   全身状態増悪や死亡率増加に関係
 ・非術後のせん妄
    →中等度認知機能障害者や早期認知症患者で起こりやすく、
     全身状態増悪や死亡率増加に関係
    →術後せん妄は術後早期の65歳以上の患者に起こりやすく、
     術後1〜2週間以内に改善
 ・術後せん妄とPOCDの関係、
    →エビデンスがちらほら
・認知症とは
  ・脳機能の不可逆的&退行性変化
     ex)Alzheimer病、Lewy小体型、脳血管性、Huntington
  ・DSM-Ⅳ、ICD-10に記載あり
  ・記憶、性格変化、抑うつ、判断力低下、睡眠障害、ADL低下
    →家族認識☓、寝たきり
 ・認知症とPOCDの関係性に結論は出ていないが…
  →入院を繰り返すと認知機能↓
 ・特定の全身麻酔薬は病理学的変化をもたらす可能性
   ex)イソフルラン
     →脳内でβ-アミロイドやリン酸タウ蛋白を産生促進
     →認知症発症or進行を加速?
 ・手術は神経系の炎症を促進
   →認知症発症?
 ・手術&麻酔と認知症の関係は推測
   →大半の研究で否定されている
・POCDの予防と治療
 ・低血圧・低酸素・低血糖・代謝異常を回避
   →術中は十分な脳灌流を保つ!
 ・ICU入室者はPOCDのハイリスク!
 ・脳の臓器不全:SIRS、MODSの一症状
 ・他臓器不全の予防・治療が重要
    ex)AKI→原因検索・治療、透析など
 ・手術合併症の回避
    ex)出血、感染
 ・多面的治療
    ・疼痛・炎症への多面的アプローチ
    ・周術期の睡眠障害を最小に
    ・身体的・精神的活動を活性化:リハビリ
・いろいろな報告
  ・心臓手術を受けた患者の41%が
   5年後も認知機能が低下していた
         NEJM 2001; 344(6): 395-402
    →認知機能低下は心臓手術の主要合併症だ!
    →おそらくCPBが原因だ!  
    →off-pump手術の登場
  ・非心臓大手術を受けた高齢者の46%が
   1年後も認知機能が低下していた
         Anesthesiology 2010; 112(4): 852-9
    →心臓・非心臓に限らず、約半数の患者にPOCDが起こる!
    →International Study of POCD
     ・1994年設立、インパクト大
     ・非心臓手術でのPOCDの特徴を調査
・心臓手術、特にCPBを用いた術後は、重度のPOCDが持続する。
・POCDの遺伝的素因
  →Alzheimer病などの変性疾患とoverlapしている?
・アポリポ蛋白E遺伝子のエプシロンアレル
  →ADのリスク因子、脳損傷後の予後不良因子
  →加齢での認知機能低下を加速
・POCDとアポリポ蛋白E遺伝子との関連は示されていない
 →POCDの遺伝的素因は存在すると予想
 →断基準が曖昧なため調査は難しい


2014年4月16日水曜日

痛み

麻酔科勉強会  担当:S先生

「痛み」

・IASPによる定義(1979)
  →実際に何らかの組織損傷が起こったとき、
   または組織損傷を起こす可能性があるとき、
   あるいはそのような損傷の際に表現される、
   不快な感覚や不快な情動体験」
  →痛みは心と体の両面的現象
・痛みの分類
  ・急性痛
    ・病因を同定しやすい
    ・数日から数週間の経過が多い
    ・多くは侵害受容性
  ・慢性痛
    ・治療を要すると期待される時間の枠組みを越えて持続する痛み,
     あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛み
    ・病因が多因子
    ・期間不定(早期から生じていることも)
    ・侵害受容性 and/or 神経障害性
・神経障害性痛
 →体性感覚伝導路の損傷や病変によって直接に引き起こされる痛み
   ・古典的特徴
     ・持続的および発作性の自発痛
     ・アロディニア
     ・痛覚過敏
     ・しびれ
 ・神経障害性痛疾患
   ・脳卒中後痛(視床痛)
   ・脊髄損傷後痛
   ・多発性硬化症
   ・幻肢痛
   ・腕神経叢引き抜き損傷後痛
   ・帯状疱疹後神経痛
   ・三叉神経痛・舌下神経痛
   ・術後瘢痕性痛
   ・CRPSタイプⅡ(カウザルキー)
   ・腰下肢痛に伴う神経障害性痛
   ・糖尿病性ニューロパチー
   ・抗癌薬性ニューロパチー
   ・HIV性ニューロパチー
 ・神経障害性痛薬物療法アルゴリズムについて
・帯状疱疹後神経痛
 ・水痘・帯状疱疹ウイルス感染
   ・水痘・帯状疱疹ウィルスに対する免疫
     →正常人でも加齢とともに低下する。
   ・帯状疱疹の90%は明らかな基礎疾患がない人に起こる。
   ・80歳以上まで生きると50%の人が帯状疱疹にかかる。
 ・帯状疱疹痛の時間的変化
 ・帯状疱疹
   ・神経に沿って炎症を生じ、神経障害
   ・水疱を伴う皮疹と強い痛み
 ・帯状疱疹後神経痛
   ・炎症により神経が回復不能な損傷をうけた状態
   ・50代以降に発症すると神経痛に移行しやすい
・帯状疱疹後神経痛に移行する危険因子
  ・皮疹の重症度
  ・加齢
    →60歳以上では抗ウィルス薬を用いても、
     帯状疱疹発症6か月後に痛みが10~25%の症例で残存。
  ・合併疾患
    →免疫力が低下する疾患が合併する場合。  
  ・臨床像
    ・90%以上の症例で感覚低下
    ・約50%の症例でアロディニア
・早い時期から神経ブロックを行った場合
  →神経痛への移行が少ない傾向がある。
・治療
  ・薬物療法
  ・急性期のワクチン投与も有効
  ・神経ブロック
    ・体性神経ブロックは有効
    ・交感神経ブロックは無効
    ・ステロイド併用神経根ブロックは有効
・CRPS(複合性局所疼痛症候群)
  ・銃創による神経損傷後に遷延する痛みをカウザルキーと呼んだ
  ・外傷後遷延性疼痛患者で交感神経機能亢進を示すもの
    →反射性交感神経性ジストロフィー
  ・1994年に両者を内包する概念としてCRPSと呼ぶことになった
    ・神経損傷がない場合がタイプⅠ
    ・ある場合がタイプⅡ
  ・症状
    ・原因から予想される程度を超える激しい痛み
    ・着衣や微風などの触感が痛みとして認識(アロディニア)
    ・皮膚の変化(色の変化、光沢、乾燥など)
    ・浮腫  
    ・手や足の機能低下
  ・判定基準
    →判定基準を見ればわかる通り検査は不要だが・・・
      ・両側の同時撮影写真
      ・サーモグラフィー
      ・両側同時撮影のX線写真
      ・骨密度計測値
      ・筋電図、神経伝導速度検査
    →労災保険に必要
  ・病態
    ・神経損傷→証明できないことも
    ・不動化による障害(ギプス)
    ・Neglect-like現象
             →触覚の高次機能↓や思うように動かない
    ・自律神経症状
    ・社会的因子(自損では↓)
    ・心理的因子(うつなどでは↑)
  ・治療
    ・神経ブロック
    ・交感神経節ブロック(SGB、胸部・腰部)(推奨度C)
    ・持続硬膜外ブロック
    ・末梢神経ブロック
      →経過が長い場合は不可(推奨度C)
    ・社会的因子のある患者は要注意
    ・浮腫側に局所静脈内ステロイド(GradeⅠ)
  ・薬剤
    ・カルシトニンやビスフォスフォネート(推奨度A)
    ・ステロイド(経口・局所静脈内)(推奨度B)
    ・そのほかは神経障害性痛に対する薬剤(エビデンスなし)
    ・NSAIDsは無効なはずだが出していることが多い
  ・その他
    ・理学療法
      →治療の要
        ・温熱交代浴、光線療法、リハビリ
    ・手術(神経そのもの、偽関節など)
    ・認知行動療法(脳の関与??)
    ・脊髄内刺激電極
    ・エピドラスコピー(腰下肢痛に対して)
    ・人工神経再生




麻酔と睡眠時無呼吸

麻酔科EBM勉強会  担当:M先生

「麻酔と睡眠時無呼吸」

・睡眠時無呼吸
  →慢性的に、睡眠中の部分的もしくは完全な
   上気道閉塞を繰り返す病態
・有病率
 ・中年男性で9%、中年女性で5%
 ・最大90%のOSAS患者が正式な診断をされていない。
・閉塞起点は?
  ・口蓋垂89%
  ・舌根部22%
  ・下咽頭33%
  ・喉頭33%
・OSASの症状
 ・眠っているとき
   ・大きないびきをかく
   ・呼吸の停止
   ・頻回の中途覚醒
 ・日中、起きているとき
   ・耐え難い眠気
   ・集中力の低下
   ・起床時の頭痛
   ・性欲減退
・OSAS患者は交通事故や労働災害といった事故に遭いやすい
・OSASに併存しや
  ・高血圧
  ・肺高血圧(右心不全)
  ・冠動脈疾患
  ・うっ血性心不全
  ・不整脈
  ・耐糖能障害
・メカニズム
  ・睡眠時無呼吸→反復する低酸素&高二酸化炭素血症
     ・酸化ストレス
     ・全身炎症(α、β受容体upregulation)
     ・血管内皮障害
     ・免疫反応
    →心血管疾患、耐糖能障害
・OSASの検査と診断
  ・Polysomnography
  ・AHI(apnea hypopnea index)
   →1時間当たりのApnea、Hypopneaの回数
   →重症度分類
・OSASの合併症
  ・挿管困難
  ・術後低酸素血症、SpO2の低下
  ・血圧変動
  ・術後心筋虚血
  ・術後不整脈
  ・術後せん妄
  ・気道閉塞後肺水腫
  ・呼吸停止
・合併症増加の原因
  ・周術期の薬剤
    →周術期の薬剤の投与(鎮静薬、筋弛緩薬など)
    →上気道の緊張の低下、気道反射の抑制、中枢性換気応答の減弱
    →上気道閉塞を増悪させる
  ・上気道狭窄
    ・元々狭小化している上気道
      →麻酔や手術に伴いさらに狭小化
      →上気道の閉塞を引き起こす
    ・挿管後の声帯浮腫、鼻腔パッキング、NGチューブ、
     血腫などが原因となる
  ・仰臥位はOSASを増悪させる
  ・サーカディアンリズムの乱れ
  ・CPAPの中断
・スクリーニング
  ・ASA(American Society of Anesthesiologists)
    ・BMI35kg/㎡以上
    ・頚部の周囲径男性:17インチ、女性:16インチ以上
    ・気道に影響を与える頭頚部奇形の存在
    ・鼻腔の解剖学的な閉塞
    ・両側扁桃が接触しているまたは接触しそう
       →2つ以上該当で陽性
  ・APSS(Associated Professional Sleep Society)
  ・STOP screening tool
  ・STOP-Bang screening tool
  ・Epworthの眠気テスト(日本呼吸器学会)
・Mallanpati分類からOSASのリスクを予想しよう!
  →Mallanpati分類が1つ上がるごとにOSASのリスクも上昇する

・Recommendation
  ・日中の早い時間帯に手術の予定を入れましょう
  ・CPAPを持参するよう指示しましょう
  ・Difficult Airwayに備えましょう
  ・必要に応じモニタリングできる環境を整えましょう
  ・局所麻酔や神経ブロックを考慮しましょう
  ・導入・抜管時ヘッドアップしましょう
  ・誤嚥の予防をしましょう
  ・術後は上気道閉塞がないか継続した観察を行いましょう
  ・高CO2血症が疑われた場合血ガスを考慮しましょう
  ・麻薬の初回投与は回復室で行いましょう
  ・麻薬の眠剤やアルコールとの併用しないよう指導しましょう



         TAVIセッティング

2014年3月30日日曜日

周術期脳梗塞

麻酔科EBM勉強会  担当:W先生

「周術期脳梗塞」

・各手術における脳卒中合併率
  ・心臓手術・血管手術:約1〜10%
  ・一般手術:1%未満(ただし頭頸部手術は5%)
  ・頸動脈内膜剥離術
     ・有症状患者(脳梗塞・TIA後):約5%
     ・無症状患者:約2.5%
・発症時期
  ・対象リスク群や観察期間がバラバラ
  ・非心臓手術:
    ・術中16%、術後84%(中央値2日、最長16日)
  ・心臓手術:術中35%、術後65%
・病態による分類
  ・塞栓62%
  ・分類不能14%
  ・多因子10%
  ・低灌流9%
  ・ラクナ3%
  ・血栓1%
  ・出血1%
・潜在性脳梗塞
  ・明らかな麻痺・言語障害などがなく、MRIで初めて発見される
  ・心臓手術後の25〜50%に生じる
  ・術後認知機能低下のリスク
・分水嶺梗塞
   ・臨床症状があっても画像では診断できない場合がある
   ・MRI 68% > CT 37 %
   ・両側の梗塞では、より診断が難しい
   ・MRI 48 % > CT 22 %
 ・低灌流
   ・global hypoperfusion
      ex)両側の分水嶺梗塞
   ・relative hypoperfusion
      ex)頸動脈狭窄による片側性分水嶺梗塞
 ・塞栓
   ・不整脈:心房細動など
   ・大動脈弓の石灰化・粥腫 
   ・周術期心筋梗塞
   ・心臓・内頚動脈への術操作
   ・人工心肺
   ・卵円孔開存
   ・脂肪塞栓
・手術侵襲→易血栓性
  →術後14-21日まで
  ・易血栓性のリスク因子
    ・全身麻酔
    ・術後脱水
    ・ベッドレスト
   →抗血小板薬・抗凝固薬の使用は一時的に過凝固を更に亢進
   →しかし安全性が認められてきた
・一般外科手術における脳卒中リスク因子
  ・脳卒中の既往
  ・心疾患
  ・高血圧
  ・糖尿病
  ・末梢血管疾患
  ・心房細動
・On-Pump vs Off-Pump CABG
  ・Off-Pumpの方が周術期脳梗塞発生率が少ない傾向
    →有意差がない報告もあり
  ・TEE、epiaortic echo、血栓フィルターなどの併用でリスク↓
  ・エコーでの粥腫
     →>5mm:no-touch technique、Off-Pump
     →3-5mm:カニュレーション位置検討、
  ・最小限のクロスクランプ(シングルクランプ)
・心臓手術における脳卒中リスク因子
  ・女性
  ・高齢
  ・大血管手術
  ・末梢血管疾患
  ・脳卒中の既往
  ・心機能低下
  ・慢性腎障害
  ・高血圧
  ・糖尿病
  ・心房細動
  ・緊急手術
  ・人工心肺時間
・CEAにおける脳卒中リスク因子
  ・術側と反対側の内頸動脈閉塞
  ・術側の脳卒中・TIAの既往
  ・高血圧(拡張期血圧>90mmHg)
  ・糖尿病
  ・左内頸動脈に対するCEA
 →女性は男性と比較してCEAの効果は少ない
・術前術後の血圧コントロール
  ・収縮期血圧<180mmHg
  ・拡張期血圧>110mmHg
     であれば脳梗塞のリスクは増加しない
  ・拡張期血圧>110mmHgは心筋梗塞・脳梗塞のリスク
・術中血圧コントロール
  ・平均血圧が普段より10mmHg以上低下すると
     →脳梗塞リスクは4倍に増加する
  ・人工心肺中の平均血圧はcontroversial


2014年3月13日木曜日

TAVIの術後管理

ICU勉強会  担当:S先生

「TAVIの術後管理」

・術後問題となりうる点
 ・神経学的な問題(譫妄・痛み・TIA&CI)
 ・循環器の問題(不整脈、ARetc.)
 ・呼吸器不全
 ・腎不全
 ・バスキュラーアクセス部位に生じる問題
 ・抗血小板・抗凝固療法
・術後に言及のあるガイドライン
 →2012 ACCF/AATS/SCAI/STS EXpert Consensus
    Document on Transcatheter Aortic Valve Replacement
・術後せん妄
 ・ガイドラインには特に記載なし
 ・後ろ向きの研究ではTAで51%、TFで16%発生
     →ICU滞在期間が要因?(TA 84hr v.s. TF36hr)
 ・TAVI患者はPODの危険因子多し。
   →高齢(平均83歳)、合併症の多さ、ICU入室など。
     →ルーチンにCAM-ICUなどで評価してもよいのでは?
 ・活動低下型の譫妄に注意
 ・治療は一般に準じて(ハロペリドール・クエチアピン・オランザピン)
・鎮痛
 ・TAの場合はかなり痛い
 ・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
   ・持続肋間神経ブロック
   ・創部浸潤麻酔
   ・麻薬/非麻薬系鎮痛薬
 ・硬膜外麻酔は血腫の問題があり推奨されない
 ・155名を対象とした研究
   →硬膜外麻酔の方が呼吸器合併症と
    30日以内の合併症発生率が低かったという報告も
 ・TFでは?
   腸骨鼠径~腸骨下腹神経ブロック単体で手術を行った場合、
   全身麻酔と比較して手術室滞在時間と入院期間の減少が認められた
・TIA&脳梗塞
 ・TAVI後の脳梗塞発生率
   →TFで2.9~9.1%、TAで1.5~6.7%
 ・31名のTAVI患者を対象に拡散強調MRIを撮影したところ
  77%に脳虚血があったという報告がある
 ・術後1週間以内で生じることが多い。
   ・PARTNER trialでは12/31が2日以内。
   ・その他の報告でも24時間以内にもっとも多いとされている
 ・中大脳動脈領域の梗塞が多く、症状はすぐに出やすい
 ・治療は?
   ・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
     ・出血性梗塞の場合はすぐに抗凝固・抗血小板薬をストップ
     ・FFPなどの輸血を行う
   ・メジャーな血管では抗凝固療法or血栓除去術を考慮
   ・Caのよるものが多いが、血栓によるものはrt-PAも考慮する
     →出血のリスクに注意。
   ・マイナーな血管の場合の治療はアスピリン
    ・Afありは抗凝固も
   ・心腔内血栓あるときはヘパリン化を
   ・患者が安定していて頸・椎骨動脈閉塞や頭蓋内占有病変が
    見当たらないとき
      →心エコー、ホルター心電図など原因の究明を
   ・再梗塞予防
     →アスピリンor徐放性チエノピリジンorクロピドグレルの
      使用を推奨
     →アスピリンは必ず飲む
・完全房室ブロック
 ・術前からの伝導遅延や脚ブロックがリスク
 ・埋め込み弁による伝導路の障害が原因
 ・Sapienでは1.8%~8.5%で生じる
 ・ほとんどが術中~術直後に生じるが30日後に生じた例も
 ・発症していなくてもリスクのある患者にはバックアップが無難・・・
 ・ベータブロッカーはリスク患者は控える
・AF
 ・PARTNERtrialでは25%は術前からAF
 ・新規発症は0.6~8.6%%とされているが31.9%という報告もあり
 ・TA、LAサイズ大がリスク因子と考えられている
 ・発症時は通常のAF治療を
・AR
 ・術後のparavalvular leakageは85%に起こる。
   →1年後でも75%は残存
 ・そのうち3分の1以上はmild以上のAR(3度以上は稀)
 ・弁周囲の高度石灰化が要因
 ・SevereARが残ると明らかに予後に影響する
   →valve-in valve or AVR
 ・mild-moderateARが残っている場合は・・・
   →ACCF/AATS/SCAI/STS もお手上げ
   →一般的なAR管理を行うくらいしかない
・その他の循環器合併症
 ・ショック・LOS
   →IABP、PCPS、カテコラミン、利尿薬など
 ・弁輪部破裂
   →緊急開心術 血圧管理に注意
 ・人工弁の移動・変位
   →valveの拡張不足による。
   →術後に生じた例はない。
 ・冠動脈入口部狭窄によるMI
   →PCI or CABG
 ・心破裂
   →TAでリスク↑ 血圧管理に注意
     ・とはいえ目標血圧ははっきりしない。
     ・平均血圧60~80くらいで管理。
・呼吸不全
 ・PARTNERtrialでは・・・
   →41%がCOPDで21%は酸素投与を要していた
 ・術後肺障害が生じる割合
   →TFで1%、TAで2%との報告がある
 ・再挿管の原因
   →痛みのコントロール不良と肺水腫
 ・術後volume負荷が必要な症例が多い。
   →肺水腫になりがち。
 ・胸水貯留も多い。
   →評価・胸水穿刺が必要になることも
 ・ACCF/AATS/SCAI/STSでは“早期抜管“を推奨しているのみ
 ・6分歩行の距離でリスクを判別できるという報告も。
・腎不全
 ・ガイドラインに記載はない
 ・PARTNERtrialでは・・・
   →5%、他の報告では50%の患者で術前腎機能低下あり
 ・造影剤使用が必須のためリスクは高い
 ・小規模stadyでは・・・
   →9%のAKI発症、術前からの腎機能低下例では35%の発症。
 ・対策
   ・還流圧を保つ
   ・Nアセチルシステイン
   ・ハイドレーション
      →心肺機能が悪い患者が多く、避けるのが無難。
   ・術後透析
   ・造影剤の使用量を減らす
・Vascular access部位に生じる問題
 ・主に後腹膜への出血、動脈解離、仮性動脈瘤
 ・PARTNERtrialでは・・・
   →30%に血管障害(16%はメジャートラブル)
 ・TFでの予測因子
   ・施設経験
   ・血管石灰化
   ・SFAR(血管径÷シースの外径)<1.05
 ・後ろ向き研究によると・・・
   →後腹膜血腫の症状
     ・鼠径上部の圧痛100%
     ・背部痛64%
     ・下肢の神経症状34%に見られた
 ・術後のショックの原因の一つとして覚えておく必要あり
 ・沈子をしっかり固定、外した後も注意することが重要
・術後抗凝固療法
 ・ACCF/AATS/SCAI/STSでは・・・
   ・アスピリン(81mg/day 永久に)
         +クロピドグレル(75mg/day 3-6か月)
      or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
 ・CCSでは・・・
   ・低用量アスピリン(永久に)
     +チエノピリジン系抗血小板剤(1-3か月)
            or ワーファリン(適応疾患あれば)の組み合わせ
 ・PARTNERtrialでは・・・
   ・アスピリン(81mg/day)
         +クロピドグレル(75mg/day 90日間)
 ・エビデンスはない